病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

【読書感想文】臨床検査値使いこなし完全ガイドを読んでみました。

最近の月刊薬事の特集号は、良いものが多いです。また買ってしまいました・・・。

臨床検査値使いこなし完全ガイド、です。

本書は、日々確認することが多い臨床検査についての使いこなし方が、わかりやすくまとめられています。

知識を積み重ね、上手に生かしたいですね。

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検査

 

 

 

 

本書の特徴

 

本書は、治療効果を「最大限発揮」させ、副作用は「極力回避」する!と言うコンセプトのもとにまとめられいます。

1症候・疾患に対する検査オーダーの根拠がわかる。

2検査値に応じた処方設計の考え方が分かる。

3見落としがちな検査値をチェック提案できるようになる。

 

 

ということができるようになる本、とされています。

 

 

  

 

章別に、徐々にDeepな世界に

本書は3章に分かれています。

1章では、検査値を理解するための基礎事項が書かれています。感度・特異度といったところは、なかなか考え方が難しいことがあるかもしれませんが、検査値を使う上では必要な知識ではないかといつも感じています。数ページですが、分かりやすく解説していただいています。

2章では、症候別について、確認すべき項目等が記載されています。そしてこれらを踏まえて3章では、薬物治療に対する考え方、確認しておきたい項目といった形で、バランスよく書かれているのがポイントかと思います。

 

またこちらは、検査値の使い方という本なのですが、検査技師さんの書籍ではなく、その検査結果をどのように判断し、生かしているかという、総合診療科の先生のまとめかたが、非常に勉強になります。もちろん、疾患の部分はその領域の専門医が書かれています。

 

また、月間薬事の別冊ということで、薬剤師の目線に立ってまとめていただけているのも読みやすいです。

ハイリスク薬等についても、どのようなポイントで見ていくかといったこともわかりやすく書かれています。

 

読んでみよう

第1章

第1章から目を通してみます。検査値を競う正しく読むための基礎知識が書かれています。血液検査なども含めて様々な検査があります。

その値が陽性/陰性で出るもの、検査値として数字として出てくるもの、± 、+、-といったような形で出るものと様々ありますが、それらの解釈の仕方と言うものがわかりやすく提示されています。

また小児や高齢者特に高齢者においては、様々な検査値が個人よってばらつきがあるためそれらについての注意点などが書かれています。

 

2

第2章は、13の症状別による検査値について書かれています。これらを少しずつ理解しておくと、次の3章の、疾患別の検査値の見方につながります。

 

実際病棟では、医師は脱水や呼吸不全意識障害といった重篤な症状を正しく診断するための知識が優れています。これは当然で、医師にかなう人はいません。そのための努力も日々行っています。

ここについては、専門的な知識を学んでいる医師には到底かないませんが、私たち薬剤師は、医師がどのようなプロセスでそれらの検査を行うのか、どのようにその検査値をとらえるのか、ということを少しでも理解をする必要があると感じます。

 

もちろん脱水、呼吸不全といった部分、その数字の判断とは非常に難しく、特殊な知識、技術を要し、経験も必要であることはわかっています。

集中治療室の勤務の薬剤師でない限り、なかなかアシドーシスもしくは血液ガスなどから様々な評価をするというのはできないでしょう。

 

しかしながら、上記にも書きました通り、医師がその検査をどのように捉えるか、

どのように評価をしているのかということを、少しでも理解することで、得られる情報もあると思います。

 

症候別の検査値、につきましては様々な項目がありますが、薬剤師の中でも特に腎機能障害、肝機能障害といった件については、薬剤の用量調節や、副作用などに絡んでくる問題もありますので、病棟でも頻回に対応することになるかと思います。

また院外処方箋においても、近年、腎機能、肝機能を含めた血算の値が処方箋に印字される施設も増えてきているかと思います。

 

またeGFR、CCrなどは、薬剤の用量設定に必要で、腎機能が低下した患者さんに、通常量の薬剤を投与した場合についての、安全性情報でも報告があるように、今注目されている部分かと思われます。

また、電解質異常についても、ナトリウム、カリウム異常の内容があります。

それらが異常値の対応も、実際は多岐にわたりますが、その主な理由等がまとめられています。

 

実際薬剤師が、様々な症状などにおいて、検査オーダーをするということは、現時点ではできない場合が多いかと思います(プロトコ-ルで行っているところもありますが)。

 

しかしながら、バンコマイシンなどの血中濃度を見ながら、腎機能のモニタリングを依頼する、ワルファリンの服用患者におけるPTINRの検査依頼を行うなど(もしくはこれは検査オーダーを代行している施設も)、検査項目を依頼するといった事は、日常でも病院薬剤師は行っています。

その中で、検査結果がうまく実臨床に生かせるように、患者さんの副作用や薬剤の過量投与などを防ぐためにも、上手に検査値を生かすと言う事は、これからの薬剤師にも必要な知識かと考えています。

 

第3章

第3章の疾患別による検査値は、正しくその疾患における薬物治療において、様々な薬剤を使用するにあたり、どのような項目が必要かといった記載となっています。検査に関するガイドラインや疾患のステージ等に応じた様々な治療・診断の記載がされています。

また、今回取り上げられている疾患は実に17疾患に及び、そのそれぞれを、専門医がその内容その内容を担当されているので、数ページながら非常に内容が濃いものとなっています.

 

病院での薬剤師は、基本的に、担当の病棟、診療科があることが多いかと思います。

経験した疾患や病棟などでは、よりその専門的な知識、検査値等の見方などは日々勉強し、経験することになります。

自分が多く担当した疾患のところは、本書をみることで、これらの検査値の意味合いなども含めて、見直すには非常に十分な内容となっています。.

 

また、なかなか経験することができない疾患等においては、実際医師が、どのような薬物療法も含めた治療を行っているのか、この検査値をどのように活かしているのか、といったものを理解するために、本書は有用です。

少し目を通すだけでも知識の向上につながるのではないかと思います。

ガイドライン等を利用されて治療方針が書かれている疾患もあります。

その中での検査の位置づけ、そして薬剤に関係する検査が書かれています。

なかなか全てを理解する目を通すのは難しいかと思いますが、まずは自分が経験した病棟や、患者さん疾患のところから再確認の意味で読み込んで行き、

その後少しずつ自分に合った疾患を、症候の部分なども読みながら、読み進めていくと良いのではないかと感じました。

 

おそらく臨床検査は、様々なものが開発され、これからもいろいろな検査が出てくるでしょう。しかしながら、腎機能や肝機能といった生体内の基本的な検査値というものは、これからもあまり大きく変わらないでしょう。

まずはそういった検査値の意味合いと、どのような検査結果がどのような意味を持っているのかというのを少しずつ理解し、薬と結びつけて覚えていくのが次のステップにつながるのではないかと考えています。

 

新しい検査値が、次々に使えるようになってきています。従来のものと、どう違うのかといったところを踏まえて、自分がよく経験する薬に関する検査値や疾患等については、今一度情報を再確認しておくことも良いでしょう。

 

本書を読んだ感想

最後に私が読んでみた感想になります。

やはり私たち薬剤師はこの疾患だけを見ればいい、と言うような仕事を行っているわけではありません。例えば、循環器予約しか扱わない薬剤師と言うのは、臨床現場であっても役に立たないでしょう。

疾患の診断を専門的に行うために、検査は細分化されていきます。より特殊な検査も、これから次々に発見され、実用化されてくるでしょう。

 

薬剤師は、調剤や病棟業務においても、通常業務と言う意味では、その専門性よりは、様々な疾患、様々な薬剤を知っているということの方が求められていると思います。

 

そういった意味では、その疾患の特殊性などを理解するのに、その一助となる臨床検査値を知り、理解するために、本書は有用なのではないかと感じました。

 

1回読んだだけでは、とてもこれらの内容を理解することができません。私もおそらく本棚に置いておき、何回も見直すことになると思います。この本はそういう使い方が良いのではないかと感じます。

 

本書をどう生かすか?

臨床検査値を、少しでも理解することで、医師の処方の意図を理解するのに役立ちます。また、その特有の疾患において、専門ではない医師が、もしその検査をオーダーするのを忘れてしまった場合など、薬剤とセットでチェックをすることにより、医師へアプローチできる有用なツールだと考えています。

本書は250ページ程度からなっています。もちろん臨床検査値について、本書だけで完全に理解することは難しいと思います。

臨床検査と疾患薬剤について興味が出てきたら、他にも様々な書籍が出ています。

本書籍でも紹介されていますが、薬剤師会のための基礎からの検査値の読み方と言う本も私は合わせて読んでみました。

 


 

 

こちらの書籍も、薬剤師の視線と言うところで、本書と同様なものになっています。薬学生なども対象となっている、薬剤師向けの書籍なので、合わせて読んでみるとよりスキルアップできるのではないかと考えています。

 

薬剤師は、基本的に薬剤の知識は必須です。しかし現在の医療では、残念ながらそれだけでは仕事を続けていく事はできません。そのために、臨床検査をうまく使える、評価できなくても、それがどのような意味を持っているのか、ということを理解するということが大切なのではないかと思います。

 

ということで、あまり肩を張らずに、少しずつ読めるところから読んでいく、必要な時に読んでみると言うスタンスで良いのではないかと思いました。