病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

病院薬剤師業務の病棟支援を考える

病院の薬剤師業務は多岐にわたります。

その中で、病棟業務は最も臨床的で、人気のある業務です。やりがいもあり、病院薬剤師のイメージが最も強い所になります。 

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当施設でもかなり白熱した議論になった下記のニュース。病棟業務支援のこれからに影響があるニュースと受け取りました。少し考えてみたいと思います。

 

薬事日報2018年12月5日 (水)

【五日市記念病院】「薬剤助手」が病棟業務支援‐クラーク的な事務作業担当

https://www.yakuji.co.jp/entry68900.html

 

たかが数年(といっても20年くらい)前から本格的に始まった病棟業務。過去の状況を知る必要はないかと思いますが、薬剤師の業務、もしくは医療の中においては、歴史はまだまだ浅いと思います。実績もまだまだでしょうか。

今でも“薬剤師さん”は何しているか分からない、という話もよく耳にします。おしゃべりしてカルテ見て・・・。

 

何をしているか分かりにくい、というのは、アピールが足りないとは思います。実際病棟業務を行ってみると、カルテ、薬歴の確認は非常に大切で、電子カルテであっても紙のカルテであっても、薬剤師の視点からの確認は大切な仕事となります。

 

病棟にいれば、薬剤に関すること、問い合わせ事項も多岐に及びます。配合変化からフィルターの通過性、経管投与や腎臓、肝臓機能が低下した際の薬剤の用法用量、持参した薬剤の病院内採用での代替薬提案などなど、ある程度マニュアル、手順化できるものもありますが、その状況によって対応せざるを得ないことも多いです。 薬剤の管理なども日々行います。

 

そういったことを行いながら、入院患者さんへの説明を行うことになります。特殊な説明が必要であればゆっくり、納得いくまで説明をします。不安を取り除くように、なるべく服薬するにあたって、その意義が理解いただけるように。

話術もそうなのかもしれませんが、人柄も必要になってくる、と個人的には考えています。性格などは変えることは難しいですが、患者さんのために、という思いさえ忘れなければ、必然と、服薬説明に関しては患者さんからの信頼を得ることができるでしょう。

臨床薬剤師としては、当然ですが、その他に薬剤に関すること以外にも、疾患などについての知識もある程度は必須になってきます。そのための勉強の時間も必要ですが、それを怠らなければ、必ず臨床薬剤師として成長することができます。

少し話がずれましたが、患者さんへの説明、に関しては、しっかり記録を残しておく必要があります。医師がカルテに記録を残す、看護師が看護記録を残すのと同様に。短くポイントを押さえて、長すぎず、短すぎず。

 

当施設でも、保険薬局での実習を経験した薬学生が、実習を始めたころにあたるのが、この記録の書き方についての問題になります。

 

保険薬局での記録の記載は、説明したことの薬学的な部分を中心に、簡潔にまとめられています。1日の指導件数などからみてもそうですし、説明する以外の時間は調剤、監査を行い、正確でなおかつ速やかに業務を行う必要性があるため、問題点を抽出し、複雑なアセスメントを求められているわけではないところが病院と異なります。

病院では、医師カルテや検査値など、背景までが分かります。普通に考えてみても、外来通院している人よりは、病院に入院している人のほうが重篤であるため、当然記録する項目、内容が複雑、多岐にわたることは当然であると考えられます。

 その違いを知らずに、もしくは知っていてるにもかかわらず、学生に膨大なアセスメントを要求してしまう、というのは、実習している学生からよく相談を受けます。

記載することが主眼になってしまっている例です。あまり好ましい指導とは言えません。

 

 

話がまたずれてしまいましたが、それを支援するための、今まである病棟業務支援は、主にこの記録を書くためのツールや、持参薬鑑別をスムーズにするものなどが主です。

下記システムなどが良く使用されているかと思います。

調剤システムを専門に扱っているところが、そのノウハウなどを生かして、薬剤のデータベースなどを用いて支援するものです。ほぼすべての病院で、同様のシステムが導入されているのではないでしょうか?

 

(株)湯山製作所 病棟業務支援システム Pharma RoadⅡ(ファーマロード2)

http://www.nyk.gr.jp/equipment_101.html

 

こちらは使用したことはないのですが、内容などを見る限り、同様なシステムではないかと思われます。

山口県病院薬剤師会 病棟薬剤業務支援ソフト

http://yama-yaku.or.jp/yhpa/soft.html

 

かなり前置きが長くなりましたが、これまでの支援システムは、あくまで薬剤師が上記の業務を行い、その記録の際、より簡便になるようなサポートをしてくれるシステムでした。音声入力などもそうですが。

 

今回の五日市記念病院で試行されたシステムは、

薬剤師と患者の会話をその場でパソコンを使ってメモすることなど、クラーク的な事務作業、というもの。

 

つまり、説明しているところで第3者として薬剤師の事務的な記録を委託している、という事になります。

 

薬剤師の給与の問題もそうかもしれないが、地方の病院薬剤師の方とお話ししていると、薬剤師の人手不足は深刻であることを実感する。薬学部を地元に、という要望が強いのも、その事情を聴いているとよくわかる。医師不足のほうが深刻ではあるかと思いますが、薬剤師も同様に、地方には偏りができてしまっているのが実情かと思われます。

 

人手不足からくる、病院への薬剤師の派遣については下記にも書きました。

https://www.riquartette.tokyo/entry/2018/11/14/192542

ここでの議論は、病院内の薬剤師の調剤であって、今後そのようなことができるかは分かりませんが、人手不足からくる対応を疎かにしていると、もしかしたら病棟業務における臨床薬剤師の派遣、ということが現実となる時代が来るのかもしれません。

 

病棟業務も含め、薬剤師の行うべきことは何であろうか?

 

私はこの記事を、それを明確に実践している結果として受け止めました。

 

もちろん職場内では、

自分が説明しているのを聞かれて、メモされて、それを修正するほうが、時間がかかるのでは、とか

 

そんな人を雇う余裕などあるのだろうか

 

といった意見もあった。それも正しいかもしれない。

 

この記事では、結果を出している。

実際の業務短縮時間の他に、有益性についての記事も掲載されている。

そして今後の展望についても書かれている。

 

医師が入院患者さんに重要な病状説明をする際に、電話で中断されるのを特に嫌う医師がいるのは、それほど説明には緊張感をもって、その患者さんのために時間と場所を合わせ、理解してもらうように準備を行っているからである。同席させてもらったことも何度もあるが、どんな疑問にも丁寧に、分かりやすい言葉で対応していたのが印象的だった。

 

私たち薬剤師が説明するときも同様ではないだろうか。

専門的すぎる話をする必要はないわけで、それはすなわちメモを取ってもらう人が分からないような説明であれば、患者さんに、平易な言葉でわかりやすく説明することができていないという事になると思う。

 

入院患者さんへの説明は、時に説明が長時間に及ぶこともある。病状を医師から聞き、その際に薬剤の説明も受けているが、自分の身に起こっている状況を把握するのは時間がかかるし、全てを覚えていられるわけでもない。重篤度が高い疾患などの病状説明であれば、その時点で頭が整理できる人のほうが少ないと思う。薬剤の話など、もう少し後にしてくれないか、という経験もしている。

 

時間をかけるべきなのは、むしろその部分であり、私たち薬剤師が、薬物治療において、より安全に納得していただけるように説明できるよう、薬剤師自らの業務を変えていく必要がある。

 

今日何件説明した、大変だった、その分記録が~、というのは、今の病棟業務の現状であり、私もいつも感じている。今の病棟薬剤師業務の大きな問題点ではないかと思う。

 

人が増えれば当然業務が楽になる、というのはどの職場でも同様だと思いますが、その人が何をすべきか、というところをよく理解し、その特性を生かした人事配置、というのはまさしくこれから私たち薬剤師に最も求められている部分ではないかと感じています。

 

この報告を、ふ~ん、面白いこと考える人がいるもんだ。まぁ、ウチでは無理だろう。

で終わってしまわないよう、よく心にとめておきたい。

 

これから、薬剤師らしく、仕事をするために。