病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

【読書感想文】薬物療法問題集 コモンな50疾患・150題で実力がつく! : 月刊薬事 増刊  

解いて身につける3つの力、とあるように、本書は問題集です。

せっかく勉強して国家試験も合格したのに、問題集なんてもうイヤです…

というようなものではなくてですね、本書は問題に関しての考え方や裏付けが具体的に例示されている書籍になります。

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月間薬事の臨時増刊号なのですが、編集者が薬剤師の中でもすごい方たちばかりなので、手に取ってみました。でも300ページを超える本、一瞬買うのを悩みました。問題集ですし。

 

学生さんからも、薬剤師からも、どんな勉強をしていますか?と時々聞かれます。別にこれといって勉強している認識はないのですが、面白そうなものは読んでいます。国家試験を終えて就職してきた新入職員、そろそろ業務にも慣れ、次なるステップ、という今くらいの時期にもよく聞かれます。

そんな人たちも本書は、読んだ後、紹介してみたいなと思いました。

 

一つの理由が、「現役の薬剤師が、薬物療法にどのようにかかわっているかを、実践も踏まえて解説してくれている」からです。

すでに評判は高いこの本、もし個人で購入が大変だったら、病棟に行っている薬剤師何人かで購入、でもよいかと思います。

病院薬剤師だけではなく、保険薬局のかたでも、処方意図などを読み取ることや、薬剤師の視点もありますので、みんなで読んでみるのをお勧めします。

 

紹介されている疾患はコモンな52疾患。高血圧から始まって、実に様々な疾患が取りあげられています。

薬物療法の問題集、なので、どの薬剤を選択すべきかがメインになるかと思っていましたが、

本書は、①根拠に基づく薬剤選択、②薬学的介入、③モニタリングのポイント

から問題、解説がなされています。

 

1つの症例に対し、薬剤の選択は1問のみ、残りは上記の通り、介入やモニタリングポイントについての質問となっています。

実際、病棟業務をしていて、どのような薬剤を選択すべきか、というところに薬剤師が関わっているケースはそれほど多くないように思います。

 

専門医がいない施設においては、医師から専門外の部分での回答を求められるケースのほうが圧倒的に多いと思います。最近では感染症領域や疼痛緩和、制吐剤などの提案などは薬剤師に聞かれることが多い領域ではないかと思います。

当施設においても、感染症に関する相談は、問い合わせのうち、比較的多くを占めています。

薬剤を選択する、という部分では最終的に医師が決定する。それは当たり前なのですが、では薬剤師がどのようにその後フォローすべきか。これを怠っていると、信頼はされなくなってしまいます。

本書は、薬学的介入(介入という言葉はあまり好きではないですが)、モニタリングのポイントを、実症例を基に詳細に解説してくれています。

 

読んでみて思ったのは、いかに自分が、薬剤の選択までのところで満足しているか、ということです。病院薬剤師の皆様、どうでしょうか。

 

本書は病院薬剤師向けの本かと思っていました。実際読んでみると、途中まではそのように感じました。コモン、と記載あるので、全体的な疾患を眺めてみると、病院・保険薬局勤務に関わらず、治療がどのように行われ、モニタリングされているのか、というのを知るにはよい1冊になるかと思われます。

 

また、若い方は、今後症例発表などの機会もあると思います。Caseと書かれた症例の中には、患者情報などの、議論をするのに必要な所見などが記載されています。将来症例発表、検討をするなどの場合に、同じような疾患であれば、とても参考になるかと思います。

 

問題集だから、考えて回答しなくてはいけません。

間違えると嫌だから、調べたりすることもあるでしょう。私も回答をすぐ読みたい衝動にかられながらも、自分で調べながら進めました。

そうやって読んでみてもよいし、よくわからなかったら回答をしっかり見て、

 

1.何が正解なのか(実際の医療にはもう少し複雑な因子があって、回答は一つとは限らないですが)、

2.その根拠はどんなものがあるのか(その根拠も次々に代わることがあることにも留意)

を考えて読み流す、とうのでもよいと思います。

 

普段自分が行っている、特に多く経験する服薬指導業務に当てはまる疾患から、優先して読んでみるのがよいでしょう。

 

全部解かなくてもいいと思います。その疾患の、今国内にいる薬剤師のその領域のエクスパートたちの解説になるので、苦手な分野では、きっとハードルが高く感じるでしょう。

私も普段経験しない領域はまだ全部読み切れていません。でも、それでもいいと思います。いずれせまられたら読むのもいいですし、時が来たら、という事で。

 

根拠ある、というのもうれしいですね。多いものだと1症例につき引用文献は10をこえています。

私のブログは適当な記載ばかりで曖昧な根拠が多いので、恥ずかしくなりますが。

 

ちょっと刺激的な、今一度薬物療法を見つめなおしてみるのに、チョットした勉強を始めてみるのはいかがでしょうか。

 

個人的には、感染症の領域が充実しているのがありがたいです。

 

ただの薬物治療の問題集、というより、どのような考え方で薬物療法をとらえていくか、薬剤師としてどのようなフォローをしていくか、という事が書かれています。

 

ただ、全部で300ページ。全部読まなくてよいですが、覚悟して読み始めましょう。ちょっと内容は難しいかもしれませんが、学生教育や新人教育にも有用ではないでしょうか。

 

始めるのに早いも遅いもないかと思います。

 

思い立ったらすぐ、でしょうか。とりあえず買っといて、積読、でしょうか。

 

実は、私もずいぶん前に購入していて、やっとよんでみた、という状況なので、全然エラそうなことは事は言えませんけど…

 

いつか自分も、こういう所に、しっかり自分の経験した症例や、最新の文献なども踏まえた考察も提示できるような薬剤師になりたいな、と思いました。