病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

【雑記】ビビる一般名処方ベスト3

一般名処方,処方箋を見たとき,びっくりすること,ありませんか?

厚生労働省より,処方箋に記載する一般名処方の標準的な記載というものが提示されています.
処方箋に記載する一般名処方の標準的な記載(一般名処方マスタ)について
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shohosen_180401.html

一般名処方の標準的な記載の標準的な記載,というものは
【般】+「一般的名称」+「剤形」+「含量」 という形でなりたっており,この形で作成されます.
一般名処方を行うに当たって,参照すべき資料が公開されています.
当施設もこちらを参考に,一般名マスタを作成しています.

先日マスタを作成した際に,ちょっとこれは・・・といったものをピックアップし,知人の保険調剤薬局の薬剤師と私の独断と偏見で,えっ?!?となる一般名マスタを選んでみました.
調剤過誤は起こしたくないし,システムの構築は必要だと思いますが
気になる薬剤をピックアップしました.それではお楽しみください.

 

栄えある第1位ですが・・・
1位【般】大腸菌死菌・ヒドロコルチゾン配合軟膏
に決定です.圧倒的な存在感で見事第1位に輝きました.

大腸菌死菌 ですよ.死菌も薬になるんだ,とかそんな悠長なことを言ってられないんです.ほんとに効くのだろうか,といったことも考えさせられるような入りですが,

そのあと,全ての炎症を治癒できそうな,全能の薬剤,ステロイドであるヒドロコルチゾンが控えている.

どうでしょうか,この一般名.凄過ぎませんか?
こんなインパクトある一般名,厚労省が認めてくれているのです.

大腸菌のイメージは,それはそれは,よくないですよね.

国立感染症研究所
下痢原性大腸菌感染症とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/399-ecoli-intro.html

腸管病原性大腸菌を始め,かなり悪そうなものばかりです.

1 )腸管病原性大腸菌(EPEC)
2 )腸管侵入性大腸菌(EIEC)
3 )毒素原性大腸菌(ETEC)
4 )腸管凝集性大腸菌(EAEC)

大腸菌のイメージにぴったりのものですが,解説を読んでいるだけでおなかが痛くなりそうです.

この薬,薬剤師は当然知っていると思いますが,何の薬か想像がつきますでしょうか?
この一般名処方で処方されるのは,
強力ポステリザン(軟膏),ヘモポリゾン軟膏というお薬です.ぢのお薬になります.

以下,強力ポステリザン(軟膏)の資料になります.

効能又は効果
痔核・裂肛の症状(出血、疼痛、腫脹、痒感)の緩解、肛門部手術創、肛門周囲の湿疹・皮膚炎、軽度な直腸炎の症状の緩解
用法及び用量
通常1日1~3回適量を患部に塗布又は注入する。

昔から強力ポステリザン(軟膏)の“強力”というのが気になって,先輩に聞いてみたら,そんなのインタビューフォームミロ!と一喝されました.見てみますと,

(1)和名
強力ポステリザン®軟膏

(2)洋名
Posterisan® forte

(3)名称の由来
ラテン語の posteriori(後方の)と sanare(治癒する)を組み合わせて Posterisan とし、ヒドロコルチゾンを配合していることから forte(強力)の文字を付した

とあります.かっこよくないですか?ヒドロコルチゾン配合で強力,ですよ.絶対効く,という信念が伝わってくるいい命名ですよね.選ばれし薬である事が分かります.

調子乗って調べていると,

ポステリザンF坐薬というものもあります.

1.販売名
(1)和名
ポステリザン®F 坐薬

(2)洋名
Posterisan® F

(3)名称の由来
ラテン語の posteriori(後方の)と sanare(治癒する)を組み合わせたものである。

こちらも強力ポステリザン(軟膏)と同様に,大腸死菌とヒドロコルチゾンが入っているのにも関わらず,こちらは残念ながら“強力”の称号が得られませんでした.ちょっと切ないですよね.下記が成分になります.

成分・含量
1個(1.5g)中
大腸菌死菌浮遊液 0.245mL
大腸菌死菌 約3.90億個含有)
日局ヒドロコルチゾン 3.75mg

もしかしたら,坐薬の方にも“強力”とつけてしまうと,名前が似ていて間違えやすい,などの問題があったのかもしれません.

強力ポステリザン(軟膏)のIFに,開発の経緯が掲載されています.
大腸菌死菌の謎もあります.
以下引用になります.

開発の経緯
1922 年、Piorkowski&Bonnin は大腸菌死菌浮遊液による生菌増殖抑制及び溶菌(大腸菌数減少)をin vitroの実験で報告し、Bonnin は大腸菌ワクチンの局所作用に対する学問的基礎に従って、初めて痔核等へ応用した。
大腸菌死菌浮遊液は白血球遊走能を高めることにより局所感染防御作用を示し、また肉芽形成促進作用による創傷治癒促進作用を示すことから、同年、ドイツのドクトル・カーデ製薬会社(ベルリン)からポステリザン軟膏及びポステリザン坐薬が発売され、急・慢性痔疾の治療と予防に有効であることが証明された。
更に、1954 年から 1956 年にかけてドクトル・カーデ製薬会社では、このポステリザン軟膏に抗炎症作用を有するヒドロコルチゾンを配合した強力ポステリザン(軟膏)を開発し、1957 年に発売されている。

・なんと大腸菌死菌による研究結果は1922年に出ていた.
・Bonnin 先生スゴイ.
・ドイツで製造,商品化.
なんかロマンの塊みたいな薬じゃないですか,これは.

というわけで,一般名,商品名共に歴史ある,圧倒的な強さと存在感で堂々と見事一般名マスタの1位を獲得しました.
【般】大腸菌死菌・ヒドロコルチゾン配合軟膏
おめでとうございます.

続いて
2位【般】ジオクチルソジウムスルホサクシネート等配合錠

あまり深い意味はないですが,カタカナバカリデドコデクギリヲツケテイイノカワカラナイ・・・
薬の名前というより,化合物の名前がプンプンする一般名ですよね.

これは,申し訳ないですが,絶対覚えられない自信があります.
問い合わせの時でも,
「あの~,Rp2の, ジオクチル・・・なんですけど」
と絶対に最後まで読まれないままに終わるかと思うと,少し不憫な気がします.

こちらは,ビーマス配合錠,ベンコール配合錠 になります.
商品名はものすごくスッキリしていますね.便秘のお薬になります.商品名のつけ方が両薬剤共に秀逸です.

効能又は効果
便秘症
腹部臓器検査時又は手術前後の腸管内容物の排除

用法及び用量
通常成人1回5~6錠を就寝前、又は1日6錠を2~3回に分割して、多量の水とともに経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

こちらもIFを見てみます.
開発の経緯
1955 年 Wilson & Dickinson が界面活性剤である Dioctyl sodium sulfosuccinate(D.S.S.)
を様々な便秘患者に使用しその著効例を紹介して以来、D.S.S.は新しい軟便剤として臨床上注目されるようになった。
一方、D.S.S.のみでは十分な排便をみない場合もあり、特に弛緩性便秘には腸蠕動促進剤を適量に配合し、それらの併用効果を期待しようとすることは合理的であると考え、
Broders は D.S.S.と Cascara 有効成分の合剤を慢性便秘患者に投与し、臨床的に有効であったと報告している。また、Lish & Dungan も D.S.S.と Cascara 有効成分をネズミに投与し、軟便効果ならびに腸蠕動刺激を検討し効果を得ている。
本剤は、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)、カサンスラノール(Cascara有効成分)を配合した緩下剤で、便秘症、腹部臓器検査時又は手術前後の腸管内容物の排除を効能とする。

・こちらも1955年から開発されていた.
・Dioctyl sodium sulfosuccinate(D.S.S.)長すぎて略語になってる!
・一般名処方もDSSでいい気がしてきました(ダメですね)
こちらは商品名の秀逸さも光る一般名マスタでした.

さて,つづいて
3位【般】イソロイシン・ロイシン・バリン配合顆粒4.74g
【般】イソロイシン・ロイシン・バリン配合顆粒4.5g
【般】イソロイシン・ロイシン・バリン配合顆粒4.73g

高校生の時に勉強しましたよね.必須アミノ酸、BCAA(分岐鎖アミノ酸:バリン、ロイシン、イソロイシン)です.

よくわかりませんが,バリンといえばロイシン,ロイシンといえばイソロイシン,とスムーズに出てくる(?),分岐差アミノ酸の超有名な3兄弟が含まれている,いかにも仲良さそうな一般名ではないですか.ホノボノしますね.癒し系です.

効能又は効果
効能又は効果/用法及び用量
食事摂取量が十分にもかかわらず低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善

となっております.
非代償性肝硬変患者に対する分岐鎖アミノ酸の投与が血中アミノ酸インバランスを是正して低アルブミン血症の改善をもたらすことから,低アルブミン血症改善治療剤とされています.

とここまではいいです.

最後に微妙に用量が記載ありますよね.用量ごとに調べてみました.下記が対応する薬剤のようです.

【般】イソロイシン・ロイシン・バリン配合顆粒4.74g
アミノバクト配合顆粒,コベニール配合顆粒, リックル配合顆粒,リバレバン配合顆粒,レオバクトン配合顆粒分包
【般】イソロイシン・ロイシン・バリン配合顆粒4.5g
ヘパアクト配合顆粒
【般】イソロイシン・ロイシン・バリン配合顆粒4.73g
ラニュート配合顆粒,

覚えられませんよ,これ.
何とかならないもんでしょうかね.

ちなみに先発品の
リーバクト配合顆粒は4.15gでした.

薬価も1包にできればいいんですけどね.在庫管理が大変かな,と感じました.


残念ながら3位入賞できなかった一般名処方

【般】プロメタジン1.35%等配合非ピリン系感冒
 →配合が複数あるのであきらめて等,とした潔さがステキです.

サラザック配合顆粒,セラピナ配合顆粒,トーワチーム配合顆粒,マリキナ配合顆粒 などです.

以上,全く持って薬学的な情報はございませんでしたが,皆様もお気に入りの一般名マスタを見つけてみてください.もし良さそうなのがありましたら,ぜひお教えください.これからも一般名マスタの追記をワクワクしながら確認しようと思った次第です.
最後までお付き合いいただき,ありがとうございました.