病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

【お役立ち】 感染症治療に有用な書籍類2018

感染症・抗菌薬に関してよく用いている書籍をまとめました.順番によく用いている書籍を紹介いたします.値段の事もあるので,おすすめ順に紹介いたします.この企画,なんだかワクワク,テンションが上がってきました.それでは始めていきたいと思います.

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病院内に感染症科がある施設では,問題になることはほとんどないと考えられますが,そのような施設ばかりではないのが現状かと思います.この領域は薬剤師に聞かれることも多いです.病棟や当直など,1人で仕事をしていて,他の薬剤師に聞ける余裕がない,など困ったことを経験することもよくあります.そんな時に助けてくれる,ドラえもんのような,薬剤師みんなが大好きな本たちです.

 

1. 感染症プラチナマニュアル 2018
岡 秀昭 (著)

 

堂々の第1位は,ここ最近講演をお聞きする機会も増えている,若き感染症医,岡先生の本になります.感染症の基本的な考え方から,様々なことが学べる本となっています.おすすめです.

 

特に初めの8項目は,感染症治療に関わるという事を決めた薬剤師には,ぜひ心にとめていただきたい項目となっています.詳細は実際の書籍を参考にしていただきたいのですが,感染症治療に大切な項目となっています.私もこの本は肌身離さず,とまではいきませんが,事あるごとに確認するようにしています.

 

ポケットタイプとGrande(文字が大きくなったタイプ)の2つがあります.オススメはポケットタイプです.白衣のポケットにも入りますので,小さい文字に抵抗がなければ,病棟活動をする際,色々なところで助けてくれるでしょう.

薬局内,個人持ちではなくみんなで見るという状況であれば,大きいGrandeでもよいかもしれません.値段が少し高くなります.予算に応じて,でよろしいかと思います.病棟の机があればそこに,もしくは医薬品情報室があれば1冊あると心強いと思います.個人持ちなら断然通常のポケットタイプです.値段も安いです.これは本当におすすめです.

個人的には,医師の観点からの情報もそうですが,薬学的な知見も含まれているので,とても勉強になります.もし幸運にも感染症科の医師がいる,専門医がいる状況であれば,いきなりそのような医師と話す前に,しっかり基本を押さえるためにも有用な書籍化と思います.そして,なんと,章ごとに引用文献が記載されています.PMIDもついています.
これは本当にありがたいです.根拠に基づいた,という意味でも,感染症医がどのような文献を引用して実臨床に生かしているかもわかる,充実した書籍になっています.

 

何を勉強してよいかわからない,感染症は色々ありすぎて・・・
と途方に暮れる若者を何人も見ました.一つ一つ学んでいけばよいのです.そして当たり前ですが,感染症の事に介入する,提案する,という事は,薬剤師として,度胸と覚悟が必要なことになります.
主治医と共に感染症治療に関わろうと心を決めた方,まずはこちらをお読みいただくのがよいのではないか,と思います.

 

2. 日本語版 サンフォード感染症治療ガイド2018(第48版)
菊池 賢 (監修)

もはや感染症治療において,この書籍があれば,ほぼ全ての医療従事者が納得してくれる,感染症のバイブルです.もちろん,海外の書籍のため,用法用量に注意する場合もありますが,原則としてこの書籍を参考にしている方は多いでしょう.

勉強のため,というよりは,コンパクトにいろいろな表や資料がそろっているため,実践向きです.毎年購入する必要はないかと思いますが,ポケットに入っていると安心します.そう,ただ持っているだけで安心する書籍.これこそバイブルなのだと思います.
こまったらこちらを購入するのもよいかと思います.ただ,現在Web版でも登録することで見ることができます.ネット環境が十分であれば,こちらはネットでの閲覧も有用です.

ファイザーPROに登録すれば,利用は可能です.書籍と共に登録しておくととても便利かと思います.
https://pfizerpro.jp/cs/sv/sanford/index.html
さっと調べる,Webは検索に優れますので,取り急ぎ登録しておくのもよいかと思います.

毎年改定で,48版というのは歴史もあり,それだけ信頼されている証です.お財布が許せば書籍,余裕がなければWeb登録で準備しておきましょう.

 

3. レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版
青木 眞 (著)

きました,青木先生の本になります.
本当は第1位なのですが,ちょっとお値段とボリュームの方がございまして…
もちろん初学者にも有用な書籍なのには変わりはありません.この本に何度も助けてもらっています.新しい版がでると必ず購入しています.
感染症領域に足を踏み込む覚悟ができたら,迷わず購入しましょう.


ただし,持ち運びは難しいです.お値段もそうですが,目次で40ページ,全1500ページあります.治療薬マニュアルより一回り大きいです.
もしそろえてないようでしたら,ぜひ1冊,みんなで購入,というのがよいかと思います.とにかく情報量が多いので,困ったときに助けてもらう本です.これに載っていなかったら諦めるくらい,絶大な信頼を得ている本です.感染症の辞書,という位置付けの本です.

この本には何もコメントすることはできません.ただただ,困った時に助けていただき,ありがとうございます.今後もよろしくお願いいたします,という感謝しかないです.

 

困ったときに読むので,常日頃から読んでいる方はかなり青木先生の信者かと思いますが,本当に読むたびに新しい情報を得ます.色々な方に影響を与えた,偉大な書籍です.

そう考えると,値段もページ数も気になりませんね.持ち運びも,筋トレ気分であれば大したものではない気がしてきました.感染症の基本的な考え方も,こちらの本には書いてあります.私はきっと青木先生の本をいつまでも買い続けると思います.それだけ素晴らしい本です.

 

感染症領域は,先ほど記載しましたが,今すぐ決定しないといけないこと,として迫られることが多いです.患者さんの状況を確認して,医師の視点以外からも,薬剤師としてのコメントをし,必要あれば推奨する.それには責任が伴います.


こんなことできるのか,と思っていましたが,病棟薬剤師は,常にそのような環境になることは多く,やりがいを超えて怖くなることすらあります.
でも,逃げないで,ぜひ関わっていただきたいです.このような書籍など,様々な資料を活用して,自分の意見が言えるようになってこそ,薬剤師の意義があると信じています.

 

青木先生の本には,本当に何度も何度も助けられています.命を助けられた方も多くいます.それだけ信頼できる書籍です.

 

4.新訂第3版 感染症診療の手引き―正しい感染症診療と抗菌薬適正使用を目指して
感染症診療の手引き編集委員会 (著)

こちらの特徴は,ポイントが絞ってあり,他の書籍に比べて非常にコンパクトです.
100ページ程度で,とても分かりやすくまとめられています.

大曲先生が書かれているブログの一部,「感染症診療の手引き」正しい感染症診療と抗菌薬適正使用を目指して
http://www.kenkyuu.net/id/
がもとになっています.

これが無料で公開されたとき,本当に信じられませんでした.
こちらは2006年と少し古いため,上記の購入の方がよろしいかと思います.
お値段も1080円と,リーズナブル.色々な知識の確認をするのに便利な1冊です.

 

5.感染症レジデントマニュアル 第2版

藤本 卓司 (著)

 

藤本先生の書籍になります.発売から少したっていますが,レジデントのための~シリーズは本当にどの本も秀逸です.

医学部のレジデントさんたちと話していると,この本は代々引き継がれていたりします.感染症科がなくても,様々な感染症に対応しなくてはいけない研修医は,この本を持っていました.レジデントの視点にたっての書籍なので,当然治療についての記載もありますが,ところどころに,藤本先生の,レジデントへの情熱を感じることができる書籍となっております.
医師,とくにレジデントと話す機会が多い病院での薬剤師は,持っていて損はしない書籍かと思います.

 

その他,ですが

JAID/JSC感染症治療ガイド2014
感染症学会/化学療法学会から発行されている書籍になります.日本の治療指針,という意味ではこれもスタンダードになる書籍かと思います.
ただ,購入が,下記ライフサイエンス出版株式会社に連絡,という形なので
少し購入しづらいでしょうか.定価(本体2,000円+税)となっています.
http://www.kansensho.or.jp/guidelines/1501_jaid_jsc_guideline.html

アマゾンでも買えるようです.


抗菌薬TDMガイドライン2016
こちらも日本のスタンダードです.薬剤師であれば必ず使うことになるかと思います.
しかしながら,こちらも下記での購入になります.
化学療法学会の会員には一部閲覧ができます.
http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/tdm_es.html
でも,学会員なら,全部見させてほしい…

改定予定と聞いています.

 

MRSA感染症の治療ガイドライン―改訂版―2017
これも感染症学会のHpから購入になります.
http://www.kansensho.or.jp/guidelines/guideline_mrsa_2017revised-edition.html
送料はかかりますが,下記の値段で購入できます.

冊子(サマリー+解説):A4版 136ページ 600円(税込)
ポケット版(サマリー):A6版 91ページ 300円(税込)

というか,ガイドラインなのだから,学会員には売るのではなく配ってほしい,という声は色々な人から聞きます・・・

 

深在性真菌症の診断・治療ガイドライン 2014

 

こちらもガイドラインの割には高いですね.購入した時はあまり気にならなかったのですが.昔買って,たまに使っています.血培陽性の酵母様真菌も月1回程度ですので,それほど迫られませんが,そういう場合に焦るので,一応おいています.他の資料でもなんとかなる気がしますが.予後があまり良くないので,しっかり治療できるように,と揃えています.でもやっぱり高いですね.

 

その他として
日本化学療法学会 委員会報告・ガイドライン一覧
http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/index.html

日本感染症学会 ガイドライン・提言
http://www.kansensho.or.jp/guidelines/index.html

にも,一部ですが,見られるものがあります.ブックマークしておくとよいでしょう.

 

それにしても,感染症関連のガイドラインは,なぜかクローズなものが多い気がします.日本循環器学会のガイドラインが,フリーでみられるのと,ずいぶん異なっていると感じます.

 

上記のような有用な書籍があることを知っているので,もはやガイドラインには期待しない,という声も聞いたことがあります.少し残念です.

ただ,そのような声が出るほど,上記の書籍はとても優れています.何よりその情報量と,情熱が感じられる書籍ばかりです.

もちろんこれ以外のまれな感染症や,そのほかに調査する場合も多いです.より根拠に基づいた感染症治療の情報を提供するために,Up to dateであり,pubmed であり,医中誌での検索も行います.ただし,こちらは維持費などもありますので,使えないところもあるかと思いますので,準備できるところから,でよいかと思います.

 

検査部の協力も必要ですし,患者背景を主治医とディスカッションし,救命を優先した治療の選択を推奨することもあります.そしてその裏付けになる情報をもとに,提案していく.これの繰り返しです.上手くいけば自信になるし,必ずうまくいかない壁に当たる.自分でなければ,違う提案をあの時していれば,異なった結果になったのではないか,と悩み,翌日のカルテを見るのが怖くなることもあります.

 

それでも現実は待ってはくれません.上記の資料などから,自分で考えるのです.そのために助けてくれる書籍たちなのです.

 

というわけで,独断と偏見で選んでみました.まだまだ有用な本はたくさんあります.読んでいただきたいのですが,今回はこれ以上長くなってしまうと,と思いまして,またの機会にしたいと思います.

 

岩田先生,矢野先生の書籍であれば,どの本でも勉強になりますし,読んでいて楽しいです.ぜひ,読み物,という意味も踏まえて,感染症の第一線でお仕事をされている方の本を手に取っていただければと思います.

 

また,薬剤師向け,薬剤師が書いたものは紹介できませんでした.取り急ぎ実践で役立つ書籍,というニュアンスで選定したためです.

 

とにかく命に係わる疾患であるため,間違えない感染症治療,抗菌薬治療を行うために,薬剤師として信頼できる書籍としました.これからも色々な書籍,ワクワクするような本が出るのを楽しみにしていますし,色々と読んでみたいと思います.