病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

【薬のお勉強】エイベリス点眼液0.002%

2018/11/20薬価収載のエイベリス点眼液0.002%について勉強してみましょう.

 

 

エイベリス点眼液について

販売名:エイベリス点眼液0.002%

一般的名称:オミデネパグ イソプロピル点眼液

薬効分類名:選択的EP2受容体作動薬/緑内障・高眼圧症治療剤

製造販売元:参天製薬株式会社

用法及び用量:1回1滴、1日1回点眼する。

薬価:0.002%1mL 945.30円予定,タプロス点眼液0.0015%と同薬価

名称の由来:Eye  +  Bella(ベッラ:イタリア語で“美しい“の意味)

 

緑内障について

・緑内障は我が国における失明原因の常に上位を占め,社会的にも非常に重要な疾患

・40歳以上の日本人における緑内障の有病率は 5.0%

・2016 年の人口統計をもとに計算すると推定患者数は 465万人にもおよぶ

・緑内障の視神経障害および視野障害は,基本的には進行性であり,非可逆的

・緑内障治療薬に対するアドヒアランスは,医師が考えるよりはるかに悪いことが報告されている

・アドヒアランス不良は緑内障が進行する重要な要因の一つであり,治療には治療効果だけでなく,アドヒアランスが得られやすい薬剤を選択することが望ましい,とされている

 

緑内障における薬剤選択(開放隅角緑内障)

・プロスタグランジン関連薬が最も優れた眼圧下降効果と点眼回数,副作用の面で良好な認容性により,第一選択薬

・続いて眼圧下降効果と認容性の面で β 遮断薬も第一選択になり得るが,禁忌,副作用に留意して選択

・第二選択薬として,炭酸脱水酵素阻害薬点眼,a 2 刺激薬,ROCK 阻害薬,a 1 遮断薬,イオンチャネル開口薬,交感神経非選択性刺激薬,副交感神経刺激薬などの点眼薬

・多剤併用時においては,配合点眼薬はアドヒアランス向上に有用

 

日本眼科学会 緑内障診療ガイドライン(第4版) フリーです.

http://www.nichigan.or.jp/member/guideline/glaucoma4.jsp

 

緑内障の診断,治療は,当然ではあるが専門の眼科医によって治療される.

薬剤師としては,点眼薬の服薬説明などで関わるところも多いと思う.PGの点眼の説明に苦労する経験をお持ちのお方も多いと思う.アドヒアランス不良も悩ましい問題である.

 

今回発売されたエイベリスの特徴について

 

1.世界初の選択的EP2受容体作動薬

本剤はEP2受容体に選択的に作用して眼圧下降作用を示す,世界初の緑内障・高

眼圧症治療薬

→作用機序的に従来のPGと似ている.そのためPGとの併用は行わないと考えられる.

タフルプロストとは併用禁忌で,記載はないが他のPG点眼との併用も禁忌として対応すべきと考える.

 

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  1. 優れた眼圧下降効果

ラタノプロスト点眼液に対する非劣性が検証されている

 

  1. 52週の長期にわたる安定した眼圧推移

52週の長期にわたる安定した眼圧効果が報告されている.

 

  1. 他剤無効例に対する眼圧下降効果

0.005%ラタノプトスト点眼液からの切替試験の結果,有意な眼圧効果作用が報告されている.

→従来PGで効果不十分であった場合,別なPGに変更するしかなかった. 位置づけとしては同じようなものであるため,期待できるかもしれない.

 

他のプロスタグランジン製剤が効果不十分であった症例に対するトラボプロスト点眼液の有効性の検討,橋爪 公平ほか,あたらしい眼科,30巻8号 Page1171-1173(2013.08)

 

  1. 安全性

267例中107例(40.1%)に副作用が認められた.

主な副作用は,結膜充血61例(22.8%).重大な副作用として,嚢胞様黄斑浮腫を含む黄斑浮腫(5.2%)が報告されている.

 

結膜充血について

審査報告書では,いずれも経度とされている.PGでもよく報告されていた.比較的軽微であるとの事から,夕方点眼という用法で大きな問題にならない可能性もある.しかしながら,資材を用いた情報提供を行う必要性があるとされている.

 

黄斑浮腫について

審査報告書では,両眼とも有水晶体眼であった被験者での黄斑浮腫は 0.4%(1/231 例)であるのに対し,少なくとも片眼が眼内レンズであった被験者での発現割合は 27.6%(16/58 例)であったとされている.

→眼内レンズの患者には禁忌となっている.初回処方には眼科医の診断,処方が原則となるであろう.薬剤師が眼内レンズ挿入かどうかの確認は難しいとは思うが,患者との会話などで気になった場合には確認が必要と思われる.

 

角膜肥厚について

投与により角膜肥厚が報告されているが,現時点で視力低下などの問題にはなっていないようであるが,今後注意してくとされている.

 

保存剤について

ベンザルコニウム塩化物が添加物として用いられている.

そのため,下記コンタクトレンズの注意がされている(実際どの程度が対象になるかは不明だが)コンタクトレンズを変色させることがあるので、コンタクトレンズを装用している場合は、点眼前にレンズを外し、点眼から15分以上経過後に再装用すること。

 

貯法も気密容器、遮光、2~8℃保存となっているが,保存剤が入っていることもあり,開封後は添付の遮光用投薬袋に入れ,1ヵ月以内であれば室温で保存できる,となっている.

 

通常の使用では1本で両目に用いると,新薬の場合は1-2本が処方量になると思われる.

長期処方可能となるまでは確認しておきたい.

 

エイベリスは,点眼薬としては珍しく,過敏症以外の禁忌項目がある薬剤で,添付文書を見た際に少し気になる薬剤ではある.

臨床試験の結果から項目が追記となっている.無水晶体眼又は眼内レンズ挿入眼の患者はPG製剤においては注意となっているが,エイベリスは禁忌となっている.

 

併用においても,チモロールマレイン酸塩とせっかく行った試験で,併用例で結膜充血等の眼炎症性副作用の発現頻度の上昇が認められた,とされており,少し残念な記載となっている.

 

なんとなく審査報告書を眺めていても,まだまだこれからの薬剤と感じる.

しかしながら,PG投与の際に問題となる,睫毛の異常,色素沈着が報告されていないという点では評価できる.睫毛の成長,は報告されているが,PGの投与の際のような,不均一で向きもばらばらといった睫毛の異常は,患者より分かっていてもどうにかならないかといった相談もよく受ける.その点においては期待のできる薬剤ではないかとも考えられる.

 

日本発の新しい薬剤.従来のPGの点眼薬と同じ薬価で,少し残念な形であったが,副作用の点では期待できる.今後の処方状況,安全性を確認しながら,世界へ羽ばたいていく薬剤となるのを期待する.