病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

病院への薬剤師の派遣について思う

本日の薬事日報に,病院への薬剤師派遣についての話題があった.
https://www.yakuji.co.jp/entry68524.html

日病薬の副会長の見解が掲載されている.日病薬として「容認できない」との見解である.

労働者派遣法の法令の規定で、病院等での「薬剤師の調剤」は労働者派遣事業の禁止対象になっていること,がその理由との記事である.

それはごもっともである.ダメなものはダメ,で仕方ないか,と思うのだが,
既に日本調剤では,
病院向け「産休・育休代替薬剤師派遣サービス」を開始~常用型派遣として日本調剤の薬剤師を派遣~
というものが動き始めており,都内の病院でもすでに動きがある.
https://www.nicho.co.jp/corporate/info/19434/

提供する側も,される側も,当然労働派遣法の確認は行っているわけで,これがどのような方向に今後進んでいくかは注目したい.

病院等での「薬剤師の調剤」は労働者派遣事業の禁止対象になっている,という見解がどのようにとられるのか.

今回話題となっているのは
「産休・育休取得により薬剤師が不足する際、計画的に派遣薬剤師の供給を受けられる、というサービス」であることから,
現在の薬剤師の業務の多くを女性が担っている現状から考えると,
これは病院薬剤師だけではなく,どの職業も直面している問題かと思われる.
パートを雇う,ということではだめなのか,とも思う.その期間に限られたところであれば,それは良いのか?法律を確認しているわけではないので推測になってしまうが,
今後の人手不足,特に病院薬剤師は不足が続いているため,この話がどのように決着するのかを見守っていきたい.

実際,大きな病院では,ある程度の人数が確保できるような教育体制や,近年はレジデント制度など,業務以外にも教育,研修で人手を集める方法があるわけなので,この問題はむしろ地方の中小病院の方が深刻であろう.

知人と話していても,地方病院の薬剤師の募集はどこも応募が少なく,慢性的に不足していることを嘆いていた.当然人手が不足している施設は業務が過多になるため,より離職が進んでしまうという負のスパイラルに陥ってしまう.
誰かが気に入らないとか,その程度(それも大きな理由だが)であれば,人事的な部分で何とかなるかもしれない.
しかし,今回の産休・育休は,別の話であり,本来であれば誰もがお祝いして,子供の成長を見守ってあげるのが本当のかたちだと思う.

自分が入職した時は,他施設ではあるが,病院薬剤師は,特に女性は結婚できないというのは普通にまかり通ってしまっていた.異常な状況だったと思う.
病院薬剤部は限られた,優秀な人しか働けない,というプライドのようなものから始まって,働けないならやめるべき,が普通であった.

今は全く異なっている.6年生になって,学費もかかっている.給与面だけでは病院薬剤師は魅力的ではないであろう.
そして現場もその中でモチベーションを保ちつつ仕事を行っている.

地方で薬学部創設が続くのは,雇用の面からが大きいと聞く.大学ができれば,そのまま残る学生がいるのは事実だ.人手不足はもうそのような話に発展してしまっている.

薬学を志し,薬剤師の免許を取得するまで頑張って勉強した先輩後輩たち.
人生の大きなイベントである出産を,快く祝ってくれないような環境になってしまっているのであれば,労働環境は極めて悪いとしか言いようがない.自分でもどうしようもないが,申し訳ないような気持になってしまう.

この記事の最後の方に,少し掲載されていうものがある.

島根県病薬の先生のお言葉になるが,
「中小病院には向上心の高い薬剤師が多い。認定資格を取得するために基幹病院や薬局に移る事例をたくさん見てきた。中小病院の薬剤師でも目指せる認定資格があるなど、目標があれば意欲を維持できる。それが一つの打開策になるのではないか」

薬剤師は,なぜ薬剤師になったか,というところを聞いてみると,特に病院で勤務している人は,驚くほど志が高い人が多いことに気づく(私は恥ずかしいほどそのようなものはないが).患者さんのため,という言葉もよく聞かれる.良い職業,というものは,やりがいだけではないだろうが,志を持って働いている人を,どうかその志を折らないような道に進んでくれることを望む.

この話は,決着はすぐにはしないであろう.組織的な部分の弱さをあまり顧みないで行ってきたツケが回ってきているのかもしれない.それでも,なんとか薬剤師が,薬剤師として働けるような方向に進んでくれることを祈っている.