病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

【薬のお勉強】モビコール配合内用剤

2018/11/20薬価収載のモビコール配合内用剤について勉強してみる.

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便秘?

 



モビコール配合内用剤について

販売名:モビコール配合内用剤

一般的名称:マクロゴール4000,塩化ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,塩化カリウム

薬効分類名:慢性便秘症治療薬

製造販売元:EAファーマ株式会社

用法及び用量:本剤は,水で溶解して経口投与する.

通常,2歳以上7歳未満の幼児には初回用量として1回1包を1日1回経口投与する.以降,症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量は1日量として4包まで(1回量として2包まで)とする.ただし,増量は2日以上の間隔をあけて行い,増量幅は1日量として1包までとする.

通常,7歳以上12歳未満の小児には初回用量として1回2包を1日1回経口投与する.以降,症状に応じて適宜増減し,1日1~3回経口投与,最大投与量は1日量として4包まで(1回量として2包まで)とする.ただし,増量は2日以上の間隔をあけて行い,増量幅は1日量として1包までとする.

 

通常,成人及び12歳以上の小児には初回用量として1回2包を1日1回経口投与する.以降,症状に応じて適宜増減し,1日1~3回経口投与,最大投与量は1日量として6包まで(1回量として4包まで)とする.ただし,増量は2日以上の間隔をあけて行い,増量幅は1日量として2包までとする.


薬価:1包83.90円 類似薬効比較方式(Ⅰ) 小児加算A=5% 成人平均3包としての薬価
1日当たりの薬価 グーフィス(211.6円),アミティーザ24μg(222.2円)

 

名称の由来:特になし(MOVICOLとして米国を始め同様の名称で販売されている)

 

慢性便秘について


・医学的に便秘とは,「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義される


・排便回数減少によるもの(腹痛,腹部膨満感など),硬便によるもの(排便困難,過度の怒責など)と便排出障害によるもの(軟便でも排便困難,過度の怒責,残便感とそのための頻回便など)がある

・本邦における便秘の有訴数は,人口 1,000 人につき女性48.7 人,男性 26.0 人.9 歳以下の小児では人口 1,000 人当たり女児 7.4 人,男児 4.6 人(平成 25 年国民生活基礎調査)

・便秘で受診している総患者数は,20.9 万人(女性14.1 万人,男性 6.8 万人)であり,そのうち 14 歳以下の小児は 2.7 万人(女児 1.6 万人,男児 1.0万人) (平成 26 年患者調査)

・小児の便秘はいったん治療が成功しても,高率に再発し,成人期への移行例も少なくない.

・特に小児の便秘は適切な早期治療が求められる

 

今回発売されたモビコールの特徴について


(1) 海外のガイドラインにおいて,慢性便秘症の治療薬として推奨
・英国の NICE ガイドライン(2010 年),北米小児栄養消化器肝臓学会及び欧州小児栄養消化器肝臓学会のガイドライン(2014 年),世界消化器病学会(WGO)のガイドライン(2010 年),及び米国消化器病学会(AGA)のガイドライン(2013 年)などで推奨されている


(2) 慢性便秘症に対して使用可能な国内初のポリエチレングリコール製剤
・小児(2 歳以上) 及び成人において使用可能


(3) 主成分のポリエチレングリコールの浸透圧効果による排便作用
・ポリエチレングリコールにより腸管内の水分量が増加,便中水分量が増加し,便が軟化,便容積が増大することで,生理的に大腸の蠕動運動が活発化し排便が促される


(4) 水で溶解して服用し,適切な硬さの便がみられるまで適宜増減が可能


(5) 国内第Ⅲ相臨床試験において,早期から下記の優れた効果を示した.
① 成人及び小児を対象とした第Ⅲ相試験において,自発排便 回数が有意に増加
② 成人及び小児を対象とした第Ⅲ相試験において,Bristol 便形状スケールに基づく便硬度において健常な糞便の形状とされるスケール 4 に近似した値で安定して推移


(6) 承認時までの国内の臨床試験では 192 例中 33 例(17.2%)に副作用が認められている.主な副作用は下痢 7 例(3.6%),腹痛 7 例(3.6%)であった.
なお,重大な副作用としてショック,アナフィラキシー(頻度不明)があらわれることがある.


ポリエチレングリコールって


・ポリエチレングリコール(PEG;polyethylene glycol) は,海外ですでに便秘薬として使用されている


・世界中では,平均成人で1900万人(延べ),小児で118万人(延べ)に処方されている


・物理化学的性質により,結腸への水の浸透圧流を増加させて水分を結腸内に貯留することで,便容積を増大させることにより効果を示す

 

参考;モビコールインタビューフォーム2018 年 11 月改訂(第 2 版),審査報告書

 

本製品を服用するにあたっての注意


・水で溶解して服用する.(製剤として,7日程度は安定だが,)汚染を考慮して1日での使用が望ましい


・1包あたり水60mL,2包で120mL,3包で180mLに溶解する


・溶かしてすぐ飲めない場合は,ラップなどで蓋をして冷蔵庫保管


・リンゴジュースなどで溶解して服用可


・増量する方法が決まっている.年齢によっても異なるが,初回は少なめから服用する
上記はモビコールを服用される方へ,という患者さん用の説明用紙に記載がある


その他の注意など


増量する場合は,2日以上の間隔をあけて行う
 例;1日目服用,増量は3日目以降,同様にさらに増量する場合は5日目以降となる


・ほかの薬と混ぜたデータはなし


2歳未満は適応外(海外では18カ月未満の報告もあるようですが,海外でも2歳未満の適応なし)


妊婦さんへは有益性投与.海外でも使用されている.禁忌とはなっていない


・ショック,アナフィラキシーの記載あり.ただしモビコールでの報告は,国内では現在(2019/02/05)までなし.PEGとして,ニフレックが116g,モビプレップは200g.モビコールは6.5gと圧倒的に少ない


・マグコロール4000以外の塩化ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,塩化カリウムは,60mLに溶解した際に,等張となるように配合されているので,なるべく溶解量を守る


・1回分として分包せず,溶解したものを分けて服用する.吸湿により固化,見かけの含量低下(過酷試験,25℃,90%RH,アルミニウムラミネート袋,開放で3ヶ月)


消化管から吸収されないので,透析患者にも有用.吸収の際の相互作用の報告もなし.


・成人の服用前の排便回数が平均1-2回/週だった便秘の患者さんに投与し,服用開始2週間後にプラセボで3回/週だったのに対して5-6回/週の自発排便となった


・服用により,Bristolの便形状スケールの中央値は服用開始2週後に4に達した(健常な便形状)


有害事象は服用開始90日までが多い.腹痛,下痢,悪心,腹部膨満が主な副作用となっている

 

話題の2剤と勝手に比較


完全に独断と偏見です.参考になりません.ご注意下さい.
モビコール配合内用剤,アミティーザカプセル,グーフィス錠の比較です.
それではスタート!

 

一般名


モビコール    マクロゴール4000
アミティーザ   ルビプロストン
グーフィス    エロビキシバット

 

うーむ,覚えやすさは圧倒的にモビコールですね.ルビプロストンも結構かっこいいです.それに比べてなんですか,グーフィスの一般名.

エロビキシバット.これは覚えられませんね.どこで切るのかも分からないですね.

 

そういえば学生時代,マクロゴールがどうしても覚えられず,マグロゴール,”マグロ“ゴール!”になってしまうヒト,いませんでした?


わたしもそのうちの一人です.マグロがゴールってなんだよ,ってよく言われました.軽くトラウマです
一般名は知らなくても何とかなりますが.

 

 

 

 

 

  

 

 

 

用法用量


モビコール   成人1日1包~6包,小児1包~4包年齢・症状により適宜増減
アミティーザ  1回24μgを1日2回,朝夕食後.適宜減量
グーフィス   10mg1日1回,食前投与,適宜増減,最大15mgまで

モビコールは上述した通り,水に溶いて服用,初回用量が決まっています.増量方法も決まっています.少し複雑ですね.
それに比べてグーフィスの服用方法は簡単ですね.

 

慎重投与


モビコール   なし
アミティーザ  中等~重度の肝機能障害,重度の腎機能障害
グーフィス   重篤な肝障害

モビコールは投与しやすいですね.酸化マグネシウムも腎機能に注意は必要です.腎機能,肝機能が低下した方にも選択可能なモビコールは貴重です.

 

重大な副作用


モビコール   ショック・アナフィラキシー
アミティーザ  なし
グーフィス   なし

 

重大な副作用は,無い方がよいですが,上記の通り,モビコールは現在までに国内の報告はないですが,設定されています.

 

併用注意の薬


モビコール   なし
アミティーザ  なし
グーフィス   胆汁酸製剤(ウルソデオキシコール酸,ケノデオキシコール酸),アルミニウム含有制酸剤(スクラルファート水和物,アルジオキサ等),コレスチラミン,コレスチミド,ジゴキシン,ダビガトラン,ミダゾラム

 

グーフィスは併用に注意が必要です.他の2剤は特に気にする必要はないです.

 

以上,ざっとですが,比較してみました.それぞれ特徴があるので,うまく使い分けていきたいですね.

 

本製剤のまとめ


小児での投与が可能な便秘薬が登場しました.

なかなか自分から言いづらい症状でもあることから,安全性の面からもこのような薬剤が要望されていたこともあり,期待が大きい薬剤と思われます.


しかしながら,開始用量,増量とタイミングには注意が必要です.薬袋の表記なども十分に注意したいところです.


初回は少なめからの投与のため,プラセボと差がでるのが2週目となっています.添付文書通りの低用量からの服用となるため,ルビプロストンなどと比べると,効果が出るまでには,服用し始めてから少し時間がかかるかもしれません


水に溶いて服用,ということで,他の薬剤より少し服用しづらくなっていますが,それ以上に期待できる薬剤となっています.


ラクツロース製剤であるラグノスNF経口ゼリーも,現在(2019/2/6)では供給が安定していないようですが,便秘に使用できる薬剤として新たに発売となります.これは後発品扱いです.


薬価などからマグネシウム,センナ,ラクツロースなどが用いられていますが,最近発売されてきた薬剤も含め,モビコールは,やはり小児での使用,腎機能,肝機能が低下した方など,また,薬剤が吸収されないので妊婦さんや透析患者さんにも有用な薬剤かと思われます.

長期投与までは,まだまだ情報収集が必要になりますが,目立った副作用がなければ,今後使用される機会は増えてくるでしょう.

 

モビコールがなかなか覚えられないのですが,上記のマクロ“ゴール!”を思い出して
覚えましょう.


ちなみにEAファーマさんから発売しているモビプレップは,move(動く)PREP(前処置):英語  腸管内容物を動かし,検査の前処置を行うという意味で名付けた.
となっていて,それっぽいですね.

 

同じ会社の製品なので,モビプレップと同様の“モビ” + マクロゴールの “ゴール!”
で私はモビコールを覚えることにします.

モビ”ゴール”,ですかね(^^♪