病院薬剤師が,今話題の病院薬剤師の漫画,アンサングシンデレラを少し読んでみた.
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本屋で購入するのがちょっと恥ずかしかったので,取り急ぎ無料版の3話までを観た感想を.お読みいただいていない方もいると思うのであまりストーリーには触れすぎずに.
少し読んだだけですが,とても楽しかった.ひょっとして私もネタは提供できるのでは,と感じたりしながら,楽しんで読んでみました.3話分までの感想を.続きが気になるので買ってみようと思います.
第一話;薬物の血中濃度のおはなし
①薬物による中毒,血中濃度の部分は,自覚症状や検査値などから疑うことは常に必要と考える.これは病院であってもなくても,薬剤師は常に考えていると思う.
相互作用による中毒疑い,実際病院で起こりうるのだろうか?という観点からみてみると,十分に起こりえる.ただ,喫煙が関与する,というものは,病院では考えにくい.喫煙に関しては結構厳しい病院が多いと思う.当施設においても喫煙が分かった時点で退院を促すことになる.ただ,ホスピスのようなところは個人を尊重するといった観点から,病院とは異なっているということもよく聞く.
私は数年前になるが,ジゴキシン中毒を経験した.
ラニラピッド錠を服用していて,他施設から搬送され,ジゴキシンと気づかず,対応が遅くなっていた事例であった.頭痛の訴えから判明したが,腎機能の確認を行ったことでよりはっきりした.循環器内科のコンサルト前に確認できたのだが,何かおかしい,と気づく直感みたいなものは,日々の訓練と経験がある程度必要であろうが,失敗から学ぶ経験もしっかり自分のものにすることが必要と感じる.
TDMが必要な薬剤
TDMが必要な薬剤は下記にTDM学会から一覧が出ている.薬学を志すものは,おおむね覚えることになる薬剤になる.ホスフェニトインは,実質測定はほぼ不要とされているが中毒域と治療域が近いものは,注意が必要であろう.
特定薬剤治療管理料(TDMの診療報酬)
http://plaza.umin.ac.jp/~jstdm/yogo/kiso/08_tokuteitdm.html
最近では,患者数は多くないが,PMDAからも血中濃度測定順守が推奨されているものが炭酸リチウムになる.
炭酸リチウム投与中の血中濃度測定遵守について - Pmda
https://www.pmda.go.jp/files/000145551.pdf
専門の医師が処方する薬剤とはなるが,中毒例も多い.
比較的長期の処方になっているようであれば,血中濃度測定が推奨される.
血中濃度測定は測定する薬剤が特殊という認識でいると,意外と見逃されていると思われるのがマグネシウム製剤である.
酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症について
https://www.pmda.go.jp/files/000208517.pdf
高齢者,腎既往低下例においては十分に注意する必要がある.安価で安全な薬剤という認識が強いために,より注意が必要であることを改めて確認しておきたい.
第二話;薬の飲み合わせ
②病院内でも薬剤の飲み合わせの問題は,病院内ではあまり発生しない.
看護師がほぼ対応をしているため,院内では飲み合わせなどの情報を一覧にして対応しているため,あまり問題になることはないが,退院の際や,夜間救急で母親からの相談などで対応する場合が多い.
実際は保険薬局でのほうが説明も含め充実していると思う.私が以前研修した薬局でも,よく小児用細粒の味を確認していた.
ペニシリン系薬剤,マクロライド系薬剤の飲みにくさ,第3セフェム系抗菌薬の飲みやすさ.
内服薬は,当たり前ではあるが,飲めてなんぼのものなので,服用,というものは基本的ではあるが,とても大切なものになる.
不味い薬
イソバイドは,IF上,
“初め甘みと酸味があり,後やや苦い”
などと,ビールなどであれば魅力的な書き方かもしれないが,これは以前服用していたが,本当に“マズイ”.おそらく内服薬の中で1-2を争う.
イソバイ毒,と呼ばれるほど美味しくない.後発品も出て少し味がマイルドになっているようだが.大人でも飲みにくい薬剤なのである.
飲み合わせに有用な書籍
私は飲み合わせなどの情報を得るために
乳幼児・小児服薬介助ハンドブック を参考にしている.
https://www.jiho.co.jp/Default.aspx?TabId=272&pdid=45130
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子供にとって,親にとって,服用できなければ,薬は薬ではなくなる.その情報提供を行うのも薬剤師として大切な仕事の一つになる.
知り合いの小児科医も,一通り先発品の薬剤の味は知っているといっていた.薬剤師も小児科を取り扱う薬局薬剤師はとても詳しい.
特に母親になった薬剤師は経験があるので,実に対応が優れている.我々の施設でもダントツに服薬説明に優れている.産休明けの方なども,生かせる部分が大きいと思う.
嫌がって飲まなかったり,時間通りに飲ませられない場合,吐いてしまった場合,などなど.子供を守るという事に関して,色々な知識が必要とされている.
第三話;救急医療
③救急病棟に関わる
実際救急外来で,心マまでおこなっている薬剤師はとても少ないと思う.日大板橋病院,昭和大学病院などが有名だが,ACLSの講習の必要もあり,限られている.
実際は医師がほとんど行っていることもあり,当施設でも薬剤師が行う場面はない.
3次高度救命センターでは,実に様々な重症患者が搬送されてくる.薬剤師として薬剤の薬効が最もダイレクトに表れるのを経験する.一瞬の判断ミスすら許されない緊張感ある場所での勤務はとても神経を使う.
薬剤師は,ヒトの死に直接立ち会うことは少ない.病院は生死が常に生み出されている場所であり,残念ながらどんな手立てをしても助けられない場面にも遭遇する.自分の無力さばかりが目立ってしまうところでもある.
グルカゴン投与は,私も一度経験がある.本漫画と同じように,薬剤部まで走った.普段使用しない,冷蔵保存という事で定数を置いていなかった.
私も実は恥ずかしながら,このグルカゴンについては,救急専門医の勉強会で知った.薬学部での学習内容には,あまり入っていない領域だと思われる.
救急領域の報告
アナフィラキシーショックの治療にβ遮断薬が影響を及ぼし心肺停止に陥った1症例
永野 達也ほか,日本集中治療医学会雑誌,2010 年 17 巻 2 号 p. 207-210
実は,心臓CTを撮像する機会が増えてきている現在,βブロッカーを事前に服用することも増えてきており,下記のような報告もあるため,改めてグルカゴンについて確認をしておきたい.当施設でもCT室に在庫を配置してある.
64列冠動脈CT検査におけるβ遮断薬静脈投与による心拍数コントロールの効果に関する検討,山口 隆義,日本放射線技術学会雑誌,2012 年 68 巻 9 号 p. 1250-1260
本書の感想
少し読んだだけだが,第1話のような,昔の医師のイメージのような方はほとんどいないし,あそこまで行うことは病院薬剤師でもないかと思う.
病院薬剤師という,日の当たるところに立ったことのない職業に,少しでも光を与えてくれるような漫画というのはとてもうれしい.
実際はあんなにドラマチックではないし,もっと泥臭い.そしてハッピーエンドだけでもない,様々な人間関係も複雑に絡み合う.
それでも,病院薬剤師をしていてよかったというような,成長していく姿をみていられるのが読む側を引き付けるのであろう.シナリオがある程度現実味を帯びているからで,今日考えられるのもそこがしっかりしているためと考える.
病院に勤務していると,本当にドラマのような経験をすることがたまにある.病院での勤務しかないので他とは比べられないが,それでもそれほど多くの経験はできていない.日々の業務に実直に,常日頃から磨いておくことができてのみ,実践できる,と私は考えている.
病院薬剤師会などでもバックアップできるようなことを個人的には希望している.それぐらい,病院薬剤師をアピールするには,十分すぎる内容だと思う.
薬剤師のマンガは他にも・・・
過去忘れてはいけないが,調べてみると
なんとくすりGet the Answersかながわ推進委員会(神奈川県病院薬剤師会発行!)の漫画も.
これは全く読んだことがないので,こちらも気になるが,Amazonで取り扱っていた.よろしければこちらもどうぞ.