病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

第105回薬剤師国家試験を眺めてみよう

2020/3/24に,第105回薬剤師国家試験の合格発表が行われました.

昨年もいろいろ見てみましたが,ほぼ同じような印象です.

 

独断と偏見で,今回の国家試験を眺めてみます.

 

ちなみに104回の記事はコチラ

 

www.riquartette.tokyo

 

 

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試験

 

第105回薬剤師国家試験の難易度は

日経DIの記事にもありますように,かなり難化している傾向のようです.

第105回薬剤師国試、104回よりもかなり難化:DI Online

 

私も実務を中心に解いてみましたが,問題を見て即答,

というものより,図などから内容を理解して

読み取る問題が多かった印象です.

 

現場でも求められる能力でもあります.いくつかの情報から,

自分で想像し,考え,より近いと思われる回答を導く.

 

これは,継続して行い,力をつけていく必要がありますが,

今回の問題は特にその傾向が強い印象でした.

 

薬剤師の国家試験で,ここまで求められるのか,と感じるものもありました.

 

分類もいろいろなものがオーバーラップしていて,

単純にこの領域の問題,ということでは片づけられないような

複合問題が増えてきているのも事実です.

これからもこの傾向は続くでしょう.

 

国家試験を終えたものとしては,

国家試験の解けそうな部分だけを解いてみて,

勝手に自己満足しているだけなのですが,

この問題作った先生方,スゴイ,と純粋に感じることができます.

 

そして,今から就職してくる若者たちは,

実務こそこれからですが,

基礎となる部分は決して劣っていないし,

むしろ私が卒業した時よりも,

はるかに高度な知識をもって就職してきているということを,改めて認識することができます.

 

新しい,フレッシュな薬剤師なりたての方たちに,

敬意をもって接することができるよう,

私は自分を戒めるためにも,その感覚を忘れないためにも,

実務だけですが,国家試験を解くようにしています.

 

偉そうに言っていますが,自己満足です.

今回も難しかった,薬剤師国家試験です.

 

第105回薬剤師国家試験の合格基準

厚生労働省医薬・生活衛生局の資料です.

配点は1問2点(690点満点)として,

 

以下のすべての基準を満たした者を合格とする。

・全問題の得点が426点以上

・禁忌肢問題選択数は2問以下

・必須問題について、全問題への配点の70%以上で、かつ、構成する各科目の得点がそれぞれ配点の30%以上

 

 

となっています.

私の時には,禁忌肢はなかったのですが,

こちらも医師国家試験と同様に設定されています.

禁忌問題をいくつか落としてしまうと,不合格となるため,

難易度は上昇しているということになるでしょう.

 

と考えると,

この難しい問題を,

これだけの基準を満たした方が合格しているというわけです.

そういう若者が,薬剤師として就職してくれるということになります.

 

さて,気になる合格率は…

第105回薬剤師国家試験,既卒・新卒も含め,合格率は69.58%でした.

97回からの合格率と比べてみます.

 

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薬剤師国家試験合格率

第99回が60.84%とかなり低くなっていますが,

その後は70%で推移しています.

70%を超えるかと思っていましたが,例年と合格率自体は同様の傾向です.

新卒は84.78%,既卒は42.67%です.

 

昨年も同じような傾向であることを書きましたが,第100回から,

新卒はおおむね85%で推移しているのですが,

既卒は101回から回を重ねるごとに,

67.92→50.83→47.00→43.07→そして今回42.67%と低下傾向です.

 

1年間モチベーションを保つのも大変でしょうし,傾向が色々と変わるため,

厳しい状況がうかがえます.

 

男女比は…

こちらも例年同様の傾向かと思います.

新卒,既卒を含む全体としての男性の合格率は67.33%(前回68.76%)

女性71.06%(前回72.34%)と,例年同様女性の方が高い傾向でした.

 

新卒に限ると,男性は昨年までと同様,結構頑張っています.

新卒男性85.90%(前回86.35%)

新卒女性84.10%(前回84.97%)となっています.

 

既卒では男女差は結構差があります.

既卒男性38.96%(前回39.96%)既卒女性45.40%(前回45.41%)となっています.

 

自分の施設の薬剤師の男女比は4:6くらいですが,

薬剤師で最も必要とされる,仕事の丁寧さ,

細やかさは圧倒的に女性の方が優れていますね.

自分も含めていつもながら,

薬剤科の男性どもは・・・と言われることも多いですが,

ぜひ優秀な男性薬剤師,わが施設を助けてください.

お待ちしております.

 

これからの薬剤師国家試験合格率のキーになるのは,

やはり既卒の男性になるでしょうか.

 

大学別の合格者数

今回の資料はすべて厚生労働省の資料を基に偏見を書き綴っているのですが,大学ごとの合格率も下記にしっかり掲載されています.

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000199343_00003.html

 

これから薬学部を選ぶ方には,気になるところでしょうし,

母校がある方は今年はどうだったのかな,

というところで気になるところでしょう.

 

あまり順位はつけたくないのですが,眺めていると,

いろいろな部分が見えてきます.

 

全体の合格率1位は…

良い大学は評価されるべきと思いますので,勝手に掲載させていただきます.

栄えある第1位は,国立の金沢大学です.おめでとーございます!!

40人受けて39人合格,奇跡の97.50%の合格率です.

既卒の方1名が落ちただけという,

新卒合格率100%を誇る,スゴイ大学です

 

2位は私立では大健闘の歴史ある名城大学が92.52%.

この合格率もすごいですが,3位の広島大学が91.49%,

4位の九州大学が90.00%,それ以降は80%台となるため,

いかに金沢大学が優れているか,ということがよくわかります.

 

個人的に気になった大学は…

こちらもよい意味ですが,

新卒の合格率が100%の大学が金沢大学以外にもあります.

北海道大学,東京大学,静岡県立大学.

いずれも国公私立大学の名門大学ですが,

こちらは学生さんもそうですが,

大学教員の先生方のご努力も素晴らしいものがあるのでしょう.

既卒の方は,予備校などに行くケースもあるかと思いますが,

新卒の合格率は,最も今のその大学の薬学教育が,

国家試験と見合っているのかを

如実に反映しているのではないかと思います.

 

入学からのしっかりとした知識の積み重ねが表れている結果でしょう.

素晴らしいです.

 

そして毎年気になるのが…

昨年も書きましたが,新卒の出願者数,受験者数の乖離です.

 

大学の卒業試験の日程や,出願する時期など,いろいろとあるかと思いますので

具体的に議論することは難しいかもしれません.

 

しかしながら,下記をご覧ください.

勝手に未受験者数を入れてみました.

 

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新卒の未受験者数

 

国公立は出願した方に比べ,

未受験が1%未満(国立は0.8%,公立は0%)なのに比べて,私立は11.3%と,10人に1人は,出願しても国家試験を受験していないという状況です.

これにはかなりのバイアスがかかると思います.

 

私立薬科大学は一つの県に一つの薬学部(?)などの話も

以前は出ていたようですが,毎年国家試験の状況を眺めていると,

本当に疑問になってきます.

既卒の方は,出願して,受験するかしないかは,

体調などの問題もあるかと思いますが,自己判断で行えると思います.

受験を諦めているのかもしれません.

 

しかしながら,新卒の学生は,

私立大学の新卒の出願者が9,574人,受験者が8,496人と,

1,000人を超える学生が,

日本国内で薬剤師国家試験に願書を出願し,

受験ができていない(していない)という現状があります.

 

なんだか異常な気がします.

 

大学の学生の定員もあるかと思いますが,

出願者数と受験者数の差が10名程度のところから,

50名を超える大学もあります.

 

新卒の合格率だけで見ると,

私学でも素晴らしい合格率を達成している大学もあります.

これは事実なので,別にとやかく書くことはないのです.

 

しかし,出願していて,国家試験を受けていない学生さんたちが

多くいる大学は,

出願するまでの過程で,国家試験を受験するための問題を

見つけきれていないのであれば,

出願後に受験させないというのは,私は納得できるような状況とは思えません.

 

薬学部の学生さんと話す機会がありますが,

やはり国家試験はどの学生にとってもゴールであり,

通過点であると話してくれる学生多いです.

その大学で授業を聞き,しっかり勉強することで,

先輩方がどのくらいの合格率であったのか,

というのは気になることでしょう.

学生たちは,他大学の状況などもSNSなどでつながり,

いろいろな情報交換を行っていますし,

このような数字をみてどのように思うのでしょうか.

 

本来であれば,この出願して受験しない学生の数もそうですが,

大学の定員数も関わってきます.

合格率についていろいろ気になっていまい,

私見をダラダラと書き綴ってしまいました.

 

薬学6年生になり,毎年気になる薬剤師国家試験.

他の医療従事者の国家試験と比べても,

決して高い数字とは言えない実情があります.

 

薬科大学は留年する学生も多く,

薬剤師国家試験を受験するまでの道のりは,とても長いです.

本当に一生懸命頑張って,その道をやっと落ちずに歩いていた私自身,

今の私立薬科大学の現状を見ていると,少しつらくなります.

 

大学を地元に作れば,薬剤師がたくさん就職してくれる,

というような考えだけで新設の薬科大学ができたとは考えにくいですが,

やはり学生の質,教員の質,そしてこれからの薬剤師の質を担保するためにも

ある程度の規制や指導が必要になってきたのではないかと感じています.

 

文部科学省でしょうか,厚生労働省でしょうか,

これらのデータをしっかり把握している方が必ずいるはずです.

 

薬剤師国家試験,そしてそれをクリアした薬剤師.

卒後教育の問題も大きく,卒前教育だけの問題だけではないのですが,

どうもこの状況を数字だけ眺めていると,

いろいろな意味で不安を感じてしまうのは私だけでしょうか.

 

1年に1度だけ行われる,薬剤師国家試験.

6年間の学習の成果をすべてぶつけ,

学生さんたちは合格を目指しています.

様々な困難を乗り越え,受験できる資格までたどり着き,

異常な緊張感の中,薬剤師国家試験に臨む.

 

私も今から薬剤師国家試験の受験をしようとは

思えませんが(知識的にも体力的にも),

ぜひ未来ある若き学生たちに,

薬剤師国家試験は,

若い力をこれからの薬学の発展のために生かせるような,

仕組みであってくれることを願っています.

 

薬剤師国家試験を受けたことすら記憶の中から消えそうな私も,

毎年少しでも初心に戻れるよう,問題を眺めています.

国家試験に寝坊した夢などはさすがに見ることはなくなりました.

それでも一つの目標を目指して取り組むことは,

貴重な経験だったと思います.

それゆえに,この合格率を眺めていると,

ついつい悪い癖で,いろいろ考えてしまいます.

 

色々と適当なことを書いてしまいましたが,

とにもかくにも,

第105回薬剤師国家試験を受けられた方,お疲れさまでした.

合格の有無は,日々の努力もそうですが,運にも影響されます.

それも味方につけて,こんな難しい薬剤師国家試験を通った方,ぜひ自信をもって,医療の現場に飛び込んでいってください.

 

お待ちしております.