病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

ストロング・スタチンを忍容可能な最大用量で投与するべき人とは?

2019年3月29-31日に日本循環器学会が行われました.その中で急性冠症候群診療ガイドライン (2018 年改訂版)が2019年3月29日,公表されています.

 

まだ時間もそれほど経っていないので,これから解説がでてくるかと思いますが,スタチンに関する推奨等が変更になっています.少しまとめてみました.

 

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ACSとは

循環器学会Hpより,http://www.j-circ.or.jp/guideline/

急性冠症候群診療ガイドライン (2018 年改訂版)が公開されています.

ここは本当に循環器疾患に関する最新のガイドラインを無料で公開してくれています.

ぜひブックマークしておきましょう.

 

 私のブログでもオススメしております.

www.riquartette.tokyo

 

 急性冠症候群診療ガイドライン (2018 年改訂版)より

・急性冠症候群(ACS)は,冠動脈粥腫(プラーク)の破綻とそれに伴う血栓形成により冠動脈の高度狭窄または閉塞をきたして急性心筋虚血を呈する病態で,不安定狭心症(UA),急性心筋梗塞(AMI),虚血による心臓突然死を包括した疾患概念

 

・UA も AMI も冠動脈内血栓によって急性心筋虚血を呈する同一の病態であり,これらを ACS として包括することを提唱

 

・動脈硬化の初期には内膜肥厚,脂質沈着およびマクロファージ浸潤によってプラークが形成されるが,血管外径が代償性拡大(positive remodeling)することにより血管内腔は保たれる.さらにプラークが成長して代償不全になると血管内腔が狭小化し,狭窄が高度になると労作性狭心症を生じる.このような動脈硬化の発生と進展には炎症が重要な役割を果たしている

 

・コレステリン結晶や炎症細胞浸潤を伴う脂質成分に富んだ壊死性コア(necrotic core)と,それを覆う薄い線維性被膜からなる脆弱なプラーク(vulnerable plaque)が形成され,プラークが破綻することによって冠動脈内に血栓が形成されることで,ACS が引き起こされる

 

 

プラークの破綻,という部分がポイントでしょうか.

 

ACSと脂質異常

 

入院中の管理の項目に,様々な薬剤と共に下記があります.

脂質代謝異常改善薬

 

ストロング・スタチンを,忍容可能な最大用量で投与する 

推奨クラスⅠ エビデンスレベルA

と非常に強い推奨となっています.

 

でてきました,忍容可能な最大用量,という言葉です.

 

以下ガイドラインのお言葉をお借りいたします.すでに動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017でも,冠動脈疾患の既往のある方のLDL-Cは70未満が推奨されていました.そちらと同様の記載となっております.

 

AMI の急性期の脂質低下療法の現状

 

・心筋梗塞二次予防における,スタチンを用いたLDL-C値低下療法の心血管事故抑制効果は,多くの大規模臨床試験で立証されている

 

・血管内エコー法(IVUS)を用いた研究において,スタチンによる LDL-C 値の低下が冠動脈プラークを退縮させ,その効果は LDL-C 値低下と正相関することも報告

 

・本邦において ACS を対象に,心血管事故を主要エンドポイントにして実施された前向き臨床試験は,症例数が少なくエビデンスレベルは低いが,ACS を対象にプラーク退縮をエンドポイントとして実施された前向き臨床試験では,ACS の発症早期から保険診療で認可されている最大用量のスタチンを投与することにより,冠動脈プラークが有意に退縮する

 

・プラーク退縮と中・長期の心血管事故が関係すること,短期間のプラーク退縮がイベントの予測因子であることもこれまでの臨床試験から報告されている

 

・以上の点から,本邦の ACS 患者でも早期から忍容可能な最大用量のストロング・スタチン(アトルバスタチン,ピタバスタチン,ロスバスタチン)を使用することが推奨

 

 

既に言われている事ですが,一度起こしてしまったACSを予防するために,強力にスタチン治療を行うというガイドラインとなっております.

 

入院から開始し,その後継続という治療の流れになっています.

 

LDL-Cはどこまで下げるのか?

今は良い薬が他にも出てきています.ストロングスタチンの高用量は,かなりの効果が期待できると思われます.

 

再びガイドラインです.

・二次予防のためのスタチンの介入試験では,介入後の目標 LDL-C 値は 70 mg/dL 未満 とされているが,ACS による入院時に LDL-C 値が 70 mg/dL 未満の患者についても,スタチンの有用性は観察研究や大規模臨床試験から明らかにされている.

 

・以上の結果から,スタチン介入前の LDL-C 値にかかわらずスタチンの投与は推奨される.しかし,下限値については現時点でエビデンスはない  .

 

 

動脈硬化性疾患予防ガイドラインでも,冠動脈疾患の既往があるかたはLDL-Cが100未満となっていますが,ACSの場合などは上記と同様に70 mg/dL 未満が推奨されています.

 

下げることのリスクより,高いことの方がリスクになる,というのが現時点での見解でしょうか.

 

家族制高コレステロール血症の方についても記載されています.高LDL-C血症が持続するためリスクが高くなり,意外に少なくない疾患とされています.スタチンの用量がさらに高用量になります.

 

 

忍容可能な最大用量のストロング・スタチンとは

アトルバスタチン

ピタバスタチン

ロスバスタチン

になりますが,それぞれの用量を見てみます.米国でも用いられていますが,国内より高用量で用いられています.参考として見てみましょう.

米国の添付文書はコチラから探せます

Drugs@FDA: FDA Approved Drug Products

 

リピトール錠5mgリピトール錠10mg(アトルバスタチン)

 

効能又は効果/用法及び用量

 

高コレステロール血症

通常、成人にはアトルバスタチンとして10mgを1日1回経口投与する。

なお、年齢、症状により適宜増減するが、重症の場合は1日20mgまで増量できる。

家族性高コレステロール血症

通常、成人にはアトルバスタチンとして10mgを1日1回経口投与する。

なお、年齢、症状により適宜増減するが、重症の場合は1日40mgまで増量できる。

 

ちなみに,国内より高用量使用可能な米国では,

ATORVASTATIN CALCIUM (LIPITOR)

 

DOSAGE AND ADMINISTRATION

Dose range: 10 to 80 mg once daily

Recommended start dose: 10 or 20 mg once daily

Patients requiring large LDL-C reduction (>45%) may start at 40 mg once daily

Pediatric patients  with HeFH: starting dose: 10 mg once daily; dose range:10 to 20 mg/day for patients 10 years to 17 years of age

 

錠剤も10mg,20mg,40mg,80mgがあります.80mgはスゴイですね.

国内は現時点(2019年4月)で20mgは日医工のみが発売しています.これから出番が増えそうな予感です.

 

リバロ錠1mg/リバロ錠2mg/リバロ錠4mg(ピタバスタチンカルシウム)

 

効能又は効果/用法及び用量

  1. 高コレステロール血症

効能又は効果毎の用法及び用量

通常、成人にはピタバスタチンカルシウムとして1〜2mgを1日1回経口投与する。

なお、年齢、症状により適宜増減し、LDL-コレステロール値の低下が不十分な場合には増量できるが、最大投与量は1日4mgまでとする。

  1. 家族性高コレステロール血症

効能又は効果毎の用法及び用量

成人:通常、成人にはピタバスタチンカルシウムとして1〜2mgを1日1回経口投与する。

なお、年齢、症状により適宜増減し、LDL-コレステロール値の低下が不十分な場合には増量できるが、最大投与量は1日4mgまでとする。

小児:通常、10歳以上の小児にはピタバスタチンカルシウムとして1mgを1日1回経口投与する。

なお、症状により適宜増減し、LDL-コレステロール値の低下が不十分な場合には増量できるが、最大投与量は1日2mgまでとする。

 

米国の用量も同量となっています.

PITAVASTATIN CALCIUM (LIVALO)

DOSAGE AND ADMINISTRATION

 

LIVALO can be taken with or without food, at any time of day

Dose Range: 1 mg to 4 mg once daily

Primary hyperlipidemia and mixed dyslipidemia: Starting dose 2 mg.

When lowering of LDL-C is  insufficient, the dosage may be increased to a maximum of 4 mg per day.

Moderate renal impairment (glomerular filtration rate 30 < 60

mL/min/1.73 m2 ) and end-stage renal disease on hemodialysis:

Starting dose of 1 mg once  daily and maximum dose of 2 mg once daily

 

なぜ米国でも同用量なのかは気になるところです.国内の添付文書に記載があります.

 

用法及び用量に関連する使用上の注意

本剤は投与量(全身曝露量)の増加に伴い、横紋筋融解症関連有害事象が発現するので、4mgに増量する場合には、CK(CPK)上昇、ミオグロビン尿、筋肉痛及び脱力感等の横紋筋融解症前駆症状に注意すること。〔成人海外臨床試験において8mg以上の投与は横紋筋融解症及び関連有害事象の発現により中止されている。

 

ピタバスタチンは海外でも同用量のため,4mg以上の使用は避けたほうがよさそうです.

 

クレストール錠2.5mg/クレストール錠5mg(ロスバスタチン)

 

効能・効果

高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症

 

用法・用量

通常、成人にはロスバスタチンとして1日1回2.5mgより投与を開始するが、早期にLDL-コレステロール値を低下させる必要がある場合には5mgより投与を開始してもよい。なお、年齢・症状により適宜増減し、投与開始後あるいは増量後、4週以降にLDL-コレステロール値の低下が不十分な場合には、漸次10mgまで増量できる。10mgを投与してもLDL-コレステロール値の低下が十分でない、家族性高コレステロール血症患者などの重症患者に限り、さらに増量できるが、1日最大20mgまでとする。

 

ROSUVASTATIN CALCIUM (CRESTOR)

DOSAGE AND ADMINISTRATION

 

CRESTOR can be taken with or without food, at any time of day.

Dose range:  5-40 mg once daily.  Use 40 mg dose only for patients not reaching LDL-C goal with 20 mg.

Adult HoFH: Starting dose 20 mg/day

Pediatric  patients  with  HeFH:  5  to  10 mg/day  for patients 8 to less than 10 years  of  age,  and  5  to  20 mg/day  for  patients  10  to  17 years  of age

Pediatric patients with HoFH: 20 mg/day for patients 7 to 17 years of age

 

海外の用量は5mg,10mg,20mg,40mgとなっています.

国内では現時点(2019年4月)で10mgを発売しているところは少ないです.ロスバスタチン錠10mg「タカタ」(なぜかOD錠は10mgなし?),ロスバスタチン錠10mg「トーワ」,ロスバスタチンOD錠10mg「トーワ」となっております.OD錠の10mgはトーワしかありません.これからさらに殺到しそうな予感です.

 

スタチンの高用量に耐えられない人というのは…

急性冠症候群診療ガイドライン (2018 年改訂版)でも,

 

スタチンによる肝機能障害や腎機能障害,筋融解が起こった場合などスタチン不耐性の患者にも,エゼチミブや PCSK-9 阻害薬の併用を考慮する.

 

とされています.スタチンの副作用というものはよく話題になります.上記資料で気になった方もいるかと思いますが,腎・肝機能低下例での用量設定,慎重投与となっている部分も理解しておかないと,スタチンの高用量の処方の際に,思わぬ副作用が出る可能性があるのでは,と感じています.

 

腎機能,肝機能障害などに関する情報

 

リピトール錠5mgリピトール錠10mg(アトルバスタチン)

慎重投与

 

1.肝障害又はその既往歴のある患者、アルコール中毒の患者[本剤は主に肝臓において作用し代謝されるので、肝障害を悪化させるおそれがある。また、アルコール中毒の患者は、横紋筋融解症があらわれやすいとの報告がある。]

 

2.腎障害又はその既往歴のある患者[横紋筋融解症の報告例の多くが腎機能障害を有する患者であり、また、横紋筋融解症に伴って急激な腎機能の悪化が認められている。]

 

国内では慎重投与の項がありますが,特に用量を制限するような記載はありません.

ちょっとズルしてUp to dateを見てみますと,

 

腎障害患者

No dosage adjustment necessary.

Dialysis: Due to the high protein binding, atorvastatin is not expected to be cleared by dialysis (not studied)

投与量調節は不要.透析患者もタンパク結合が高いので,透析で除去されるとは考えにくい

肝機能障害患者

Contraindicated in active liver disease or in patients with unexplained persistent elevations of serum transaminases.

アクティブな肝障害や,原因不明の血清トランスアミナーゼ値上昇の患者は避ける

 

とあります.国内の添付文書を中心に考えても,腎機能,肝機能のモニタリングをしながらであれば,用量調節の規定はなく,投与を継続できるような記載となっています.

 

 

 

リバロ錠1mg/リバロ錠2mg/リバロ錠4mg(ピタバスタチンカルシウム)

用法及び用量に関連する使用上の注意

1.肝障害のある成人に投与する場合には、開始投与量を1日1mgとし、最大投与量は1日2mgまでとする。また、肝障害のある小児に投与する場合には、1日1mgを投与する。(「慎重投与」「薬物動態」の項参照)

 

2.本剤は投与量(全身曝露量)の増加に伴い、横紋筋融解症関連有害事象が発現するので、4mgに増量する場合には、CK(CPK)上昇、ミオグロビン尿、筋肉痛及び脱力感等の横紋筋融解症前駆症状に注意すること。〔成人海外臨床試験において8mg以上の投与は横紋筋融解症及び関連有害事象の発現により中止されている。〕

 

慎重投与

(次の患者には慎重に投与すること)

1.肝障害又はその既往歴のある患者、アルコール中毒者〔本剤は主に肝臓に多く分布して作用するので肝障害を悪化させるおそれがある。また、アルコール中毒者は、横紋筋融解症があらわれやすいとの報告がある。〕

 

2.腎障害又はその既往歴のある患者〔横紋筋融解症の報告例の多くが腎機能障害を有する患者であり、また、横紋筋融解症に伴って急激な腎機能の悪化が認められている。〕

 

Up to dateでは

腎障害患者

GFR 15 to 59 mL/minute/1.73 m2 (not receiving hemodialysis): Initial: 1 mg once daily; maximum: 2 mg/day

GFR 15-59mL/min/173m2 (透析患者ではない方)は初期1mg,最大2mg/日

ESRD receiving hemodialysis: Initial: 1 mg once daily; maximum: 2 mg/day

血液透析患者は初期1mg,最大2mg/日

 

肝機能障害患者

Contraindicated in active liver disease or in patients with unexplained persistent elevations of serum transaminases.

アクティブな肝障害や,原因不明の血清トランスアミナーゼ値上昇の患者は避ける

 

国内の添付文書と米国では少し異なっています.国内であれば,肝障害のある方への記載があり,減量の考慮が必要です.米国では腎機能による用量調節の記載があります.

リスクとベネフィット,という事で一概には言えませんが,減量が必要となる方がいるという認識は必要かと思われます.

 

 

クレストール錠2.5mg/クレストール錠5mg(ロスバスタチン)

 

用法・用量に関連する使用上の注意

1.クレアチニンクリアランスが30mL/min/1.73m2未満の患者に投与する場合には、2.5mgより投与を開始し、1日最大投与量は5mgとする。(「慎重投与」及び「薬物動態」の項参照)

2.特に20mg投与時においては腎機能に影響があらわれるおそれがある。20mg投与開始後12週までの間は原則、月に1回、それ以降は定期的(半年に1回等)に腎機能検査を行うなど、観察を十分に行うこと。

 

薬物動態の項

  1. 肝障害の影響(外国人データ)

Child-Pugh A(スコア:5〜6)あるいはChild-Pugh B(スコア:7〜9)の肝障害患者各6例にロスバスタチンカルシウム10mgを1日1回14日間反復経口投与し、血漿中ロスバスタチン濃度を測定した。肝障害患者のCmax及びAUC0-24hは健康成人群のそれぞれ1.5〜2.1倍及び1.05〜1.2倍であり、特に、Child-Pughスコアが8〜9の患者2例における血漿中濃度は、他に比べて高かった。

  1. 腎障害の影響(外国人データ)

重症度の異なる腎障害患者(4〜8例)にロスバスタチンカルシウム20mgを1日1回14日間反復経口投与し、血漿中ロスバスタチン濃度を測定した。軽度から中等度の腎障害のある患者では、ロスバスタチンの血漿中濃度に対する影響はほとんど認められなかった。しかし、重度(クレアチニンクリアランス<30mL/min/1.73m2)の腎障害のある患者では、健康成人に比べて血漿中濃度が約3倍に上昇した。

 

Up to dateでは

腎障害患者

CrCl <30 mL/minute/1.73 m2: Initial: 5 mg once daily (maximum: 10 mg/day).

CrCl <30 mL/minute/1.73 m2: 初期:5 mg を1日1回. (最大 10 mg/day)

 

肝機能障害患者

There are no specific dosage adjustments provided in the manufacturer's labeling; however, systemic exposure may be increased in patients with liver disease (increased AUC and Cmax); use is contraindicated in active liver disease or unexplained transaminase elevations.

 

Chronic liver disease: Some experts suggest starting at a low dose (eg, 5 mg once daily) and adjusting gradually based on monitoring of aminotransferase levels (Rosenson 2018)

用量調節の記載はないが,暴露が上昇する可能性がある.アクティブな肝障害や,原因不明の血清トランスアミナーゼ値上昇の患者は避ける

慢性肝疾患の方:一部の専門家は,低用量(例:1日5mg)から始め,血清トランスフェラーゼのモニタリングに基づいて,徐々に調整することを提案している

 

ロスバスタチンも腎機能低下例では減量が推奨されています.米国の用量の半分なので,国内はそれに合わせた減量となっています.血中濃度の上昇が認められていますので,高度腎機能障害患者には減量すべきでしょう.

 

 

スタチンの腎機能障害患者における減量について

 

私はあまり気にしたことがありませんでした.

腎不全の理由などからは分かりますが…

今後スタチンと腎機能は注意してみていこうと思っています.

 

下記の論文がありました.

この患者ではスタチンをどうするか?!治療・患者指導の実践ポイント 肝・腎機能障害のある脂質異常症患者,長内 理大ほか,薬局,67巻9号;2696-2700(2016.08)

  

・スタチンはほとんどが肝臓の薬物代謝酵素または胆汁排泄によって排泄される

・直接腎機能を障害する可能性は高くない

・慢性腎臓病(CKD)は動脈硬化の危険因子であるため,腎機能障害患者におけるスタチンの使用を単独であれば推奨している

・海外のデータをもとに作成された一覧は下記

・横紋筋融解症を発症した場合は,それにより急激に腎機能が増悪するため,検査値を常にフォローすることが極めて重要

・横紋筋融解症の副作用報告のほとんどが腎機能低下患者であった

・腎機能障害を有する患者においてスタチンとフィブラートの併用は原則禁忌(現在は重要な基本的注意に移行)

・スタチン単独使用における横紋筋融解症の発症率は約0.01%とされている

 

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スタチンの特徴

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腎機能低下時の推奨用量

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GFR区分

 

配合剤の発売も

特許や後発品の対策でしょうか?エゼチミブの配合剤が発売されています.

アトーゼット配合錠LD/アトーゼット配合錠HD

 

http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/170050_2189101F1020_2_06#CONTRAINDICATIONS  

LDはエゼチミブ10mg/アトルバスタチン10mg

HDはエゼチミブ10mg/アトルバスタチン20mg

 

ロスーゼット配合錠LD/ロスーゼット配合錠HD

LDはエゼチミブ10mg/ロスバスタチン2.5mg

HDはエゼチミブ10mg/ロスバスタチン5mg

 

ロスーゼット配合錠LD/ロスーゼット配合錠HD

 

 

スタチンの用量だけ見てしまうと,ロスバスタチンはちょっと物足りないですね.

循環器医に『少なっ!』て言われていました.

このガイドラインを受けてさらに高用量のUHD(ウルトラハイドーズ)とか発売しそうですが.でも間違えそうだからやめてください.

 

 

スタチンの服用をやめてしまう人は…

 下記の報告がありましたのでご紹介いたします.

 

J Am Heart Assoc. 2019 Apr 2;8(7):e011765. doi: 10.1161/JAHA.118.011765.

Patient-Reported Reasons for Declining or Discontinuing Statin Therapy: Insights From the PALM Registry.

PMID: 30913959

 

・心疾患の予防のためのスタチンは必要だが,成人の多くは未治療とされている

・スタチンを始めなかった,拒否した,中止した理由などを調査

・スタチンの適応である,もしくはそうでない患者の半数が医師から処方を受けたことがない

・副作用の恐れによる減量・中止の最も多い理由

・スタチンが有効,安全と考えている割合も少なかった

 

 スタチンの安全性に対する患者さんの認識を改善することで,スタチンの適切な服用が可能となる.

 

スタチンの継続には,しっかりとした説明が必要と感じています.

 

以前,当施設でも,AMI後のスタチンを,コレステロールを下げる薬,とだけ説明されていた方が,コレステロールそんなに高くないので,と勝手に自己中断し,発作で入院となったという経験があります.

 

循環器内科医に,どんな説明を薬剤師はしているんだ!?!,と怒られました.

 

当施設のかかりつけでもなく,他施設の方でしたので,

私は全く関係がなかったのですが,その怒りの理由もわかりますし,

何より薬剤師として歯がゆさを感じました.

 

 

2017年のガイドラインの改定時もそうでしたが,今回のACSガイドラインの改定で,スタチンの用量は高用量へ変わっていくことでしょう.もう変わっているかもしれませんが.

しかしながら,モニタリングすべき項目はたくさんあります.

スタチンによる横紋筋融解症の症例を私はまだ経験したことはないのですが,服用する意義と共に安全性のモニタリング,初期症状なども説明する必要があると思います.

素晴らしい薬剤であることに,変りはありませんし,きっとこれからもたくさんの方を救ってくれる薬剤が,スタチン系薬剤かと思います.

 

薬剤師として,患者さんに対して最も大切な,薬に対する不安を取り除,服用の意義をしっかり説明し,理解をしてもらう.

 

薬剤師の仕事は,まだまだあるのではないでしょうか.

 

そしてそのレベルに達することができるよう,日々の研鑽は欠かさないようにしたいものです.