病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

【読書感想文】循環器の薬と薬物療法の鉄則 調剤と情報 増刊

循環器用薬は多いですが、読んでみたまずはじめの感想は、一度読むだけではもったいなく、その場その場で何度も読み返すことになる書籍だという事でした。本屋でサラッと手に取ったまま、とりあえずまず読んでみようと思って購入しました。

今回紹介するのは、表紙のインパクトがあったこちらの本です。

  

表紙も黒と白の斬新なデザイン、いかにも男らしいデザインでありますが、中を見ると、非常にわかりやすい内容となっています。

 

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循環器の領域は、無料でガイドラインが公開されています。もしご存じでなければ、下記Hpはぜひ一度、どのようなガイドラインが公開されているのかも含め、知っておくとよいかと思います。

全60ものガイドラインが、オリジナル版、ダイジェスト版でPDFにてダウンロード可能となっています。ぜひ活用いただきたいと思います。

循環器病ガイドラインシリーズ

http://www.j-circ.or.jp/guideline/

 

「2018年12月9日、日本循環器学会HP閲覧、最新情報はhttp://www.j-circ.or.jp/guideline/をご確認下さい」

 

循環器領域は、大規模臨床試験なども多く、海外でも様々な試験が行われています。それも踏まえ、国内のガイドラインが無料で公開されているのは非常にありがたいです。かなり専門的で、薬物療法以外の記載もあることから、当然すべての内容を薬剤師が知っておく必要はないかと思いますが、標準治療としてのガイドラインの存在は押さえておきたいですね。

 

実際循環器内科医が処方する際には、ガイドラインに従った治療が行われていますが、疾患も多くガイドラインも多く、その裏付けを確認するのは時間がかかると思います。

その処方箋を調剤、説明を多く行い、経験豊富な薬剤師のほうが限られていると思われます。しかしながら、入院患者、外来患者問わず、循環器領域の合併症患者は多いのが実感としてあります。

 

病名が分かれば色々と勉強するのも捗りますし、使える知識を詰め込むのも早いでしょう。しかしながら入院患者であっても、前医での継続処方であれば、過去の心疾患の既往などはすぐわからない場合があります。保険薬局でも、現状疾患までわかる状況はほとんどない状況で服薬説明をする以上、ある程度の想定をしながら、ということが求められるのではないかと思います。

本書では、よく遭遇するであろう循環器疾患の解説が含まれており、初めから順に学んでいくことによって、知識が深まっていくのを感じます。

 

実際をめくってみると、やはり薬剤師向けの書籍であるため、薬効に分けた薬剤の説明がまずなされています。基本プロフィールとしての作用機序や体内動態、副作用等の記載も分かりやすく書かれています。知識の整理をまず行えます。

 

 

通常の書籍では、抗血小板薬と抗凝固薬は別々に記載されていることが多いと思います。循環器内科医師が監修しているということもあって、本書では、プロフィールとしては、同じ領域で、継続した記載となっています。

 

循環器疾患以外、特に脳領域においては、脳梗塞の状況によって、抗血小板薬か抗凝固薬を使うかが分かれます。一般的に心臓では虚血性心疾患では抗血小板薬が中心となりますが、近年心房細動の合併が増えてきており、抗凝固薬も使用されている患者さんが増えてきている現状です。

 

薬剤師、薬学生が薬剤の勉強するにあたり、抗血小板薬と抗凝固薬は、別の作用機序ではあるにもかかわらず、同様な出血の副作用があることなどから、患者さんへの説明をする際に、同様の説明になることが多い。あまりこの言葉は好きではないが、患者さんへの理解を持っていただくために、血液がサラサラになる薬と説明されているケースも多いかと思います。

 

通常、循環器領域の本、と書かれていれば、予想されるのは降圧薬、利尿剤、血小板薬あたりかと思いますが、本書では脂質異常症治療薬の事についても比較的はじめの方で記載されています。循環器疾患と脂質異常症治療薬との関連は非常に深く、特にスタチン系薬剤がエビデンスとしてしっかり示されています。そこも必要な薬剤として、循環器用薬の中に含まれていることも素晴らしいです。

 

本書は調剤と情報の別冊となっていますが、調剤と情報は基本的には保険薬局の薬剤師が読む書籍内容となっているかと思います。この別冊は、最後まで読んでみると、保険薬局薬剤師、病院薬剤師、学生もその読む対象になるのではないかと思う書籍となっています。

 

薬剤師として薬の勉強しようという思いで本を読んだ際、疾患もそうですが、まず薬剤の内容から入れると言う事は、ありがたい構成です。

 

本書は、まず対象として主な薬剤のプロフィールの特徴などをしっかり学び、その後薬物療法の鉄則を、実際のエコー写真なども交えながら、わかりやすく解説されています。患者さんが医師にどのような説明をされているのであろうか、という事を少し知ることができるのもありがたいです。

 

ACE阻害薬とARBの項では、優先度の記載もあり、国内ではARBが多く使われている事情があるにもかかわらず、わかりやすい解説がなされている。

また誤嚥性肺炎の予防効果といった、私たちが普段知識として備えておくべき項目も記載されている。

 

そしてそのACE阻害薬とARBが、その薬剤ごとに、主な特徴、エビデンス等が区別化されている。この情報は非常に有用でわかりやすいものである。実際何が違うの?という話は循環器内科医以外からも聞かれますし、薬学生からも聞かれます。

 

前半の、薬物療法の基礎のところでのプロフィールを学んだ後は、実際の循環器疾患、特に虚血精神疾患や心不全などの病状からガイドライン等を用いたステージング別の薬物療法の鉄則と言う形で解説がなされています。

またそこではそれぞれの薬剤の使い分け、特にβブロッカーの使い分けなども書かれており、読んでいて非常に勉強になる内容となっています。

 

 

さらにその後実際循環器疾患の患者を見る際の、支えるような鉄則として、処方箋薬以外の項目も挙げられています。

特に店頭で何を確認すべきかといった形で、保健薬局側の視点からのページもあるのが、調剤と情報の別冊、その視点があります。

近年処方箋に印字される検査値等についての記載も、簡単ではあるがされています。循環器用薬の院外処方箋を受け取った薬剤師にとっても有用であると思われます。栄養指導や運動療法も含めた記載などもあり、トータルで薬剤師が行うべき循環器疾患へのフォローがなされています。

 

最後に、実際あった症例をもとに、病院薬剤師がどのような形で介入しているか、と言う事例が書かれています。これは、良い介入悪い介入と言う形で分かれており、これまでの情報をしっかり頭に入れておくと、その内容が理解できるような作りとなっています。

 

本書は250ページを超える別冊となっていますが、主に4つの項目に分かれており、基礎的なところから、薬の特徴、また疾患の薬物療法における原則や、それ以外の患者の薬剤に関する被害の情報と、最終的にどのような形で薬物使用に介入していくかという、最初からゴールまでを多くアシストしたような書籍となっています。

 

はじめに記載したように、循環器疾患の薬剤を服用している患者さんは非常に多く、循環器病院や循環器病棟の専門の薬剤師だけではなく、それ以外の薬剤師においても、循環器用薬学ぶ薬剤師にとっては、本書は現状の知識の整理に役立つ本ではないかと考えられます。

本棚に置いておいて、何回か見直しながら、学んでいこうと思います。ガイドラインも随時改定されますし、このような書籍が定期的に発刊されるとありがたいと思いました。

よろしければ、ご一読いただければと思います。