年末年始、自宅から実家に帰られる方も多いかと思います。年末から年が明けると、初詣とともに、親戚が集まって、みんなで新年をお祝いすると思います。
年末年始は、特に家族みんなで集まり、大人はお酒を飲んだりして楽しい時間を過ごす一方で、子供は気をつけなくてはいけないことがあります。
私も親戚の子供が来たときには、なるべく怪我のないように、少し緊張しながら遊んであげているつもりですが、小さいお子さんは本当に、様々なもの興味を持ちます。
そして、大人が思ってる以上に、色々なものを口に入れたがるのは、小さいお子さんを育てしたことがある方は、よくお分かりのことでしょう。
お正月などでは、両親が子供のことを、ずっと見守り続けている時間ばかりではないと、親戚が集まった時には、特に感じています。自分が見ていなくても、誰かが見てくれている、という潜在的なものがあるためです。
久しぶりに会った親戚同士などと話をしていると、ついつい自分の子供も、他の親戚の人に任せたりして、目が離れてしまうという事はあるかと思います。
今回の話はそういった時に起こりうる、子供の誤飲についての記事をまとめてみます。
- 子供の誤飲が起こりやすいわけは・・・
- 子供における医薬品の誤飲
- 子供がいる家庭で注意すること
- 親の認識について
- タバコの誤飲は危険
- 誤飲は子供や老人だけが問題?
- 誤飲すると危険なもの
- 誤飲で注意しなくてはいけない薬
- 誤飲をしてしまったら?その対応など
子供の誤飲が起こりやすいわけは・・・
小さい子供は特に、気管支が細いために、気道内で異物が詰まりやすいのは想像がつくでしょう。有名なものは、こんにゃくゼリーやお餅などが挙げられるかと思います。
こんにゃくゼリーは、その対策が行われています。大きなものは、すでに子供が食べれないという記載があります。意外とお餅は、詰まると吸引の時も大変で、初療室などで難渋しているのを目にしたことがあります。
お餅は、老人の嚥下機能が低下した際にも、特に注意が必要ですが、当然ですけども、小さいお子さんでも、同様により危険であることには変わりはないと思います。
楽しくみんなで食事をしている団欒の時に、気がついたときに、お餅が喉に詰まっていると言うことを避けるためには、特にお子さんの食事の際のお餅や、喉に詰まりやすいものは、特に注意が必要なのではないかと思います。
今回は、特に食べ物というより、薬に注目し、こういった誤飲についての防止等の情報をまとめてみました。
子供における医薬品の誤飲
医薬品・医療機器等安全性情報から、子供による医薬品の誤飲事故についての防止対策についてという記載があります。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000185034.pdf
こちらの資料によると、平成25年度の家庭用品等に関わる健康被害病院モニター報告において、誤飲対象がタバコを抜いて、医薬品・医薬部外品が報告件数1位になったとされています。
子供の前ではタバコを吸わない、分煙化等が、誤飲が減っている理由かと考えられます。
その一方で、これは大人の問題かもしれませんが、薬については意外と大人思っているより、子供は誤飲をすることがあるということを、しっかり認識しておかなくてはいけないかと思います。
特にこの報告では、味のついた口腔内崩壊錠の発売がもとで、大量誤飲事例というのが報告されています。また、シロップなので、子供が飲みやすいように味付けしてあるものは、自ら子供が飲んでしまうため、そういった意味からの報告もあるとされています。
また、この2016年2月の報告では、子供による医薬品の誤飲についての注意を受けたことがないと言った人が約6割いるとされています。こちらは現在もあまりこの割合は高くはなっていないでしょう。
誤飲についての管理を、子供が悪いと、その責任を負わせるのは、あまりにかわいそうなことです。しっかり保護者も含めた周りの大人が、子供の手の届かない所で、薬の管理をするということが、最も大切なことになります。
PMDAの資料では子供の行動特性から見る、誤飲について書かれています。
1.身近にあるものを手に取りなんでも運ぶ
2.種類への興味や関心が高まり、周りの人の模倣する
3.興味を持って好んで手に取る
といったことが挙げられています。子供は確かに何でも大人の真似をします。そして小さい子を見ていると、本当に良くものを口の中に入れ、その感覚をしっかり自分で感じてるように思います。
新しいものに対しての興味、というのもたくさん持っていること思います。そしてそれは、味がなければ、当然それをたくさん口にほおばってしまう、というようなことは起きないのかもしれません。
子供がいる家庭で注意すること
東京都多摩小平保育所のホームページでは、子供の誤飲に対する注意として4つの項目に注意するということで、挙げられています。
1.鍵のかかる場所や取り出しにくい容器に保管する
2.医薬品の服用後は、そのまま放置せず元の場所に片付ける
3.医薬品の出し入れや服用する行為を見せないようにする
4.年齢や発育段階によって誤飲の特徴が異なる
当施設でも、厚生労働省から提示されている、ポスターなどを小児科や、通常小児科を診察しない外来にも掲示しました。医薬品の誤飲で問題になるのは子供ですが、小児科の掲示板に貼るというだけではなく(これは当然保護者に知っていただきたいため、でありますが)、むしろ大人に対して、服用している薬の管理をしっかり行っていただきたい、ということに主眼を置いて、そういったインフォメーションを行っています。
何度も繰り返しますが、子供の誤飲は、悪いのは子供ではなく、確実に大人の方の責任であるということには間違いありません。そして多くの人が集まる、こういった年末年始においては、必ずしもそれが親だけの問題だけではなく、親戚家族みんなの問題という認識が必要になっている、という事を忘れてはいけないかと思います。
親の認識について
ある調査では、4ヶ月検診時における保護者のアンケートで、誤飲についての意識が、不慮の事故等に関して同様に、認識度が低いと報告されています。実際子育てをしている親での調査なので、出産する前に誤飲の注意点などを、しっかり親のほうに伝えるということが必要であることも報告されています。
乳児の不慮の事故対策はいつから開始するべきか 4ヵ月児健診における保護者のアンケート調査結果より、中辻 浩美、小児保健研究、73巻3号 、397-402(2014.05)
タバコの誤飲は危険
最近はタバコの誤飲というものは、減ってきているということになっていますが、日本公衆衛生雑誌2008年の資料によりますと、実態調査の詳細が報告されています。
誤飲事故を起こす年齢というのは1歳までに78.8%を占めたとされています。まだあまり動き回れていないような年齢の子供が、誤飲を起こす可能性を認識する必要があると思います。
また、喫煙している家庭の36.2%が、子供の手の届くところに置いている、7.5%は置き場所を気にしていないと回答としています。タバコの吸い殻に比べて、タバコの浸出液等の方が危険知っている人が半数しかいなかった、といったところから、やはりその認識を改めて確認する必要がありそうです。
特に年末年始など、人が多く集まるとき、親戚の方で普段小さいお子さんが家庭にいないかたが喫煙する場合に配慮できるのか、また両親がそれを気にすることができるのか、というところで、誤飲がおこるかどうかが大きく変わってくると思います。
起こってからでは遅いので、すこし言いにくいかもしれませんが、マナーはしっかり守って、楽しいお正月を過ごしていただければと思います。
この報告では、諸外国に比べて、タバコの誤飲が国内でも多いとされています。その理由は、タバコの管理で、特に灰皿の管理が適切に行われていないこと、受動喫煙の認識があるにもかかわらず、実際の行動がずれていて、子供の前で喫煙が行われている、言うことが問題点として挙げられています。
タバコの誤飲事故に関する発生の実態と保護者の意識、横田 いつ子、日本公衆衛生雑誌、55巻4号、238-246(2008.04)
誤飲は子供や老人だけが問題?
気管支異物と言うのは、小さい子供や大人で問題になると言う認識の方が多いかと思います。私もそうかと思っていました。しかしながら、まれではありますが、成人の誤飲による報告もあります。ピーナッツが原因とされています。子供とふざけて食べていて誤飲、繰り返す肺炎を主訴として精査したところ、発覚したという報告です。
若年成人に発症したピーナッツによる気管支異物の1例、西尾 智尋、気管支学、28巻2号 、99-102(2006.03)
誤飲すると危険なもの
子供の誤飲で最も危険なものの一つに、ボタン型リチウム電池があるかと思います。
これについては、潰瘍を形成してしまったという報告があります。2例の報告がありますが、誤飲後3時間半、1時間程度でボタン電池を除去したのにもかかわらず、潰瘍形成をしたとされています。リチウム電池が原因とされており、通電による水酸化ナトリウムによる化学潰瘍とされています。水酸化ナトリウムはご存知の通り、強アルカリで、非常に刺激が強いものになります。それ自体を飲み込むことはなくても、ボタン電池で起こりうるという事は知っておく必要があります。
年末年始の大掃除、色々な電化製品の掃除やリモコンの電池など、ボタン電池は交換されることもあると思います。電池自体はとても素晴らしいものです。
古くて捨てる電池を、まとめて捨てようと、足元などに置いておいたものを誤飲する、というケースもあり得ます。
これに関しては、現在の所、気をつけて、予防するしかないかと思われます。誤飲してしまった場合のリスクを考えて、子供の前では危険なものとして扱ったほうがよいかと思います。
誤飲で注意しなくてはいけない薬
他にも、小児はさまざまなもの誤飲すると報告されています。子供は、大人が考える以上に、いろいろなものを口に含んでしまうということがありますので、年末年始の親戚が集まったりする場所においても、子供がいる場所では、口に入れると危険なもの、その危険性について知っておくことが必要かと思われます。
薬については、OD錠(口腔内崩壊錠)が、ラムネのようにすっと溶け、服用しやすい剤型として、剤型の一つとして発売されてきています。近年は後発品でもOD錠を積極的に開発し、その服用の良さをポイントにあげる後発品というのが出てきています。
例えば、抗アレルギー薬のアレグラがバナナ味かと思いますが、その後発品も味を変えたりして、服用のしやすさをアピールする薬剤となっています。
服用する側としては、服用時の飲みやすさを改善した薬は、アドヒアランスの向上が期待でき、メリットが大きくなってきています。
ただ上記の件から、子供の誤飲に関しては、味が良い、飲みやすいというのは誤飲という観点からは、さらに誤飲を進めてしまう可能性があるという事も、薬を服用している本人、まわりもしっかりと認識しておく必要があるかと思います。
子供に最も誤飲してほしくない薬の1つにティーエスワン配合OD錠があるかと思います。
この薬剤は、色々と副作用もあり、とくに子供の誤飲は避けたい医薬品の一つです。
ピーチ風味となっているようで、特に注意が必要です。
臨床腫瘍薬学会からも注意がなされています。
【注意喚起】ティーエスワン®配合OD錠T20・T25の発売について - 日本臨床腫瘍薬学会
現在は後発品も出ていますが、沢井製薬、岡山大鵬薬品も同様のピーチの芳香のようです。味は苦いという事も聞いたことがありますが、いずれにしても、最も誤飲を避けたい医薬品の一つになります。
誤飲をしてしまったら?その対応など
最後に、子供が誤飲をしてしまった時について、どういった対応したらいいのかということがありましたので、掲載させていただきます。
小児救急電話相談 電話番号#8000
が最も良いかと思われます。都道府県の相談窓口に転送され、アドバイスをしてもらえるところとなります。
東京都多摩小平保健所の資料より、その際に、準備しておくことができれば、という事も掲載されています。焦って電話をすることになるかと思いますが、そういった時ほど冷静に、しっかり伝えられるように、知っておく必要があると思います。
・氏名や年齢、体重、性別
・連絡者との関係、電話番号
・誤飲した医薬品の正確な名称
・誤飲の発生状況(摂取量や摂取経路、時刻)
・患者の状態
特に体重は、意外と母親は知っていたりしますが、父親は知らない場合もあるので、普段からどれくらいの体重なのかは把握しておく必要があるかと思います。
何をどのくらい、という正確な情報も必要です。焦っているときほど、大切な情報になります。誤飲したと思われる医薬品などがあれば、写真などをとっておくのも必要かと思います。もちろん現物があればそれも有用です。
東京都からも誤飲に関する分かりやすい資料が出されています。イラスト入りで分かりやすくなっています。一度ご確認いただけるとよいかと思います。
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/anzen/publication/documents/hiyari_guide_3.pdf
大日本住友製薬 明治薬科大学 石川教授のHpも参考になります
赤ちゃん・子どもによる薬の誤飲を防ぐために | 健康情報サイト | 大日本住友製薬
子供の誤飲は、とにかく予防するしかないと思います。
薬であってもなくても、注意が必要です。そのためには、正しい知識を大人が持っている必要があります。
楽しいお正月を迎えるためにも、ぜひ、少しでいいので、気にしていただければと思います。
さて、本年から始めたブログ、年の最後はこの記事にしようと思っていました。本年は、雑多な記事ばかりでしたが、少しずつ書いてみました。お読みいただきまして、誠にありがとうございます。
年明けは、いつから開始するか分かりませんが、少しずつ続けていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、よいお年を。お迎えください。