話題のAIによるチャットボット、対応は、早いです。
ちょっとビックリしました。
中外製薬が、製品情報の問い合わせにAIを用いると言うニュースが出ていました。
2019年1月10日のミクスになります。中外製薬の医療従事者向けサイトに、タミフルの情報提供にあたって、AIを用いたチャットのシステムを導入するというニュースです。
中外製薬 製品情報問い合わせにAI 医療従事者向けサイトで タミフルから開始 | 国内ニュース | ニュース | ミクスOnline
2019年01月10日|AIを用いた医療従事者向け製品情報問い合わせチャットボット 「MI chat(エムアイチャット)」の運用を本日より開始|ニュースリリース|中外製薬
- チャットボットって?
- 現場で求められている医薬品情報提供とAI
- 電話対応の利点と欠点
- チャットボットの利点
- タミフルから始めた理由などは?
- 問い合わせの内容は?
- よくある質問も、コールセンターにしてしまう理由
- チャットボットはさらなる難解な質問に曝される
- 医薬品のコールセンターの位置づけ
- 実際のチャットボットを経験してみた
- 回答のデーターベースはどうなのであろうか
- コールセンターはどうなっていくのであろうか
- チャットボットは24時間対応
- チャットボットも含め、コールセンターを利用する側の立場として
- 最後に
チャットボットって?
会話のシミュレーションを行うコンピュータプログラムのこと、とされています。最近では色々なところに使われています。
楽天モバイルに最近知人が変更するのを手伝いましたが、その際もPC上でチャットをしながら質問のやり取りを行いました。それは人が行っていますが、ある程度の選択肢を準備して、そこから選択する(もしくは言葉を入力すると)、それに従ってボットが対応するもの、とされています。
会話式で、こちらの知りたいことに導いてくれるもの、となります。
参考;
これだけ読めばチャットボットのすべてが分かる : FUJITSU JOURNAL(富士通ジャーナル)
現場で求められている医薬品情報提供とAI
AIにも様々なニーズがあります。
私は病院での、主に医師からの医薬品情報に関する問い合わせを受けることが多いです。
その中で、どうしても迅速な回答が必要になることも多く、また難解な質疑に際しては、製薬会社のコールセンターへの確認も行っています。
基本的に、緊急での対応が多く、やはり音声での対応が回答も早く、最もスムーズです。現場で求められるのは、正確性と迅速性に他なりません。
電話対応の利点と欠点
上記の通り、質疑に対して電話、音声での回答はスムーズで、迅速性には最も優れている対応となります。そして受けた側は、それを整理し、元の質疑があった医療従事者へ回答します。音声でのやり取りの利点は、その迅速性です。
質疑に対しての回答は、迅速性はおそらく必要なものになりますが、もっとも必要とされるのは、正確性です。
状況に見合った回答、なるべく正確なものがあれば、それに見合った回答を得るのが最も重要となります。
回答の中で、引用文献等が紹介されるケースがあります。また副作用の件数等は、電話口の口頭で教えてもらうケースもありますが、これを自分でメモすると、なかなかメモしきれないこともあります。そしてこれをうまく伝えることができないケースと言うのも、実は経験しています。
手元に資料がなく、口頭での情報をメモし、それを伝えるというのは、確かに難しく、正確性に欠ける要素があるのは問題となります。
聞き間違えや、思い込みによる勘違い、などです。薬剤では、投与量や副作用など、最も間違ってはいけないところが、音声による自分のメモがすべてなので、実はあまり良い方法ではないのかもしれません。
チャットボットの利点
上記のようなケースでは、今回のようなAIによるチャットボットなどは、質疑、回答がPCの画面に、文字として残ることになるので、非常に有用です。
応対の概要、何を話したのかというのが、時系列の記録として残ります。
早急な回答が必要な問い合わせでは、やはり音声のほうが有用かと思います。しかしながら、そのやり取りの入力を、音声でできれば、もしかしたらこのAIによるチャットボットも、音声の対応に近いようなものに、これから進んでいく可能性は、十分にあるかと思われます。
最近の医薬品情報に対するインターネットの普及、AIの使われ方、その進歩は非常に早いというのを実感します。
ほんとにここ数年で、自分たちが想像している以上の、進歩があるというのを感じています。
タミフルから始めた理由などは?
中外製薬のHpを見ますと、医薬品の問い合わせですが、専門のスタッフが対応し、年間約60,000件で、そのうちの2割、12000件ほどがタミフルに集中、冬期が多いとされています。ちょうどインフルエンザも流行が爆発的に増えています。普段飲まないような薬剤の情報(流行の時期がある薬剤)というのは、なかなかアップデートが難しかったりもします。
今年度、タミフルに関する情報は10代の投与なども含め、少し変更がありました。薬剤が必要なシーズンがあるので、この時期に間にあったのはありがたいですね。医療従事者にとって、とても心強い対応となるでしょう。
問い合わせの内容は?
以前コールセンターの方とお話をしたことがあります。これは、その業務の内容についてなのですが、実はコールセンターにかかってくる質問で、よくある質問として準備をしているものに対する質問の割合というのが比較的高いという事を聞きました。
医薬品の問い合わせは、確かに日頃見ていれば、どこにどのような資料があり、よくある質問に、どのような質問が設定されているのが、ある程度感覚でわかるかもしれません。
ただ、それは情報の取り扱いを日々行っている、慣れている方の感覚に頼っているものかと思われます。
よくある質問も、コールセンターにしてしまう理由
医師であれば、日々診察がメインで、治療など様々なことを行います。その中で、全ての医薬品のアップデートの情報を、業務中に続ける事は難しいでしょう。
薬剤師であっても、日々の業務が調剤や、病棟、注射せん調剤、混注業務などであれば、同様に、よくある質問等に、どんなものがあるのか、という事を全て覚える事は、当然できません。慣れない薬剤であれば、製薬会社も作り方も様々で、どこにそういったことが書いてあるのか、と言うことすら覚える事はできないでしょう。
よくある質問等、パンフレットの中にあるものは、製薬企業がよくある問い合わせとしてその模範的な回答を、わかりやすく準備してくれているものです。それは色々なシチュエーションが考えられる中で、ほぼその回答が正しく、誰が見ても誤解の無いようなものが導き出されるもの、という事でまとめられているものだと思います。
ただこういったものは、医療従事者向けではありますが、基本的に添付文書に書かれているようなもので理解できるものであれば、こういったことも聞かずに済みます。
一般的に公開されている添付文書の中では、読み取れないものなどもあり、さらにインタビューフォームとしてまとめられていますが、それでもなかなか分かりにくい、といった事が、こういった形になっているかと思われます。
添付文書、インタビューフォームは、ほぼ体裁が決まっていますが、若干製薬会社によって見栄えも違います。完全に同じ書体、共通の、というのは、それぞれを製薬企業が製作しているので、難しいのではないかと感じます。
それゆえ、よくある質問の確認を自分で行わないまま、コールセンターに聞いてしまう事もあるわけです。
チャットボットはさらなる難解な質問に曝される
今回の取り組みは、中外製薬のものになります。薬剤の取り扱いもかなりあり、特に中外製薬は、抗がん剤を多数扱っているので、その問い合わせは、おそらくこのようなAIを使うと網羅的に回答が導き出されることでしょう。
しかしながら、データベースが莫大になります。これはあくまで推測ですが、まだまだ抗がん剤などによる、少し込み入った対応が必要な薬剤については、やはりその専門性などから、音声対応の方も併用した対応が、まだしばらくは主流となるでしょう。
医薬品のコールセンターの位置づけ
コールセンターでは、あらゆる質問に答えなくてはいけないことになります。そしてその情報は、製薬会社の全てになるといっても過言ではありません。
すなわち、そこでの情報提供が、薬剤の使用に大きく関わり、そして患者さんの治療に直接関わることになるわけです。なかなか患者背景がわからない中での、問い合わせと言うのは、非常に難しいです。
私たちも、どんな状況であっても、薬剤の問い合わせを受ける際には、患者さんの状況をしっかり確認します。
患者さんの背景により、問い合わせに対する回答が、大きく変わる場合があるからです。
コールセンターでは、明確な回答がハッキリしないまま、回答しなくてはいけない、そういった必要があるということも聞いたことがあります。
すべての疑問に必ずしも明確な回答があるばかりではないためです。ですので、限られた中での回答またその情報を適切に伝える能力というのは非常に重要です。
最近、よくコールセンターの対応についてのアンケートがきます。満足度調査のようなものですが、過去の問い合わせのことを思い出して対応がどうだったか、と聞かれても、余り正確なことは覚えていないですよね。
そのために過去の自施設のデータベースを開けることなどしないと思うので、本当によく対応いただいたところか、あまり満足いかなかった回答でよほどしっくりこなかった場合以外は、記憶にそれほど残ってないかと思います。
コールセンターに、一応自分で調べてみて(医中誌、Pubmed,UP TO DATE など)、この程度まで確認できたのですが、それ以上のものはありますか、という確認をする場合もあります。そういった意味では、チャットボットが存在しても、コールセンターの必要性は、現時点でまだ必要なのではないかと考えています。
実際のチャットボットを経験してみた
ちょうど問い合わせがあった内容について確認してみました。
医療従事者専用のHpから入り、Mi chatでお問い合わせ、というボタンを押すと別画面で進んでいく。
内容については口外しない、というところにチェックすることになっていたので、今回は具体的な質問と回答はあまり書きません。
私の感想ですが、初めの選択する項目から適切に利用すれば、回答は非常に速い、という実感です。
Mi chatに入ると、始めにいくつかの質問のジャンル分けがされています。効能効果・有効性、といった具合で、そこからフリーで質問を入力する形になります。
今回は、タミフルについて、
1.10代の投与について
2.腎不全時、特に血液透析患者の場合
3.予防投与していて、インフルエンザ症状が出てきた場合など
上記は先日聞かれたことも踏まえ、確認してみました。
はじめ、若干カテゴリーを間違って選択したため、少しずれましたが、概ね十分な回答が得られました。
ジャンル分けすることにより、質問をしてから、早いと数秒で回答が戻ってくるイメージです。いやぁ、すごい時代になったものだと、改めて感じます。
回答のデーターベースはどうなのであろうか
実は、タミフルに関しては、従来の異常行動などのこともあり、製薬会社のHpでは、よくある質問が、かなり蓄積されている、と感じます。上記の通り、年間12,000件もあるタミフルに対する問い合わせは、同様の質問も多いかと思われます。
よくある質問も、かなり充実しています。今回入力してみた質問に対する回答も、私の中では、満足度は非常に高かったです。あらためて評価したい。
今までの問い合わせの経験が、最もあるのが、タミフルであるのでしょう。分かっているようでわからないこと、は意外と疑問に感じるか感じないかで質疑も変わってきます。質疑が繰り返されれば、AIはデータベースの信頼性が上がり、よりよいものとなっていくでしょう。
コールセンターはどうなっていくのであろうか
今回のミクスでは、採用の人事について、人数は減らさないと言うことになっています。しかし、今後は、やはりAIがある程度対応しながら、こういったところには別な人を当て、人数というのは少しずつ減っていってしまうのでしょう。
これはもしかしたら、もしかしなくても、病院の中の薬剤師、医薬情報室も同様の傾向なのかもしれません。
情報社会の波は、大きく押し寄せているのを感じます。たくさんある情報の中で、いかに自分が知りたい情報をキャッチできるか。今回のWebをもちいた情報検索、ボットチャットはこれからも広がっていくでしょう。
チャットボットは24時間対応
今回、休日の夜間にこのシステムを試してみました。急ぎではない質問など、営業時間内に確認できないような質問など、このシステムを使った対応は、とても有用であると考えます。
対応ができない時間になってしまっているので、回答がもらえない、という状況が、このチャットボットなどを皮切りに、解消する可能性もあります。そしてこのシステムは、さらにほかの薬剤へ広がり、他社も同様に取り組むことになるでしょう。
チャットボットも含め、コールセンターを利用する側の立場として
この有用なシステムを利用する側も、その限界や利便性をしっかり理解して使用することが必要になってくるかと思います。
今後開発されてくるかとは思いますが、質問者が聞こうとしていることに対してのアドバイス、この辺りはどうですか?といった、質問する側へのサポートも、現在はコールセンターで、気が付く方は行ってくれますが、そういったものも今後行われてくるでしょう。
少しおせっかいかも、というような情報ですが、質問者側の抜けている部分までのフォローまでなされる時代が、来るかもしれません。
例えば、ですが、上記の腎臓の機能が悪い人でのタミフル用量を聞いた際に、慢性腎不全の状況とともに、透析を行っているか、というようなことを聞いてくれる、といったイメージです。
例えはイマイチですが、アマゾンなどで購入すると、他の人は、こんなものも購入しています、と表示されますよね。あんな質問に関するリンクなどを表示するイメージです。関連する情報を例示することで、同様の質疑に対する情報も得られます。
回答する側は、上記の通り、どんどん進歩しています。しばらくは、質問する側は人間なので、質問する側の成長なくして、このシステムは有効に使えないでしょう。
もしかしたらそこの部分ですら、人間ではなくなってしまうような時代が来るのかもしれませんが。
最後に
今回、ボットチャットを試してみました。
思った以上に快適にいろいろと確認ができました。タミフルという限られた医薬品でしたが、毎年その投与に際し、様々な質問が挙がってきます。このようなシステムを上手に利用することで、薬剤師業務にうまく生かしたいですね。