病院薬剤師のブログ

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【読書感想文】「ジェネリック外用剤」薬局 2018年12月号 特集

外用剤のジェネリック(後発医薬品)は,内服薬と比べて導入を迷っている施設は多いと思います.そんな中,ジェネリック外用剤について特集されていましたので読んでみました.

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本書は,ジェネリック外用剤の基本Q&Aという形で始まります.

 

 

その後,徹底解剖というかたちで,ジェネリック外用剤の製剤的な特徴というのが,薬剤ごとにまとめられています.

現在,本邦においてもジェネリック医薬品の使用促進,後発品シェアの数量シェアを80%にするということが目的とされています.

薬剤師は,その中において,大きく関わることが求められています.

 

実際,内服薬や注射薬に比べて,外用剤の使用割合というのは非常に少ないのではないでしょうか.

 内服薬は,これだけの数が発売されており,全て先発希望,という方の方が少なくなっていると思います.内服薬のジェネリックはすでに認知され,使用されています.

注射薬も,基本的に自己注射するものを除いて,病院で医療スタッフが投与することになります.その内容を先発品か後発品かを確認することは,多くはないでしょう.患者さん,というよりは,医療従事者が気にする場合が多いかと思います.

ところが,外用薬は,その成分以外の部分(添加物の違いなど)で,導入できていないところも多いかと思います.私の施設も同様です.

 

本書の緒方先生の記事では,ジェネリックの導入割合は,外用薬が38.6%に対し,他の剤形では68.2%となっています.

 

また,ジェネリック医薬品から,先発医薬品に戻った時の変更理由,というアンケート結果も記載されています.

 

その中で,内服薬は主に効果の面で,先発医薬品に戻った割合が高いとされていますが,外用薬は薬の使用感が最も多くの割合を占めています

その他に外用剤については副作用や,処方元の要望等といった点が比較的高い割合となっています.

 

ジェネリック医薬品が,先発薬品に戻った事例として,外用剤の薬効ごとの割合を見ています.やはりNSAIDsの外用剤が高い傾向です.

 

こちらはおそらく,湿布剤に関するものと考えられますが,様々な湿布,テープ剤の使用感などによって,先発後発が選択されているのではないかと考えられます.

一方で,使用感の割合が,比較的先発に戻った理由の1つとして挙げられているのも興味深いです.

外用薬においては,そのあいまいな,「使用感」に先発,後発の選択が左右されています.

内服薬と違って,外用薬は様々な要因が,先発薬に戻ったりする理由としてあると考えられます.

 

後発医薬品は,先発医薬品とは全くちがう,特に外用薬は,と言う認識を持っている人の方が多いと思います.

 

生物学的同等性試験に関するガイドラインというものがあり,その中では,生物学的同等性が認められています.生物学的同等性というのは,治療学的な同等性を保証するものと定義されています.

 生物学的同等性(BE)ガイドライン等 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

 

上記のような,印象ばかりで話をするのではなく,臨床的に同等であろうと言う観点から,上手にジェネリックを使っていく選択をできるような説明を,行っていきたいものです.

 

また,外用剤,特に貼付剤においては,使用感の違いなどを,患者さんからお話をいただくことも多いかと思います.

ジェネリック医薬品は先発医薬品と比べて,やはりこの使用感といった部分についての問題を,なるべく解決するような製剤を製造しているようですが,そもそも使用感と言うものが,かなり使用している本人の感覚によるものが大きいとされています.

 

生物学的同等性試験により,同等である事が証明されている以上,安易に使用感のみで先発品に戻す,といった対応は避けなければならないのかもしれません.

 

内服薬に比べて,使用感という,直感的なものがジェネリックか先発かの選択に,大きな影響を与えていると思います.そしてそれは外用剤の特徴でもあります.

 

内服薬と比べて,そういった使用感が先発後発の選択に影響しているというのは,感覚的にはわかるのですが,しっかりとしたジェネリック医薬品の特徴・安全性を,薬剤師が理解し,服薬指導の際に,上手に患者さんに説明をし,納得して選択していただく,というのが今求められているのではないかと思います.

 

その他にも,安定供給や原薬・不純物に際しての記載など,かなり様々な項目が書かれています.

さらに病院薬剤師の立場から,ジェネリック医薬品の外用剤の採用に関するポイント等がまとめられています.私は個人的にこちらの記事が参考になりました.

 

実際の後発医薬品使用体制加算などから始まり,薬品名が類似しているような薬剤を,ジェネリックに変えることにより,そういったリスクを避けるといった観点,またアドヒアランスの観点からも,選択するポイントが書かれています.

 

病院で勤務されてる方が,かなり現実的な記事を書かれていますので,もし,選択の際,導入においても悩まれている施設がありましたら,ご一読いただけるとよろしいかもしれません.

 

私たちの施設でも,院内での外用剤のジェネリック導入は始まっていますが,本記事を見ながらこういった特徴があるのだと言う薬品を,少しピックアップしながら検討してみています.

サンプル品を取り寄せ,実際の薬剤を手に取って見てみるというのも,もちろん必要なことだと思います.

他にも,外用剤においては,ジェネリック品の特徴を,それぞれ各メーカーで持っているものがありますので,上手に選択をしながら,患者さんの目線に近い薬剤選択,と言うのを薬剤師が推奨することは,とても大事な業務の1つではないかと感じました.

 

ジェネリック医薬品外用剤の,製剤的な特徴として,薬効ごとに記載されています.

やはり薬剤師として気になるのは,ステロイドやタクロリムスなど,吸収や有効性に慎重な判断が要求される薬剤の情報になるかと思います.

こちらはやはり薬効がかなりデリケートなものになってきますので,先発品からジェネリックの変更といった観点に関しては,非常に神経を使うような薬効ではないかと思われます.現時点でわかっていること,また懸念事項等が,本書に掲載されています.もしこちらの薬剤について検討されている方は,内容をよく読んでいただければと思います.

 

その他NSAIDsや保湿剤,特にヘパリン類似物質の外用剤についての項目がやはり気になる部分かと思います.

 

本書籍は,ジェネリック外用剤を含めた特徴を学びながら,やはり最終的にはジェネリック医薬品を薬剤師として正しく説明できる,ということが目的と考えられます.

  

必ずしも,すべての薬剤の外用のジェネリック医薬品を推奨するということではなく,しっかりとした情報を収集し,薬剤師が適切に,先発医薬品と後発医薬品の特徴などを患者様に説明し,納得いただいてジェネリック医薬品を使っていただく,しっかり患者さんのアドヒアランス向上に貢献するということが,ジェネリック薬品の外用薬を推奨していくのに最も大切なことではないかと感じました.

 

外用剤では,まだAGがあまり発売はされていないといったところも,なかなか導入がうまく進まない1つなのかもしれません.

内服薬に比べて,外用剤はそういった観点から,国内でもジェネリック薬品の後発の促進はあまり進んでいかないかもしれません.

しかしながら,後発医薬品でも,優れた外用剤というものは存在します.使用感だけではなく,その安全性,有効性等の資料を,薬剤師が独自に判断し,その患者さんに合ったものを推奨していくというのは必要になってくるかと思います.

 

外用薬を主に使う診療科,特に皮膚科や眼科の医師からは,やはり先発医薬品は絶大な信頼を得ているかと思います.

しかしながら,実際そういった医師と話をしていても,医師間でも少しずつ考え方が異なってきているというのに気づきます.

 

ステロイドであれば,皮膚科医が治療に求めるレベルのステロイドの強さに対して,必ずこれで治療したいと薬剤もあれば,これぐらいのレベルのステロイドであれば,ジェネリックであっても対応可能であろうと言う話が,実際患者さんによってあるという事が,今回皮膚科医と話をすることができ,聞くことができました.

 

また,眼科領域においても,特に領域に関しては,やはり同じような観点で,ジェネリックを選択しやすい薬剤というのが,薬効によっても存在しているようです.

 

眼科医は,基本的にどんな点眼薬であっても,先発品のみを希望したいのではないかと感じていたのですが,本書を読んだ後にいろいろ聞いてみると,やはり必ずしもそうではないということがわかりました.

今自分が勤務している処方元の医師に,こういった話をしていくということで,スムーズにジェネリック医薬品の外用製剤が導入ができるのかもしれません.

どうしても先発品で治療していく,治療の最も大切な部分を先発品で治療する,と言う医師の信念があれば,それを無理に変えることはできませんし,患者さんにとっても,それはあまりメリットがあるようなことではありません.

医療費を削減する,ジェネリック外用薬を上手に使うというのは,自施設がうける処方元の医師が,ジェネリックであっても先発薬と同等に治療が可能であろうと,患者さんの状況や疾患,またその薬剤特性などから判断し,ジェネリック外用薬はきかない,という認識ではなく,信頼して使用できるよう,薬剤師も働きかける事も必要ではないでしょうか.

 

あの医師だからジェネリック外用薬は使用しない,という話ではなく,その理由などを医師と確認し,ジェネリックが使える方もいるのではないか,という事を検討していただく.そして対象となる患者さんには,責任をもって説明し,理解をいただいてから用いる.ジェネリック外用薬がうまく選択ができるようになり,これから徐々に導入が進んでいくということを願っています.

 

本書の最後には,開局薬剤師の先生からの記事として,ジェネリック外用剤への不安と薬剤師の役割,という記事が掲載されています.詳細は書きませんが,

薬剤師がしっかりジェネリック外用剤の特徴を理解し,適切な服薬指導するのが,使用促進にもつながり,最も大切なことであろう とされています.

私も同意見で,本書のまとめのような記事となっています.

 

やはりどんな状況であっても,先発医薬品を希望している方も多いです.限られた医療資源の中で,ジェネリック外用剤を,薬剤師がしっかり特徴を理解し,医師・薬剤師・患者さんと上手に選択することができれば,後発品の使用促進というものが進んでいくかと思います.

 

薬学的な難しい解説なども含まれていますので,どっぷりとジェネリック外用剤にふれてみるのには,オススメの書籍です.よい特集でした.