病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

CKD Up date for Pharmacistsに参加しました

2019/1/26に参加しました勉強会(CKD Up date for Pharmacists)のメモです。

 

薬剤師のための腎臓病薬物療法 という内容です。

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薬局

 

2018.12.17.にありました、医療安全情報[No.145]

「腎機能低下患者への薬剤の常用量投与」の記事もあったため、気になっていたところでした。

http://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_145.pdf

 

著名な先生のご発表だったので、期待を込めて拝聴させていただきました。

 

以下簡単に講演の内容などです。

 

・CKDであっても、病識がなく、あまり認識していない人も多い

・高齢者であっても、eGFRの中央値は70くらい

 そのため、エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018では、40歳未満ではeGFR

が60未満で腎臓専門医に紹介となっている

・タンパク尿±は、軽度蛋白尿→アルブミン尿の可能性

・塩分の指導については栄養士が専門だが、簡単な説明などは薬剤師からも

 薄い濃度にしても量をたくさん飲んでしまうと逆効果

・パンやちくわなどにも食塩は含まれている

・SPRINT試験の結果より、厳格な血圧低下は心血管イベント低下を示したが、尿淡白が軽微で、腎硬化症によるCKDにおいては、厳格な降圧はデメリットもある

 

・CKDの予防、治療は、最終的に心血管死亡を減少させる

・末期腎不全は死亡率が高い

・蛋白尿を減らすことで透析導入を遅らせる、減らす

・糖尿病性腎症→ACE/ARB

 蛋白尿(+)→ACE/ARB

 蛋白尿(-)→Ca拮抗薬でも

・SGLT2阻害薬の腎保護作用は、糸球体の過剰ろ過を防ぐ

 

 

 

今回は2名の演者でしたが、お二人が強調されていた内容がこちら

・75歳以上のCKDステージG4,5の患者における推奨降圧薬はACE/ARBではなく、Ca拮抗薬

 

 

CKD→腎保護→RA阻害薬のイメージがあるが、脱水や虚血に対する脆弱性を考慮し,Ca拮抗薬を推奨

 

CKDガイドライン2018でも、

・ACE阻害薬もしくはARBの開始直後(2カ月以内)のGFR低下または血清Cr上昇が10~30%でも,長期的な腎予後悪化につながるという報告がある

・ACE阻害薬もしくはARB投与中のCKDステージG4,5の患者で同薬剤を中止し,Ca拮抗薬を含むほかの降圧薬に変更したところ,1年後のeGFRが16.4±1.0から26.6±2.2に上昇したとの報告がある.

・CKDステージG4,5ではACE阻害薬もしくはARB投与による高K血症が重篤化することが危惧される

 

 

これらは以前から言われていたことで、ACE/ARBの投与直後、eGFRの低下や血清Kの上昇は経験ある方も多いと思います。

また、血圧降下による臓器の虚血症状もいわれていたので、それらを考えれば納得できる内容です。

 

CKDは尿蛋白のイメージが強く、腎保護の観点から、ACE/ARBというイメージが強かったのですが、高齢者においては、その安全性なども考慮すべきということで、一度知識の整理をしておきたいところです。

 

最後に演者の先生が話されていたことで

最も心に残ったことです。

 

CKDは、その先の治療などが、とても大変になる。糖尿病を合併していれば、なおさら。

それゆえに、微量アルブミン尿、無症状のころからの説明が必要。糖尿病と同様に、合併症などの危険性を、予防できる病状の時に説明しておく

早期のCKDの患者さんに対して、病状の進行を少しでも防げるような明るい指導を。暗い話ばかりだけではなく、医師と共同して、希望が持てる説明などを、薬剤師も心掛ける

薬剤を服用する必要性、重要性をしっかり理解できるよう説明する。共感する

アドヒアランスを向上するための努力を。

そして副作用の予防、少しでも心血管イベントを防ぐ。

 

 

現在、透析患者さんは国内では増加の一途となっています。

様々な治療方法、薬剤の開発がなされていますが、それがうまくいっているとは言えない状況かもしれません。

 

私は腎臓病療養指導士、というものの存在を知りませんでした。こちらについても紹介がありました。

腎臓病療養指導士について | 腎臓病療養指導士制度 | NPO法人 日本腎臓病協会

 

日本腎臓学会が看護師、栄養士、薬剤師の関連学会と共同して、標準的なCKDの保存療法を浸透させることを目的として立ち上げられたようです。

 

現在の腎臓内科領域は、医師の負担も多く、特に食事、栄養を中心に、上記の薬物のアドヒアランスなど、たくさんの改善すべき大きな問題があると感じました。

そのためには、一刻も早く、CKDということに対する正しい認識を持つ必要性を感じました。

 

糖尿病療養指導士は、医師との連携が必要で、異動により認定の更新ができなくなっている薬剤師もいます。

この腎臓病療養指導士制度の方は始まったばかりのようですが、ぜひ更新などについても配慮いただけるような制度であれば、よりすそ野が広がるのではないかと感じています。

 

現在の患者数などを考えると、CKD対策は早急な対応が必要であることが十分に認識できました。

保険医療の状況は厳しいことはわかっていますが、こういった療養指導士による加算なども含めた動きがあると、これから良い方向に進んでいくのではないかと感じました。

 

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勉強会

製薬メーカーのバックアップがある、クローズと思われた勉強会だったのですが、貴重なお話が聞けました。

 

上記の腎機能低下例に関する薬剤のチェックなど、具体的なお話はなかったのですが、これについては、後日しっかり考えていかないといけないことを、実感しました。