2019/5/22薬価収載のテリルジーについて勉強してみる.
- テリルジー100エリプタについて
- COPDについて
- エリプタ兄弟を眺めてみよう
- テリルジーの特徴
- エリプタはスゴイ
- 今,まさしく旬な情報
- その他の注意など
- 気になる安全性について
- その他の情報
- 本製剤のまとめ
テリルジー100エリプタについて
販売名:テリルジー100エリプタ14吸入用/ テリルジー100エリプタ30吸入用
一般的名称:フルチカゾンフランカルボン酸エステル
ウメクリジニウム臭化物
ビランテロールトリフェニル酢酸塩
薬効分類名:3成分配合COPD治療剤
製造販売元:グラクソ・スミスクライン株式会社
効能又は効果:慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の諸症状の緩解(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)
用法及び用量:通常、成人にはテリルジー100エリプタ1吸入(フルチカゾンフランカルボン酸エステルとして100μg、ウメクリジニウムとして62.5μg及びビランテロールとして25μg)を1日1回吸入投与する。
薬価:14吸入1キット4107.40円、30吸入1キット8692.80円
1日当たりの薬価293.39円(14吸入),289.76円(30吸入)
GSKの方が,『薬価決まりましたー』とお電話いただけました.
『30吸入,8692.80円,ハローキューニューで覚えてください!』との事です.
これはGSKさんの公的な見解なのか,このMRさんの見解なのかは不明です.
薬価を覚える必要はないと思いますが,
ハローキューニューは連呼したい単語ですね.
さすが,呼吸器系薬剤を取り扱っているMRさん,と感銘を受けた限りです.
名称の由来:テリルジー:該当資料なし
エリプタ:楕円形(ellipse)
名前は残念な気がします.
3のイメージが“トリ”なので,初めはトリルジーって覚えていました.違ってます.
トリルジーでもなくテルリジーでもなく,テリルジー.
間違えそうです.覚えられる自信がないです.
COPDについて
COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン〈2018〉が発刊されています.
・タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することなどにより生じる肺疾患
・呼吸機能検査で気流閉塞を示す
・徐々に進行する労作時の呼吸困難,慢性の咳と痰
・2015年のWHOの調査では,COPDは死因の第4位
・国内では死因の第10位で,高齢者の割合が多い
・治療について,安定期のCOPDの薬物療法は,単剤で不十分な場合はLAMA,LABAを併用する.喘息合併の場合はICSを併用する
COPDにおけるLAMA/LABAの位置づけは不動ですが,ICSは喘息合併時の薬剤と位置付けられています.
今までは2剤までの合剤しかなかったため,ガイドラインでは
喘息病態の合併が得られる場合はICSを併用するが,
LABA/ICS配合薬も可,とされています.
今回発売したテリルジーは,3剤の配合剤のため,
適応もこれらの必要がある場合,となっています.
COPDがあり,喘息病態の合併の方への薬剤となっています.
テリルジーは,すなわちICS+LAMA+LABAの全部乗せの薬剤です.
2剤の配合剤が発売されたときに,冗談のつもりで,『次は3剤配合ですね』
と言ってみたら,実は…(ほとんど教えてくれませんでしたが…)
と以前より噂はありましたが,いよいよ発売されました.
エリプタ兄弟を眺めてみよう
それでは,GSKさんのエリプタ兄弟
(勝手に命名しました.ゴメンナサイ)を比較してみましょう.
どれも1日1回1吸入,1アクションで吸入可能な,デキル薬剤たちです.
ちなみに,
①テリルジー1剤と同様の組み合わせは,
②レルベア100とエンクラッセの組み合わせ,
③アニュイティ100とアノーロの組み合わせで同じものになります.
名前もそうですが,色々と間違えそうですので,一覧を一生懸命作成いたしました.
参照ください.カラフルでフィット感もあり,オシャレですね!
薬価ですが,30吸入として,
①テリルジー単剤・・・8692.80円(はろーきゅうにゅう)
②レルベア100とエンクラッセの組み合わせ・・・11,567.10円(差額2,874.30)
③アニュイティ100とアノーロの組み合わせ・・・9823.8円(差額1,131.00)
1日薬価は下記になります.
①289.76円/1日
②385.57円/1日(差額95.81)
③327.46円/1日(差額37.70)
同じ内容のものを,2つ組み合わせて吸入するよりは
簡単ですし薬価も安いですね.
エリプタ兄弟は,名前を一生懸命覚えようとしても難しいかと思いますので,一覧を眺めてみて下さい.
アニュイティとか日本人ではなかなか発音しにくくないですか?
テリルジーの特徴
IFより抜粋です.
1.テリルジーは ICS/LABA に比べ、呼吸機能(トラフ FEV 1 値)を 97mL 改善
2.テリルジーは、中等度/重度の年間増悪発現率を 0.91(回/人・年)と、LAMA/LABA の 1.21(回/人・年)に比べ 25%低下
3.1 日 1 回 1 吸入のエリプタ製剤で、1 アクションで操作が可能なデバイス
4.第Ⅲ相国際共同試験(投与期間:52 週)において、本剤が投与された総症例 4151 例中 485 例(11.7%)に臨床検査値異常を含む副作用が報告された。その主なものは、口腔カンジダ症 101 例(2.4%)、肺炎45 例(1.1%)、発声障害 26 例(0.6%)であった。(承認時)
2剤に比べて3剤の方が,効果が高いのは,誰が見てもそうでしょうし,
この結果がでなければ,問題となってしまうでしょう.
1,2は当然の結果でしょうか.
そして3が最も意義があるのではないでしょうか.
2.の試験はIMPACT試験です.
N Engl J Med. 2018 May 3;378(18):1671-1680. doi: 10.1056/NEJMoa1713901. Epub 2018 Apr 18.
Once-Daily Single-Inhaler Triple versus Dual Therapy in Patients with COPD.
PMID: 29668352
3剤のテリルジーと,2剤のICS/LABAもしくはLAMA/LABAと比較して
効果が高かったとされている試験です.
本試験の詳細は省きますが,COPDの患者さんへの投与で,
現在喘息と診断されている方は試験から除外されています(過去の喘息の既往の方は含まれているようです).
その条件で,中等症から重症の増悪の回数が少ないというのは,
有用性が高いのではないかと考えられます.
エリプタはスゴイ
エリプタの構造は下記GSKさんのHpにあります.
エリプタ(吸入器) 内部構造|医療関係者向け情報 GSKpro
以前透明なシースルーのエリプタを見せてもらったことがありますが,
とても興味深かったです.
本当によくできているなぁ,と
ずっと眺めていたい気持ちになったのを覚えています.
薬剤の進歩とともに,吸入デバイスも進化していますが,
このエリプタは,1アクションで吸入できるメリットが最も優れていると思います.
リンク先にもありますように,渦巻き状に収納されたブリスターが,吸入時に2方向から押し出される形になっています.
動画でみれるといいんですけどね.
そうすると2剤の場合はいいのですが,今回のように,
3剤になった際にはどうなっているのか気になりました(私だけ?).
審査報告書に記載があります.
以下引用です.
本剤は、吸入器に 14 個又は 30 個のブリスターを有する 2 本の両面アルミニウム製のブリスターストリップが組み込まれており、一方のブリスターストリップ(FF ストリップ)には 1 ブリスター当たり FF 100 μg を含む混合粉末が、もう一方のブリスターストリップ(UMEC/VI ストリップ)には 1 ブリスター当たり UMEC 74.2 μg(ウメクリジニウムとして 62.5 μg)及び VI 40 μg(ビランテロールとして25 μg)を含む混合粉末がそれぞれ充てんされている。
ちょっと長いですが,1つ目にステロイドであるFFが入っていて,
もう一つの方にLAMAのUMEC+LABAのVIが入っていて,
これが吸入するときに混ざり合って3剤となるようです.
3つがバラバラに入っているわけではなく,
ICS/LAMA+LABAの2つに分かれている,という事になっているようです.
・・・だから何?
と言わないでください・・・
この知識,役に立つときがあるのでしょうか?
書いていて不安になってきました.
GSKの方とは盛り上がりそうな情報ですね.
私は,エリプタは持った感じもスキです.デザインも,色合いも.そして何よりこの中身がスゴイ!
使い捨てでよいのか,と感じるくらいよくできています.
こういうの考えられる人って素晴らしいです.
吸入指導もスキです.
エリプタ愛にあふれていますので,
エリプタ専門薬剤師になりたいです.
今,まさしく旬な情報
ちょっとエリプタ愛のため脱線してしまいましたが,今しかない情報を.全く役立ちませんが,ネタとしてどうぞ.
発売しておそらくすぐ修正されると思いますが,現時点でテリルジーは
『処方せん医薬品かどうか不明(企業未登録)』
となっています.
証拠はコチラです.すぐ登録されるでしょう.今まで長いこと添付文書を眺めてきていますが,この記載は初めてでした.
よほど登録時に急いだのでしょうか?
これをのせてしまうPMDAの方も素敵です.
PMDAとGSKがすこし身近になった気がしました.
ちなみに,GSKの誇る他のエリプタ兄弟は
レルベア;処方せん医薬品
アニュイティ;処方せん医薬品
アノーロ;処方せん医薬品
エンクラッセ;処方せん医薬品
です.
他のお兄さんたちがみんな処方せん医薬品です.
末弟のテリルジーも,処方せん医薬品でしょう.それしか考えられないのですが,GSKさんは忘れてしまったのでしょうか?
なんだか不思議ですよね.
これも全く役に立たない情報でした.でも,今が旬ですよ!
その他の注意など
効能又は効果に関連する使用上の注意
1.本剤は慢性閉塞性肺疾患の症状の長期管理に用いること。
2.本剤は慢性閉塞性肺疾患の増悪時の急性期治療を目的として使用する薬剤ではない。
吸入薬の基本的な説明ですが,やはりしっかりとコントローラーの
薬剤であることを説明し,理解いただく必要があるでしょう.
急性期治療を目的としていないことの説明と,理解は必要かと思います.
シムビコートで混乱していた患者さんも多くいましたので,
吸入指導と共に理解が必要な部分かと思います.
用法及び用量に関連する使用上の注意
患者に対し、本剤の過度の使用により不整脈、心停止等の重篤な副作用が発現する危険性があることを理解させ、本剤を1日1回なるべく同じ時間帯に吸入するよう(1日1回を超えて投与しないよう)注意を与えること。
過剰すぎる上記の説明をすることによっては,吸入の必要性より不安ととらえられてしまう可能性があります.
ただ,COPDの患者さんは高齢者が多いのも事実です.
同じ時間で,吸入することについて説明する必要性は高いと思います.
私はLABAの説明時にも,あまり心臓の事を伝えるより,
間隔が近いと副作用の面で,といった形で説明することが多いです.
とにかく定期的な吸入を,忘れずに継続してもらう事の必要性を考えながら,上手に薬を使っていただくことをご説明しています.
重要な基本的注意
この内容は,当然理解しておくことが必要です.
薬剤の特性から,特に基本的な内容が書かれています.理解しておきましょう.
勝手に中止しない,という説明をすることは最も必要なことかと思います.
私も,吸入指導をしながらいつも必ず説明しています.
1.本剤は気管支喘息治療を目的とした薬剤ではないため、気管支喘息治療の目的には使用しないこと。なお、気管支喘息を合併した慢性閉塞性肺疾患患者に本剤を適用する場合には、気管支喘息の管理が十分行われるよう注意すること。
2.本剤の投与期間中に発現する慢性閉塞性肺疾患の急性増悪に対しては、短時間作用性吸入β2刺激剤等の他の適切な薬剤を使用するよう患者に注意を与えること。
また、その薬剤の使用量が増加したり、あるいは効果が十分でなくなってきた場合には、疾患の管理が十分でないことが考えられるので、可及的速やかに医療機関を受診し医師の治療を求めるよう患者に注意を与えること。
3.用法・用量どおり正しく使用しても効果が認められない場合には、本剤が適当でないと考えられるので、漫然と投与を継続せず中止すること。
4.本剤の投与終了後に症状の悪化があらわれることがあるので、患者自身の判断で本剤の使用を中止することがないよう指導すること。また、投与を中止する場合には観察を十分に行うこと。
5.本剤の吸入後に喘鳴の増加を伴う気管支痙攣があらわれることがある。そのような状態では、患者の生命が脅かされる可能性があるので、気管支痙攣が認められた場合には、直ちに本剤の投与を中止し、短時間作用性気管支拡張剤による治療を行うこと。また、患者を評価し、必要に応じて他の治療法を考慮すること。
6.全身性ステロイド剤と比較し可能性は低いが、吸入ステロイド剤の投与により全身性の作用(クッシング症候群、クッシング様症状、副腎皮質機能抑制、小児の成長遅延、骨密度の低下、白内障、緑内障、中心性漿液性網脈絡膜症を含む)が発現する可能性がある。特に長期間、大量投与の場合には定期的に検査を行い、全身性の作用が認められた場合には患者の症状を観察しながら適切な処置を行うこと。
7.本剤の臨床試験において肺炎が報告された。一般に肺炎の発現リスクが高いと考えられる患者へ本剤を投与する場合には注意すること。(「重大な副作用」の項参照)
8.過度に本剤の使用を続けた場合、不整脈、場合により心停止を起こすおそれがあるので、用法・用量を超えて投与しないよう注意すること。(「過量投与」の項参照)
気になる安全性について
添付文書,審査報告書,RMPのいずれにも記載がありますが,
肺炎の発現率が高い傾向とされています.
COPDは高齢者が多いとされていますが,加齢とともに肺炎の発現割合も
高いとされていますので,より注意が必要とされています.
その他の情報
上に書いた情報も,役に立たない,その他のようなものも多いですが・・・
吸入薬はCOPD,気管支喘息と適応が異なっているものもありますが,
両方の適応がある薬剤もあります.
テリルジーも,FFが200となった薬剤も含む,3剤療法での有効性についての試験が報告されています.
喘息患者を対象としたテリルジー エリプタの第Ⅲ相CAPTAIN試験、主要評価項目を達成 | GSK グラクソ・スミスクライン株式会社
今後の適応追加が待たれます.
そして今回のテリルジーは,発売と同時に過去の薬剤の使用経験などから,
長期投与可能となっている薬剤です.
30吸入が処方可能となっています.
これは良い対応ですよね.
内服薬の2剤配合剤は,原則として2剤を併用していた場合,
あるいはいずれか一方を使用し血圧コントロールが不十分な場合に,
配合剤への切り替えを検討すること,となっていますが,
今回の吸入薬,テルリジーは特にそのような規定はないそうです.
本製剤のまとめ
本邦初の,3剤配合の吸入薬が使用できるようになりました.
アストラゼネカからも3剤配合剤が上市される予定のようです.試験などの情報があります.
https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2018/2018092101.html
吸入薬は,内服薬と異なり,しっかり吸入できているかが最も大切な薬剤となります.
私も過去,入院患者さんにスピリーバのカプセルや,オンブレスなど,
吸入の前に,カプセルに穴をかける行程を行っていないで吸入していた(!!)
方に遭遇しました.
嘘かと思いましたが,1人2人ではないです.
高齢の方に,吸入をしっかりしていただくというのは,とても大切なことで,
さらにそれを継続していただくというのは,
そのデバイスの使い方をしっかり理解いただくことに他なりません.
世の中,医薬品以外でも様々なものが開発され,素晴らしいものが上市されてきます.
配合剤,というのは,その患者さん個々によって
用量の調節が難しいことなどからも,
内服薬に至っては,処方を避ける先生方もいらっしゃいます.
しかしながら,点眼,吸入といった外用薬に至っては,用量が固定されている薬剤において,配合剤のメリットは非常に高いと感じます.
それにしても,さっきから
テリルジーと書きたいのが,テルリジーとなってしまい,困っています.
ラ行が続くのは,何とも発言しにくいですよね.
どなたか覚え方をお教えください.
オーダー時の検索名称を,
テリルジー,テルリジー,トリルジー,
全部登録使用かと思ったりしました.
ちなみに,上記記事,わざと1か所,テルリジーとしてあります.
見つけられましたでしょうか?
普通に読んでいても,気づかないですよね,そんな部分は.
私の言いたかったことですが,
GSKのエリプタ兄弟の一覧を一生懸命作成してみたのでぜひご活用ください
という事(!?!)です.
カラフルで楽しかったです.
最後までお読みいただき,ありがとうございました.
COPDのよりよい治療のために必要な,有用な医薬品であることを,最後につけ加えさせさせていただいて,終わりとさせていただきます.