ずいぶん不吉なタイトルとなってしまいましたが,こんなニュースが最近ありましたので考えてみます.
せっかくご訪問いただいたのに,変な内容ですみません.最近サボっていて,書いてみたと思ったら,暗い内容です.それでも考えてみたいと思います.
国試合格率低い6年生薬学部は問題、財政審で議論
国試合格率低い6年制薬学部は問題、財政審で議論 - CBnewsマネジメント
上記の記事によりますと,財務省の財政制度等審議会が2019/5/16に行われ,
議論されたところ,シラバス(授業計画)が十分ではなく,
教育の質を保証できていない大学があるという指摘があった,とされております.
資料はこちらから確認できます.
文教・科学技術について,という資料に含まれている内容についての話となっております.
平成から令和になって,明るい話題を期待していたのですが
内容を見てみると,いろいろと考えなくてはいけないことがたくさんありそうです.
薬学部の部分としては,21ページからとなっています.
国家試験の合格率に大きな差がある
例えば,薬剤師を⽬指す6年制薬学部において,6年間で国家試験に合格した学⽣の割合が19%から100%まで⼤きな差がある.
確かにこれは大きな問題です.特に資料を見ると,私学の問題が大きいことが分かります.
数字だけ見ると,とても同じことを教えているとは言えないと思います.
もちろん偏差値や大学の特徴も含め,異なっていることは承知しているつもりですが,それにしても大きいですよね.
そしてこの問題が,厚生労働省,文部科学省というところからの資料ではなく,
財務省,というのも気になるところです.違和感,感じませんか?
財務省は,今さら説明するものではないですが,
「健全な財政の確保、適正かつ公平な課税の実現、税関業務の適正な運営、国庫の適正な管理、通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保を図ること」を任務とすると財務省設置法に規定されている
とある通り,国の予算を管理しているところとなるわけです.
これは,すごいところから指摘をされたものだと感じます.
そして上記の記事では,教育不十分な大学は,経済的負担軽減から除外に,という事が書かれています.
かなり過激ですが,
薬学部として金銭的な補助を行っていても,学生が薬剤師国家試験に合格できていないではないか.しっかり教育しているのか.
といったことが言われているのでしょう.少し語弊があるかもしれませんが,その通りなのでしょう.
薬学部に限ったことではありませんが,大学の経営というのは,子供が少なくなり,
大学が増えてきている以上,簡単なものではないことは容易に想像がつきます.
下記は東洋経済の記事ですが,補助金の依存度が高い大学は多数あり,
ここに挙げられたところは,私はあまり存じ上げないところが多いですが,
薬学部は入っていませんでしたが,補助がないと成り立たない大学が存在していることは確かです.
「補助金依存度が高い私立大学」ランキング | 本当に強い大学 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
私立大学の補助金の交付状況も下記で公開されています.
上位は学生数も多く有名な大学が並んでいます.補助金が100億円近い大学もあります.
対象となっている大学は500以上で,億単位の補助金が薬学部でも動いていることが分かります.
以前,病院,医学部を持っている貸借対照表などを眺めてみて,その内訳を見てみたことがあります.
医療収入がある大学は,その割合が高くなっています.
それに比べると大学の学費の収入が少ないことを考えると,
大学は,学生からの学費だけでは,経営が厳しいということがはっきりとわかります.
国公立の大学でもなければ,将来母校がなくなっているかもしれないという状況があり得るのは,何とも寂しい限りです.
しかし,これが現状なのでしょう.
教育,医療は,もうけ過ぎてはいけない,イメージが強いかと思います.
難しい問題ですね.
大学はお金がかかる
学ぶのにはお金がかかるのは,日本全国同様でしょう.
義務教育ではない大学,かなりの人が大学まで進学するようになった現在,
その費用の捻出には苦労している方が多いと思います.
特に医療系は,学費は高額です.薬学部にあっても,6年生の学費,
私学の平均は12,341,545円とされています.
こちらのHpを参考とさせていただきました.含まれていない大学もありますが,私立の薬学部は,
学費だけで1000万円,6年間という時間を費やす大学,薬学部という現実があります.
薬科大学の学費について 関東私立薬学部の6年間で安い大学はどこか
薬学部は教育の質を保証できていないのか
薬学の教育評価の報道として気になるものがありました.
2019年4月のものです.
【18年度薬学教育評価】第一薬大の総合判定保留‐ストレート卒業率を問題視
【18年度薬学教育評価】第一薬大の総合判定保留‐ストレート卒業率を問題視|薬事日報ウェブサイト
6年生の薬学教育評価を専門分野別に行った結果,
第一薬科大は評価基準の中項目5項目に重大な問題点が認められるとして、総合判定を保留とした
となっております.教育のカリキュラムでの指摘となると,あまり悠長に考えられる指摘ではないかと思われます.
上記記事によると,13校が指摘され,12校は評価基準を満たしたとされているので,
少なくとも薬学の教育内で,このようなチェック機構があり,それが機能しているという事が分かるという解釈をしたいのですが,
残念ながら,その基準を満たしていない大学もあるという事実も,受け止めなくてはいけないのかもしれません.
薬学教育機構の記事は過去にもあります.
【薬学教育評価機構】北陸大の総合判定を保留‐国試偏重、高留年率に懸念
【薬学教育評価機構】北陸大の総合判定を保留‐国試偏重、高留年率に懸念|薬事日報ウェブサイト
2016年の記事ですがここでも同様に,北陸大が総合判定を保留とされているとなっています.
薬学教育評価機構,が質の担保を行っているという事になるでしょうか.
職場で話していても,
「どうせ天下りの機関でしょ.何しているかわからないところなんじゃないの」
なんて厳しい意見をいただきました.
別に私はそこで勤務しているわけではないのですが,別にそんなことはどうでもいいのです.
「そんなことを言ったら,日病○や,薬剤師〇〇センターだって同じじゃん」とすぐさま別の人から言われましたが.
教育というものの評価は難しいですよね.
なんせ人によって理解度も違うし,測り方も様々ですし.
国家試験合格率が全てではないかもしれないし,全てかもしれないし.
薬剤師国家試験について考えてみました.過去の記事ですが,もしよければお読みくださいm(__)m
私が在学中の授業,あまり思い出しきれないのですが,
教授が好きな研究の話などをして終了していた授業もありました.
当時は,よく分からないけど,このセンセの単位はとれるからラッキーくらいにしか感じていなかったのかもしれません.
教育は受ける側と教える側で立場も異なりますし,受け取り方も異なると思います.
そしてそれを評価するのが薬剤師国家試験だとしたら,やはりその目標に向かって,
教育を積み上げていくことは間違っている事ではないでしょう.
薬学の領域も,医学ほどではないかと思いますが,進歩が速く,
最近の青本を見ても,こんな薬まで勉強の範疇に入っている今の薬学生ってスゴイな,
と感じることも多々あります.
私は,決してテキストも含め,現在の薬学教育が間違っていないと思いたいです.現場との乖離は感じることもありますが,それはどの職種でもそうでしょう.
とりわけ薬学が,とは思っていません.
薬学部の費用対効果
この言葉が当てはまるとはいえませんが,
教育のために費やすお金,時間には当然限りがあるのは周知の事実です.
どんな人にも有り余るお金と時間を使って教育するというのは,現在では非効率かと思います.
そして,現在の薬学部卒業の就職先,賃金などを考えると,とても見合ったものとは思えないのが現状です.
財務省という,これからの日本の経済を支えていく根本となる省庁であるところが,
薬剤師教育として,
本当にそこまでお金をかけ,教育することが社会に貢献できているのか,
そしてその根本となる薬剤師国家試験に,大学によって差がありすぎるのは,
その教育について疑問があるのではと指摘していることは,早急に考え,解決すべき問題なのではないかと感じています.
令和となった現在,薬学部を目指す方がいる一方で,
薬学部がなくなる可能性も,
悲しいですがあり得るのではないかと,感じてしまうような,
衝撃的な内容だったと思います.
薬学生は勉強していないのか
これは分かりません.人によりますし.
私が学生時代,周りはしっかりやっている人が多いと感じていました.
他の学部のお話を聞いている限り,のんびり過ごしている学生が,
進学できるばかりではないのが薬学部でしょう.
上記財務省の資料は衝撃的ですが,少し紹介します.
薬学部の大学生というわけではなく,大学生,とした場合の内容ですが,
⼤学⽣の学習時間は、⼩学⽣よりも短い
⼤学⽣の学習時間は、⼩学⽣よりも短い。また、授業外の学習時間が1⽇1時間未満の学⽣は全体の6割以上。
小学生がすごいのか,大学生がサボっているのか.
1日当たりの勉強時間,
小学生5.9時間
中学7.1時間
高校6.8時間
大学4.4時間
となっています.確かに負けていますね.ガンバレ大学生!!
資料は米国との比較ですが,
米国の大学生が,1日1時間未満の割合が2割以下なのに対して,日本は6割以上となっています.
勉強は時間数ではない,内容だ,と感じる方もいらっしゃるかと思います.私もそう思いたいです.こんな資料を見せられると.
学業となっている,授業と思われる時間も大学生が少なくなっています.
大学生は時間がある,というイメージ通りの結果となってしまっているのは残念ですが,
部活やアルバイト,それ以外にも学生時代に経験しておく必要があることは
多岐にわたります.
勉強時間ばかり,というのがよいかもわかりませんが,
この世代をピークに,記憶力の低下が起こり,
新たなことが覚えられなくなるという経験をしている以上,
今の若い方には勉強してもらいたい気持ちもあります.
私学の薬学部の学生は,比較的金銭的に恵まれて,
アルバイトをしなくても生活できている学生さんもいますが,
当施設に実習来られる学生の半数以上は,何らかのアルバイトをしていたりします.
研究,実験なども授業に入っているため,薬学部の学生は,
部活をできる時間がとれない人もいます.
世間一般の大学生のイメージとは大きく異なっている学生生活をしていた,
嫌な思い出ばかりでてくる元薬学生としては,何とも言えない気持ちになる資料でした.
学生の質,は評価が難しいですが,教える側の評価はされます.
学生の方は試験,入試などがあるので,それをクリアできれば,ある程度の質を担保できる,とわかりやすいのかもしれません.
それを考えると,やはり学生以上に,薬学教育,教える側の質の担保が求められてきている,いま変革を求められてきているという事になるのでしょう.
薬学部の未来はどうなのであろうか?
通常であれば,明るい,と書きたいところですが,
今回の記事などを見ていても,今の薬剤師会や様々な関連学会での発言,
そしてその中でまた出てくる薬学部新設.
4年生から6年生になり,その方たちは6年生教育の恩恵を実感できているでしょうか?
そして4年生卒の方は,6年生卒の方をやっかんでいて,
自分たちが行えなかったことを棚に上げて,
若者たちを批判ばかりしていないでしょうか.
病院と薬局,それぞれをお互いで非難しあったりしていないでしょうか.
当施設でも,残念ながら,度々上記のようなことが話になってしまいますが,
今の薬剤師は,そんなことを言っている暇はありません.
薬というものは,昔からあり,現在までの医学の進歩の恩恵を受けて,
これまででは考えられないような薬剤を含めた,様々な治療方法が発見されてきています.
そして薬剤以外の治療,というのも進歩が急速です.
今までの経験のみで,薬剤師ではここまでしかできない,
医師や看護師に責任を転嫁し,決められたことしかできず,発言もせず,といった印象の強い薬剤師になっていませんか.これは大いに自戒を込めて,ですが.
自分も含め,これからどのような社会になっていくのかをしっかり自分で見極め,
それに見合った研鑽をしていくしか,生き残る方法はないかと思います.
薬剤師は,その業務も含め,存在自体が生き残りをかけている時代になったと感じています.
薬剤師国家試験に合格,薬剤師免許が取得できれば安心,という時代はとうに終わっています.
未来は誰も分かりません.
医療保険で本邦は成り立っている以上,それに見合った業務が行えていないと判断されれば,当然その判断は下ります.
誰でもできる(と思われているだけだと感じている)業務も,誰でもできるようなシステムになっていくかもしれません.そのスピードは速いです.
資格うんちゃらと言っている場合ではないのです.
それは,薬剤師という職業を守るための利権や様々なしがらみよりも,
日本として,国として薬剤師が今の医療に深く関与できていなければ,
不要になってしまうかもしれないという事を示唆していると思います.
全ての業務が,自己満足だけになっていないか.
もう一度見返す必要があると,私は感じています.
AIにとってかわられる,かわられないという議論もそうですが,その進歩は早いです.
今までの非常識が,あっという間に常識になることもあるでしょう.
そしてその選択が迫られたときに判断するのは私たち薬剤師ではなく,
私たち以外の方たちです.
その方たちにどのように受け止められているか.
別に媚を売るような事は不要ですが,本当に私たちの職業が,社会にとって必要なのか.
そしてそれが,薬学部を卒業した者のみが受験できる,
薬剤師国家試験を通過したものでなければだめなのか,
という根本すら考え直すことになるような未来も
近づいてきているのかもしれません.
皆さまは,何のために,誰のために薬剤師になったのでしょうか.そして現在,何を目標として,なんのために働いていますでしょうか?
薬学生であれば,薬剤師になって,何をしたいですか?
薬学部を目指す学生さんは,どのような薬剤師になりたいでしょうか.
これをしっかり持って,今できることは,着実に.
ひとつづつ.
薬剤師でしかできないことに集中する.仕事をすみ分ける.
これから,薬剤師界隈,どのようになっていくのでしょうか.
来る時が,くるかもしれません.
不安な気持ちも抱えながら,日々の努力も信じて,
私は受け入れようと思っています.
薬剤師として働ける限りは,やはり,この職業で働きたいですので.