病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

薬学生を病院の業務補佐として雇用する,という事について考えてみる

 

薬事日報の記事に,薬学生をアシスタントで雇用と言う記載がありました.

こちらは大阪大学の病院薬剤部での記事となっています.

 

【大阪大学病院薬剤部】薬学生をアシスタントで雇用‐未来の薬剤師育成が狙い : 薬事日報ウェブサイト

 

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学生

 

 

こちらの記事を見て病院薬剤師の方は,何か感じましたでしょうか.

私も病院で働いていますので,本記事について,少し私見を書かせていただきたいと思いました.

 

関係ありそうな過去の記事はこんな感じです.

薬局薬剤師の介入効果について考える.これからのあるべき薬剤師像の一つとして. - 病院薬剤師のブログ

 

病院への薬剤師の派遣について思う - 病院薬剤師のブログ

 

薬剤師6年生教育の質とは - 病院薬剤師のブログ

 

病院薬剤師業務の病棟支援を考える - 病院薬剤師のブログ

 

【病院実習は大変?】現役薬剤師が教えます - 病院薬剤師のブログ

 

 

 

大阪大学病院薬剤部の取り組み

大阪大学の病院薬剤部は2018年の12月から,薬剤師の業務を補佐するアシスタントファーマシストとして薬学生を雇用していると言う記事です.

この記事では,病院薬剤師はなかなか確保しづらい状況が続いていて,

それを補うために薬剤師の薬学生をうまく活用し,なおかつ医療現場で働く

やりがい意義を知ってもらうことで,将来の病院で勤務する薬学生の育成に

つなげたい,と言う目的で行っているようです.

 

現在の薬学部の学生の実情は・・・

薬剤師が6年生教育になり,病院実習に来る薬学生も奨学金等の関係から,実習中アルバイトをしていたりする学生もいます.

自宅がよほど裕福でなければ,なかなか私学の薬学部に入るというのは,今は非常に難しくなってきている状況かと思います.

実際,私大の薬学部教員の先生方にお話をお聞きすると,薬学部の学生の中でも,奨学金を借りる割合が圧倒的に多いというような経済状況となっていることもお聞きしています.

6年生になったことで,その分学費もかかるというのは,当たり前のことなのでしょう.

学生側も,実習などで限られた時間の中,アルバイトをしたいというニーズもあるのは事実かと思います.そして,それを止めることは,当然できないと思います.

 

今回の記事では・・・

大阪大学病院薬剤部においては,薬学部の5年生や1年生を薬剤部で雇用しているということが書かれています.

薬学生はどんなことをやるのかと言うイメージが私にはつかなかったのですが,この記事では,医薬品ピッキングや補充といった,調剤行為には該当しない,調剤前の準備行為というものを中心に補佐をする目的で,行っていると言う記事になっています.

もちろん薬学の学生ですので,授業や研究,実習といった様々なものがあるでしょう.

そういった都合に応じて,対応している夜勤等の時間帯なども含めて行っていると書かれています.

本記事では,その最後に,病院薬剤師として働くために,希望している薬学生が,病院で少しでも働くことができると言う事は,指導にも熱が入り,良いのではないか,ということでまとめられています.

学生側,病院薬剤部側のお互いにメリットがある,という事のようです.

 

この記事を読んで,少し考えてみる

大阪大学病院薬剤部にとっては非常にメリットがあることでしょう.そしてそれは薬学生にとっても同じことかもしれません.

このニュースが出てから,私が少し気になった点としては,これはあくまで大阪大学病院薬剤部だからできるのでは,と感じてしまいました.

 

現在,薬学部がある所では,様々な病院実習が行われていますが,医学部や病院が併設されていれば,特に私学においては,その病院で実習をするのが原則になっているかと思います.

 

薬学部の単科大学であれば,様々な病院と契約,提携をしながら薬学生の教育というのが行われています.

 

その一方で,今人手不足になっているのは,大阪大学病院のような首都圏にある大規模病院の薬剤部以上に,地方の中小の病院なども含めた様々な病院の薬局になるかと思います.

 

実際私も病院で勤務をしておりますが,薬学生の実習も行っています.

そして人手不足と言うのももちろん感じています.

しかしながら,現在の地方での病院の薬剤師の状況考えると,今回のニュースで色々な病院の薬剤部,薬局の人手不足が解消するのか,ということに関しては,手放しで喜べるとはとても考えられないのです.

 

研修と雇用

薬学生が病院で実習すると言う事と,今回の事は仕分けがされているかと思います.

しかしながら,病院での実習といったものが,少し違うようなことをやることで,そこにお金が発生し,雇用にも絡んでくるのではないかという不安が私にはあります.それがあいまいになってしまうと,学生も勘違いしてしまうのでは,という不安です.

 

薬学部の病院実習においては,全くストレスがなく,様々な勉強ばかりが出来るような状況では無いのではないかと思います.

もちろん学生ですので,研修においては,お金を発生するような業務をこなせてはおりませんし,そのような責任もありません.

しかしながら,実習と業務とは,明確に住み分けの線引きができることが多いものばかりではない,という事も感じています.

これはどの業種であっても同じようなのではないかと思います.

 

うまく割り切ることで,これは実習,これは業務を手伝ってもらっているのでアルバイト代が出る,といったところの認識をうまく学生に説明し,

理解をしてもらってから行わないと,実際病院の実習に影響が出るのではないかと,私は考えてしまいました.

 

この取り組み,考え方は素晴らしいが,難しい部分も…

薬学部の学生については,大学に通える範囲内の所に居住していますので,実際病院でのアルバイトなどをしたい,という学生も,人手のことを考え,募集する側の病院であっても,近くに薬学部がなければ,薬学部学生の確保はできないでしょう.

 

先ほども述べましたが,本来は人手不足であり,様々なことが行えていない病院の薬剤師というのは,都市部よりやはり地方の方が,問題が大きいのではないかと感じています.

 

今回の薬事日報の記事は,今後の病院薬剤部の雇用の新しい形の一つかもしれません.しかしながら,当の薬学生で,こういった記事を見ている人は多くはないでしょう.

 

薬学部学生,やる気のある学生というのが,少しでも病院の中の薬剤師の業務に,興味を持ってもらい,そこから病院薬剤師として働いてもらえるような道を紹介するというのは,最も正しい方法なのでしょう.

 

給与面や拘束時間などを考えると,薬剤師として勤務するにあたっては,それ以外に道もたくさんありますし,必ずしも努力に見合った仕事ではないのかもしれません.

そして,こういった道に進んでくれる薬学生を,少しでも確保するために,という意味では正しい方法と考えられます.

 

そしてこれは,私が想像する以上に,病院薬剤師が不人気であるのではないか,と言う現実をつけつけられたような気もします.

 

この病院ですら人手不足なんだ,という現実

今回は大阪大学病院薬剤部というところであっても,その人手の確保が難しくなってきていると言う現状ということがわかった記事でした.

大阪大学病院といった,日本を代表する病院,それの病院の薬剤部ですら人が足りていないかもしれない病院薬剤師.

記事を見ていても,なんだかあまり前向きな気持ちにはなれませんでしたが,

地方の国公立病院,私立大学があるような施設でも,確かに調剤業務ではない雑務のような業務なのかもしれませんが,そこで働いている薬剤師と,実習以外のところでのふれあいや様々な経験をしてもらうことで,これから未来にある薬剤師が,少しでも希望に近いような職場で働くための良い方策となっていくことを願っています.

 

病院での薬剤師の仕事

現在病院で働くためには,様々な病院で薬剤師レジデント制度というものが動き始めています.6年生になってからも,いくつもの病院で取り組まれています.

 

現在の病院薬剤師の業務は,非常に煩雑化しており,様々な業務が求められています.

また,それに対する診療報酬もついてきていますが,日々の研鑽・研修というのは,欠かせないというのが,病院薬剤師に課せられている使命であり,それができない人は,その質が担保できないのではないか,と私も感じています.

中途半端な気持ちでの業務というのは,患者さんだけでなく,医師含めた他の医療従事者にも迷惑をかけますし,やる気以上の何かがないと継続できないのも事実かもしれません.

 

薬学生の経済事情を考えると,確かに全く今の実習と関係ないような,アルバイトをすると言うことも,もちろんその人格形成には有用かと思います.それを否定するつもりもありません.

 

そしてこの記事にあるように,確かに今後の未来を考えた職場,それを少しでもアルバイトの形でも経験しながら行えるというのは,魅力的な対応なのでしょう.

少し見方が偏っていたかもしれません.

 

どうしても,国公立病院の,大病院の薬剤部の方々については,日本の病院薬剤師を背負って立つような方向性を担っていただければと,勝手に考えて,期待してしまっています.

日々の業務だけではなく,薬剤師の業務内容などをしっかり評価し,それをしっかり公表できるようなところが,大学病院を踏まえた病院薬剤師であると考えています.

それだけ大学病院,国公立大学病院の薬剤師の方々には,過大な期待をしてしまっているのかもしれません.しかしながら,それは,私も含めた地方に勤務している病院薬剤師の願いでもあります.

 

薬学生への期待

少し話がずれますが,病院で実習してくれる薬学生の中で,短い期間ながらとても前向きで,いろいろなことを考えながら実習をしている学生に出会うこともあります.

クリニカルクラークシップを実践し,職員では時間がなくとてもできないようなことを,上手に学生の時間を使い,患者さんとコミュニケーションをとり,医療従事者が聞き出しえなかった色々な事を聞くことができ,

患者さんに信頼を得ている薬学生が存在しています.

 

これは残念ながら,テストの結果や外観的なものでわかるものではありません.

本人が実際病棟で実習をしたりして,その際のやる気も含めて,いろいろなことが組み合わさったときに,発揮できているのでないかと感じています.

 

またこういった実習の時に,やりがいというか,使命感に近いようなものを持って,頑張ってやり切ってくれる学生さんと言うのは,確かにそのまま就職をしてくれると,その後も非常に有用な職員となって働いてくれているのも実感しています.

 

そういった意味では,こういったアルバイトでなくても,実習中に,その学生ちがうまく病院の中に薬剤師として働けるような職場づくりや,雇用体制というのを整備していくということが,今自分が行うべきことの一つではないかということも感じました.

 

今後も,本記事のように,薬学生が,病院薬剤部のアシスタント的な事を行うところは増えてくるでしょう.

しかしながら,学生には,当たり前ですが,その指導者なり社会人としての対応を,私たちもしなくてはいけませんし,彼らもそういった目で見ているということを,常に忘れてはいけないと感じています.

 

薬学生は素直で真っ白な状態です.そして希望に溢れている学生も多くいます.

そういった学生さんたちを上手に受け入れ,興味があれば,やはり同じ職場で働けるように,うまく手助けしてあげる,これも私たちの仕事の1つなのではないかと感じました.

 

今回の記事を,あまりネガティブにとらず,前向きにとらえて,これからの薬剤師業務を発展させ,担ってくれる薬学生,薬剤師に託したいと思います.