先日のミクスに,コールセンターの意識調査の記事がありました.
製薬企業コールセンター 年間平均利用回数最多は「1~5回未満」 薬剤師意識調査 | 意識調査 | 国内ニュース | ニュース | ミクスOnline
とても有用な製薬企業のコールセンター,医薬品に関する情報なので,少し考えてみたいと思います.
医薬品情報を確認する
医薬品はその使用にあたって,最も基本となる医薬品の情報は添付文書となります.
現在では,独立行政法人 医薬品医療機器総合機構のHpから,最新の情報が得られます.
添付文書以外にもインタビューフォーム,患者向け医薬品ガイド,RMP,審査報告書なども確認することができます.
医療用医薬品 情報検索 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
添付文書はPDFにて公開されており,だれでも無料で見ることができます.
以前は,患者さんの前で本を見たり,添付文書を見たりするのは
避けるべきという薬剤師も多かったのですが,これだけの情報があり,
なおかつ煩雑な医薬品が発売されてくるにあたり,正しい情報を確認しないまま,
あやふやな情報で,というのは最も避けなくてはいけないことです.
人の記憶など,あいまいです.
もちろん電子カルテや,調剤支援システムなどの薬歴情報などでも確認できます.
原則は医薬品の販売元の資料が基となっています.
医薬品を使用するにあたり,専門の知識がある医師が,専門領域での経験を活かし,処方する場合は,それは最も安全な治療となるのは間違いないことです.
そういった情報を細かく見なくても,治療は何も問題ないのですが,やはりこれだけの医薬品が出ていると,専門外の薬剤,初めての薬剤というものが出てきます.
薬を扱う薬剤師も,やはり普段見ない医薬品など,その使用にあたっては,患者さんに使用することになるので,より慎重に情報を集めることとなります.
上記PMDAの資料のほかにも,適正使用情報や製品総合概要など,より適正使用を推進するための情報は,製薬企業のHpにもあったりします.
薬によっては,ですが,抗がん剤になると,その資料が膨大な量になります.
その中から,医療従事者は,自分が必要な情報を集め,確認することになります.
悩ましいのは,添付文書に記載がなく,適正使用情報などで記載がある項目,などです.
これも抗がん剤に多いのですが,最も慎重に投与すべき医薬品の一つである,このような薬剤に,基本的な情報である添付文書には記載がなく,あくまで実際の使用にあたり,必要な情報として知っておくとよい情報が,適正使用情報などに入っていることがあります.
このように,情報は調べれば調べるだけ出てくる可能性があります.知らない,載っていない,という理由だけで,安全に薬剤を投与する方法を拒否してはいけないという事になります.
コールセンターの役割
コールセンターは,まさしく様々な情報を製薬企業が集約し,対応してくれるところになります.こちらの医薬品に関する疑問や問い合わせに対して,どんな無茶な質問にも(限度はありますが)対応していただける,医薬品情報室担当者にとっては夢のようなところです.
私のような,医薬情報室の勤務者にとっては,コールセンターの電話番号を暗記したいくらい(?),ありがたく感じる場合もあります.
もちろん人が対応してくれるので,とても親切に教えてくれます.
対応する人によっては回答が異なる可能性もありますが,製薬企業でしっかり訓練した,
プロフェッショナルな方たちが対応してくれるので,信頼度,満足度も高いです(これはあくまで個人的な印象ですが).
コールセンターの強み
とにかく日本各地からの,色々な医薬品に対する対応をしているだけあって,本当に対応が早いです.学術的にわかる部分の回答をいただきますが,それ以外にも保険診療などの現状を教えてもらえる場合もあります.もちろんこれは各都道府県によって異なることは前提です.
とにかく困ったことを早急に解決,対応してくれる,それも電話で.
これ以上の医薬品情報の対応ができるところはないでしょう.
急ぎで早急に回答しなくてはいけない,といった際にも有用です.下手な薬剤師に聞くよりレスポンスも内容も早いので,おそらく医師の中では,薬剤部や薬局に聞かずに,直接連絡を取って対応している医師も多いことでしょう.
情報提供,という意味では,コールセンター以上のところはないと思います.
コールセンターの弱点
残念ながら,対応時間などが限られています.まぁ,薬剤部も本当はあるのですが.当直者が暫定的に対応しております.
残念ながらコールセンターは,土日行っていないところがほとんどです.
これは致し方ないですが,問い合わせなどは土日だから,深夜だから回答できない,というのは無理なので,薬剤師を含む医療従事者で対応することになるのですが,先日書きました,ロボット(AI)がこれからそう言った部分の主流になるかもしれません.
MRさんの状況はどうなのだろう
私の施設にもMRさんは訪問いただきます.医薬品の適切な情報を提供いただくことが大切な仕事の一つなので,コールセンターに確認しないで,MRさんに聞いてしまうこともあります.
当情報室担当者に聞いてみても,
・学術的な部分や急いでいる場合はコールセンターの利用
・保険や他施設の使用状況などの情報はMRさん
と使い分けている人もいるので,おおむねこのようなそれぞれの状況によって
使い分けているかと思います.
でも,コールセンターが繋がるなら,その場で対応してもらえるスペシャリストなので,MRさんにその部分を聞く必要はなくなる気もします.
私は,残念ながら,MRさんを選んでかけてしまいます.申し訳ないですが.
コールセンターよりMRさんにお電話するのは敷居が低いので,
ついお聞きすることもありますが,当然日々の対応や満足度など,
いつも営業的,商業的な(どこでどの程度処方されているといった情報ばかり)
MRさんには,聞くのをためらってしまいます.
本アンケートの最後にも,
MRからの情報不足のために,コールセンターに連絡した,という方が全体の14.5%とされています.
これを多くとるか,少なくとるかです.
医師でアンケートをしてみると,もっと出てきそうです.
上記で述べたように,医薬品の情報は日々増えてきており,複雑化しています.
当然MRさんが持ってきてくれる情報では,足りない場合もあるわけです.
今回のアンケート結果をみてみる
以下ネグジット総研の調査結果です
・保険薬局勤務441名,病医院勤務195名にアンケート
・年間平均利用回数は1-5回未満が最も多い
・20回以上の問い合わせは保険薬局で6.8%,病医院が20.5%
こちらを踏まえた同社のコメントが掲載されている
・保険薬局では処方せんを受けた際の不明点を速やかに問い合わせる
・病医院ではDI担当者が新規採用の資料整理時や医師からの照会内容を問い合わせる.比較的猶予がある
と分析されています.
おおむねあっているのでしょう.
自施設の状況を確認してみても,確かに連絡をしたことのない人の方が多い気がします.それをDI担当者が行っている場合もあります.
上記の部分で少し気になるのは,猶予がある,というイメージでしょうか?
別に病院のDI室担当薬剤師は,資料整理時にコールセンターを利用しているばかりではないですので.
これも一部のご意見かと思いますが,おおむね世間の方から見た視点としては正しいのかもしれません.
私の施設では,どこも同じかと思いますが,追い合わせの対応の際は,
まずいつまで回答すべきか,を必ず確認します.
今すぐ,なのか,当日中なのか.
全てはそこで対応が決まります.自分の調査能力をある程度知っているつもりなので,
自分一人のチカラでは対応できないという時も,常に考えておく必要があります.
問い合わせは,私以外の薬剤師がその対応をすれば,私より,よりよい回答を得られたのではないかという,自分で準備できる回答をなるべく充実させるために,
常に頭に置くようにしています.
そうすると,臨床医や薬剤師の質問に対して,より有用な回答をするには,
その準備にかけられるだけの時間がどれくらいあるか,でも決まってしまいます.
そういった部分で,コールセンターは非常に有用なのです.
頼るべきところには,回答までの時間を優先し,頼る.それが最も必要な場合があるからです.なので,決して急ぎではない問い合わせばかりではないのです.
でも,病院の薬剤部,情報室でのイメージは,きっと上記のような状況なのでしょう.
MRの訪問がない,そのためコールセンターの利用をした
コールセンターの方がMRより信頼性は高いと思っている
とか,少し複雑な意見もあります.
以前いやなことでもあったのでしょうか?
コールセンターを上手に利用させていただく
私の個人的な意見になりますが
MRさんであっても,コールセンターであっても,回答までに時間がなく,複数の問い合わせを一人で受けていた時など,助けてもらったことは何度もあります.
それが患者さんにつながっていることも,です.
信頼して聞くことができる環境作りも大切かな,と思います.
一応教育機関なので,学生さんには,自分の疑問や実習用の問い合わせ演習などは,
自分でとことん調べて分からなかったらでないと聞かない,
という指導もしたりしていますが,切羽詰った職員にとっては,時間との勝負です.
よりよい回答を少しでも得るための努力,時間を考えて,コールセンターを上手に利用させていただく,というスタンスは持っていたいものです.