病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

薬剤師の学会参加に思う

医療薬学会が、3連休を通じて行われている。

ポスター数、特別講演なども含め、国内の病院薬剤師が参加する薬学系の学会では最も大きな学会の一つになる。年々参加者、会員数が増えていると聞いている。毎年とても盛況で、特に学生、薬剤師の学会い経験者にはその圧倒的な熱意を感じることがとても良い経験になると思う。秋の3連休で行われるので、ぜひチャンスがあれば、参加してみる事をお勧めする。

今回は、経験の少ない薬剤師もしくは薬学生へのメッセージと、中間層の薬剤師への期待を込めたメッセージをお送りしたい。

 

上記の通り、医療薬学会は、病院薬剤師の参加がほとんどである。大病院の、講演が上手な薬剤師の話を一手に聞くことができる学会である。
薬剤師になったばかりの方、病院薬剤師を目指す学生さんに、この学会の参加をお勧めしているのは、上記の通り、熱意がすごいので、それを感じてほしいから、である。
薬剤師が日ごろの業務などから研究を行い、まとめて発表しているのだから、その立ち振る舞いも含め、若い方には、発表者は輝いて見えるであろう。私も上司が発表しているときは、普段いろいろ思うことが(?!?)あったりしたが、学会で発表している姿はカッコよかったし、今でも覚えている。
見知らぬ人からの質問にも、色々とディスカッションしながら答えているのは、研究者なのである。

 

若者にお願いしたいのは、特にポスター会場でのことになるが、学会会場は、同窓会の会場ではない、という事である。
ちょっと言いにくい事にはなるが、ポスター会場で、同期の他の施設で働いている薬剤師の発表を見つけると、うれしいし、話しかける。普通の光景ではある。ただ、発表時間には避けていただきたい。
同様に、自施設の応援のつもりでポスター発表の演者の近くにいるのもよいのだが、自施設同士で発表時間に雑談をするのも控えていただきたい。質問を待っていたら、雑談していただけだったという経験も少なくない。
学会は、学会なのである。

 

それには社会人としてのマナーもあるし、発表する側、質問する側のそれぞれのマナーがあるので、それを著しく外れるのは、やはり参加していると気持ちいいものではない。

医療薬学会のポスター発表で、他の学会と異なると感じるのは、例えば集中治療医学会、環境感染症学会などでは、ポスター発表でも座長が仕切り、質疑応答を行う。他職種もいるので様々な質疑応答になって面白い。それだけ緊張感もあるし、質疑応答に関しては集中して聴けるので、満足度が高い。

医療薬学会は、その演題数、場所の問題から、同様の形態はとりにくいと考える。今の自由にディスカッションができる、というのは、ある意味参加する薬剤師の自主性に委ねられているので、必然的に薬剤師個々のマナーが大前提となる。

 

上記のように、雑談ができる状況にあるのだが、学会はあくまで学会、学術的なディスカッションを行うべきところなのであることを、忘れてはいけないと感じている。

質疑応答中の時間に、普段の話の延長である、身内同士の話で盛り上がってしまうと、肝心なディスカッションができないのである。誰も行っていないような研究は、発表としては価値があるし、質問がなさそうだからといって、勝手に雑談をするのは不自然である。

本来、学術的なものは、論文にすることであって、その途中経過を学会で発表しているケースが多い。
薬剤師の業務、実務という点では、必ずしも学術的、ではなくてもよいし、業務上、どの施設も抱えている問題などをまとめることも、医療薬学会では注目され、活発な意見交換がなされているのをよく目にする。
若い方は、ぜひどんなことでもよいので、自分の行っている業務から、問題点を抽出し、発表できるように進めてほしい。
そして、学会は、同窓会ではないことも心のどこかにとめておいてほしい。もちろん決められた時間以外は、自由である。交流を深め、モチベーションを高く、これからの薬剤師業務につなげてほしい。

 

さて、少し若者向けの愚痴ともとられない内容となってしまったが、ここから下は、少し中間層向けのことを。

 

「私も学会に参加したいのですが、参加できる人の優先が色々あって、また今年も居残りの日直業務です…」

 

これを訴える中間層は多いのではないだろうか。
私も一時期、参加したくても譲ったりしていたし、医療薬学会が特に3日間になってからは、この問題は大きくなっているのではないであろうか。

毎年学会に興味がない薬剤師数名のローテーションになってしまっている現状は、本来であればお互いよい環境ではない。
ましてや、上記のように、参加したくても参加できないという場合の配慮などは難しい。
他の施設の方は、この問題をどのように解決しているのであろうか。

始めに書いたが、医療薬学会は、その熱意を感じるところ、なのであると考えている。それははっきり言うと、お祭りなのである。他の学会に比べると控えめではあるが。

病院薬剤師の発表なんて、何の役に立つの?ということを真顔で言われたこともある自分としては、本学会が盛況になればなるほどうれしいのだが、その反面、学会が3日間、演題数が多数、シンポジウムが60を超えるような学会は、大きすぎてしまうと感じる。

会場がいつも立ち見で、席にすら座れない状況での聴講は、自分の身になるとは考えにくい。
盛況になっているシンポジウムは刺激を受けるものが多いであろう。それは病院薬剤師、医療薬学会の宝なのではないかと感じる。

色々なことを考えると、学会に参加する、ことが目的になっていると、これはもったいない。当施設でもある程度は行っているが、学会に参加した人は、各施設でその情報を共有すべきであろう。参加したくてもできない人がいる以上、そこまでの配慮をしなくてはいけないと感じる。

医療薬学会でもあったような気がするが、やはり話題となったシンポジウムは、もちろん演者の了承を得る必要はあると思うが、期間限定、学会員限定でも、ストリーミングなどでの動画配信などもお願いをしたい。当日の参加費は払っていないかもしれないが、医療薬学会の会員であることは間違いないからで、医療薬学を志している以上、そこまでのサービスがあってもよいのではなかろうか。

医療薬学会の学会員になり、残念ながら業務の関係などで参加できない方のためにも。

参加できないことの心配は、参加していない人のほうが感じる。自分は、今回はあまり聞けなかったな、と感じていても、参加できていない人から見れば、うらやましいわけである。
参加した時の感想やトピックなどを、ぜひ参加した人は、その責務として情報共有していただきたい。

参加できなかった人には、「お祭りを一つ出損ねただけで、来年行けるようなシフトを」、と伝えている。参加したくても行けなかった人へのフォローは、モチベーションを保つためには必要であろう。

学会名は忘れたが、以前介入などで悩んでこちらを選択した、という症例提示があった。薬剤師として、後から考えると、という考察がしっかりしていた。
特に病棟業務における薬学的介入などは、必ずしもうまくいくことばかりではない。しくじり、まではいかないが、考察がしっかりされている症例報告というのは、医学会での発表でもよく行われているが、薬学の中では少ないと思う。
あの人だからできた、という業務は、得てしてその人がいなくなったらできなくなるわけで、それを次の世代にどうつなぎ、引き継ぐかというのも大切なのでは、と感じる。

有名な方の講演もとてもためになるし、拝聴はしたいが、それと同時に以前と同じような講演だとがっかりしてしまうのも事実である。特に若い方の積極的な参加ができるような学会になっていっていただきたいと思う。

最後に、学会の参加にあたって、私が心がけていることを少し。
①事前参加はしましょう
 学会費も変わりますし、要旨も事前に届きます。
②スケジュールを建てておきましょう
 なんとなくタイムスケジュールを見ておいて、当日あたふたしないように。
③要旨集を見ておきましょう
 当日開けているのも見かけますが…せっかく参加するのだから、実りあるものに。事前の質問などもメモしておくとよいかと思います。
④少し早めがおすすめ
 会場などへは、少し早くいくと、余裕があっていいです。知らないところで迷いう事も考えて。
⑤当日のメモを残す
 学会中に気になった部分、論文などの情報があればメモを。なるべく忘れないうちに整理できるといいかと思います。最近は引用論文のPMIDを記載してくれている演者もいてありがたいです。
⑥発表にあたって
 上記、学会という認識をもって、言葉遣いは丁寧に。名刺があるとポスター会場で挨拶できていいですよ。
 質疑応答を(質疑の部分を)メモする。これはとても有用です。自分では気づかなかった指摘をしてくれる方の意見は貴重です。もし自分が手いっぱいになってしまうようであれば、同じ研究をしてくれている演者や同期、後輩にお願いしておきましょう。
⑦参加するためのマナーを
 発表する方、質疑する側。社会人ですので、言葉使いなどには気を付けて。発表は自分が思っている以上に色々な人から見られていますし、影響もあります。特に若い方の手本になるべき世代の方が守れていないのは、実にがっかりしてしまいます。学会という非日常となる時間になるため、いつも以上に心がけましょう。

国内は比較的写真撮影に厳しい。私個人はあまり気にならないのだが、ダメとされているのであればやめたほうが良いが、結構とっている人は見かける。

海外のようにペーパレスになることに今後なりうるかもしれない。医療薬学会は演題数が多いのでしばらくは無理であろうが、本来はある程度の査読を行い、限られた発表者が行うのが望ましいとも考える。これにはいろいろな意見があると思うのでここではこれ以上述べない。

⑧学会を楽しむ
 始まる前や終わった後、移動時間など、空いた時間は色々な方にあったら、ご挨拶を。終わったら、発表した人をねぎらってあげましょう。同期で懇親を深めるのもいいですし、他施設の薬剤師と話してみるのもいい経験になります。学会に行かされてるという気持ちではもったいないです。マナーを守って楽しみましょう