病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

インフルエンザに紅茶が効く!過熱する報道に物申す!!

先日,電気屋のテレビの前を通ったら

「インフルエンザには紅茶が効く!!」という報道を見ました.

普段テレビを見ない私にとっては,ちょっと衝撃的でした.

 

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紅茶

  

そしてGoogleで調べてみると・・・

 

なんとスゴイ情報だらけ.

 

ですので,ちょっとだけ言わせてください.

 

ちなみに私はコーヒーが好きですが,別に紅茶を飲む方を否定しているわけではありませんので,お間違いのないように.ルピシアはよくいただいたり,送ったりしていますよ.いろんな香りがあるのが好きです.

 

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そもそも紅茶がインフルエンザにすごく効くっていうデータは?

Googleで検索してみると,出てきますね,色々と.

結構衝撃的です.

 

そして,医師もすすめている,という記事も.

これはインパクトがありますよね.

インフルエンザの予防には「紅茶」がおすすめ! 医師が理由を解説

 

そして薬剤師も.Hpはキラキラしていて,まぶしくてあまり読めませんでした.

紅茶でインフルエンザ予防 | 薬剤師 吉澤恵理オフィシャルブログ「Beauty Tips.」Powered by Ameba

 

うーむ,気になりますね,紅茶とインフルエンザ.

 

テレビで見た先生が載っていました.これは日本紅茶協会のHpですから,まぁ,当然でしょうか?

「マスク,手洗い,紅茶」とされています.ゴロは良さそうです.

Topics01 インフルエンザ | 紅茶Labo. | 日本紅茶協会

 

ネットで,

ここに根拠がある!

やっぱりね,

みたいなものがあったので見てみました.

 

こちらが皆様の根拠となっているHp(三井農林株式会社)のようです.

紅茶のインフルエンザウイルス感染阻止力の研究について | 三井農林 お茶科学研究所

 

 

 

 

紅茶の中の何がきくのでしょうか?

食品産業新聞社ニュースというところに,こちらもテレビで拝見した先生の記事がありました.

紅茶の抗インフルエンザ活性に注目集まる “テアフラビン”で感染拡大を阻止|食品産業新聞社ニュースWEB

テアフラビン,というものが,有用のようです.

 

紅茶の有効成分テアフラビンは、効果のあるガレート基を2つ(エピガロカテキンガレートとエピカテキンガレート)持っている。これに対し、緑茶はガレート基を1つしか持たないため、紅茶の方がウイルスを無力化するスピードが飛躍的に速くなる

 

といった理由のようです.

 

 

 

 

Theaflavinって?

紅茶に含まれる渋み成分の一つで,ポリフェノールに分類される色素成分.抗酸化,抗炎症作用を持っている.

 

テアフラビンが口腔上皮細胞のケモカイン産生に与える影響の解析,細川 義隆ほか,日本歯科保存学雑誌,61巻1号,10-16(2018.02)

 

カリシウイルスに対する抗ウイルス作用がある

J Antibiot (Tokyo). 2017 Apr;70(4):443-447. doi: 10.1038/ja.2016.128. Epub 2016 Oct 19.

Antiviral effect of theaflavins against caliciviruses.

PMID: 27756911

 

とされています.色々な作用がありそうですが,抗ウイルス作用はあるようです.

 

インフルエンザウイルス,ということで気になって文献検索しました.

Influenza Theaflavin とpubmedで検索しても,かかってくるのは4件です.

 

あくまで一般的な考え方ですが,優れた研究であれば,検索すると,同様の文献なども含め,多数ヒットするかと思います.

まだ未知なるものか,これから研究が進むであろう本当に新しい成分であれば,もちろん少ない可能性はあります.

 

それを考慮すると,少なくとも私たちが調べるなかで,明らかに根拠がある,世界的にも優れたものと認識されているものではないのかもしれません.

 

ちなみにですが,

2019年1月21日現在で,

インフルエンザとオセルタミビル(タミフル)

influenza Oseltamivir で3684件

 

発売されてまだ2シーズン目,データがあまりないとされているゾフルーザ

influenza Baloxavir で13件

となっています.

 

上記三井農林株式会社のHpにも,学術情報というところがあります.

学術情報 | お茶科学研究所について | 三井農林 お茶科学研究所

 

2014年からの論文は発表が報告されていますが,インフルエンザやウイルス,という事に関しての発表はなさそうでした.

 

 

 

 

紅茶のインフルエンザウイルス感染阻止力の研究について,をみてみます

三井農林株式会社Hp

紅茶のインフルエンザウイルス感染阻止力の研究について | 三井農林 お茶科学研究所

 

みてみます.気になるところのみ,ですが.

 

①紅茶はインフルエンザウイルスを撃退する力がすごい!

見ていただくとそうですが,そうなんでしょう.

紅茶が99.6%とされています.緑茶でも97.6%です.

 

これって,消毒のレベル(細菌および真菌,3log以上減少)の話ですよね.

もちろん紅茶は30秒,他は10分とされていますけど.

 

④紅茶の飲用頻度が高いほど、インフルエンザ発病率が低い!

社内アンケートの結果(!)です.論文ではないところに注意です.

 

インフルエンザワクチンの予防接種をしたか,しないかで,このデータが一般的なものであるという裏づけをする資料とされていますが,私が気になる部分は,それを並列で表記してあるところです.

 

これ,実際見てみて下さい.

紅茶のインフルエンザウイルス感染阻止力の研究について | 三井農林 お茶科学研究所

 

読めばわかるのですが,パッと見たときに,

ふーん,インフルエンザワクチンの予防接種した人でも8.3%発症したんだ,

ワクチン接種しなかったら19.8%か,

ここまではOKです.

 

しかし,その同じ色でその下に,

ワクチンの予防接種をしなかった人を対象に,とありますが,

それがすこし分かりにくいのです.

 

これをこのまま普通の人が読むと,ほぼ毎日紅茶を飲む方が(14.9%),ほとんど飲まない人(24.6%)よりよい,ということで,

インフルエンザワクチンなんてうたなくても,紅茶飲んでいればよい?

と勘違いされないか,が気になります.

 

お茶の会社でお仕事されている方にアンケートをとって,

紅茶をほとんど飲まないかたが

そこそこいる,というのも気になる内容です.

べつに好みなのでいいんですけどね.

 

紅茶は他の感染対策に比べても、簡単で効果的である可能性

 

これはいけません.ぜひ公的なところからのご指導もお願いしたい.

発症予防にワクチン接種が最も有効性が高いのはわかりますが,次が紅茶です.

続いてうがい,ヨーグルト,手洗いと続きます.

 

そして加湿は有効率0%手指消毒剤に至っては-39%と,悪化させるような印象を与える記述です.

 

下記に,厚生労働省 インフルエンザQ&Aになります.

インフルエンザQ&A|厚生労働省

 

私は,ここに紅茶が掲載されたら,紅茶三昧にしようと思っております.

 

Q.9: インフルエンザにかからないためにはどうすればよいですか?

1) 流行前のワクチン接種

2) 外出後の手洗い等

3) 適度な湿度の保持

4) 十分な休養とバランスのとれた栄養摂取

5) 人混みや繁華街への外出を控える

 

 

Q.10: インフルエンザにかかったかもしれないのですが、どうすればよいのですか?

(1) 人混みや繁華街への外出を控え、無理をして学校や職場等に行かないようにしましょう。

(2) 咳やくしゃみ等の症状のある時は、家族や周りの方へうつさないように、飛沫感染対策としての咳エチケットを徹底しましょう。

(3) 安静にして、休養をとりましょう。特に、睡眠を十分にとることが大切です。

(4) 水分を十分に補給しましょう。お茶でもスープでも飲みたいもので結構です。

(5) 高熱が出る、呼吸が苦しいなど具合が悪ければ早めに医療機関を受診しましょう。

 

 

私がこちらを見ていて,最も懸念するのは,上記の紹介していないところも含めて,紅茶の良さがあまりに強調され,

 インフルエンザのワクチンは有効かもしれないが,他をやるよりは,紅茶を飲んでいた方がよい,と一般の方が思ってしまうのではないか(すでに思われているのかもしれませんが)

というところです.

 

ゾフルーザもそうですが,1日でインフルエンザが完治する,と勘違いされているかともいらっしゃるかと思います.

インフルエンザになって,仕事を早くしなくてはいけない,と焦って,咳エチケットを行わず,人ごみの多いところに外出しても,紅茶を飲んでいればOK,と判断されるかもしれないという報道は,非常に危険だと感じています.

 

もしかしたら,今年の異常な流行は,自宅待機せず,外に出て行ってしまっている人がいるのではないかとも感じてしまいます.

 

食品産業新聞社のニュースでは,中山先生が,

効果があるのは、インフルエンザ患者から健康な人への飛沫感染を阻止すること。治療には役立たない。インフルエンザは鼻からの呼吸によって感染するため、健康な人が紅茶でうがいをしても予防効果はないが、患者が1時間ごとに紅茶を一口飲んで口内のウイルスを死滅させれば、周囲への感染が広がるのを防ぐことができる」

 

と話されています.

 

紅茶の利益はあるかもしれませんが,近ごろの報道に,違和感を感じるのがこの部分です.

 

インフルエンザになっても,解熱して,紅茶を飲んでさえいれば,何の対策もしなくてもよい,ととられるような報道ではないでしょうか?

 

インフルエンザは飛沫感染が原則です.人に移さない,という認識を持つ必要があります.そのような報道をぜひお願いしたいです.

 

それでそれで

 

お茶のうがいでも,インフルエンザ予防はないという報告もあれば,

PLoS One. 2014 May 16;9(5):e96373. doi: 10.1371/journal.pone.0096373. eCollection 2014.Effects of green tea gargling on the prevention of influenza infection in high school students: a randomized controlled study. PMID: 24836780

 

予防効果はありそう,という報告もあります.

BMC Public Health. 2016 May 12;16:396. doi: 10.1186/s12889-016-3083-0.

Effect of gargling with tea and ingredients of tea on the prevention of influenza infection: a meta-analysis. PMID: 27175786

 

紅茶を飲む,飲まないは個人の嗜好もありますので,言及いたしません.

 

私はコーヒー派ですが,紅茶も好きです.

 

リラックスして,温かい紅茶を飲むのは,決して上記のようなインフルエンザウイルスを減少させることだけが目的ではないでしょう.

 

紅茶を飲むこと,それによってリラックスでき,ゆっくり休むことができる,インフルエンザ治療にとっては最も大切なことかもしれません.

 

それゆえ,誤解のないような報道をお願いしたいと思います.