病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

新薬の承認後14日処方制限に思う

新薬が承認された.院外処方として主に処方される薬剤は,基本的に14日処方制限がなされる.

今月11月20日収載予定が一覧となっている.画期的な薬剤も含まれている.

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000400315.pdf

 

収載の裏で,収載が見送られた薬剤がある.

ミクスOnlineに気になる記事が掲載されていた.

ノボ 週1回の糖尿病薬オゼンピックの薬価収載希望取り下げ 14日制限に対応できず

https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/65613/Default.aspx

 

ノボの「オゼンピック」、3度目の収載見送りへ  承認から8カ月が経過

https://nk.jiho.jp/article/137423

 

既に3度目の薬価収載の見送りになっている.過去も薬価収載が見送られた薬剤は前例がある.

 

武田薬品の抗肥満薬「オブリーン錠120mg」(一般名:セチリスタット)で,これは効果の面からの審議であった.

中医協総会】武田の抗肥満薬、薬価収載見送り‐有効性に疑問相次ぐ

https://www.yakuji.co.jp/entry33613.html

 

本年7月の武田薬品のニュースによると,

肥満症治療剤「オブリーン®錠120mg」に関するライセンス・開発契約を終了

となっている.ヒアリングなども行ったが,この薬は国内では発売されなくなったようである.

https://www.takeda.com/jp/newsroom/newsreleases/2018/20180713-7985/

 

薬価の面で折り合わず,ずいぶん延期となった薬剤もあるが.

「パルモディア」、薬事承認から10カ月経て保険収載

https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/603010/

 

今回は,色々とあったようだが,週1回の投与で,2mg製剤となっている.1回0.5mgの維持量のため,1回の処方で4週間分になっているのでダメ,ということのようである.

現在,オゼンピック以外にも,週1回の薬剤は,ビデュリオン(エキセナチド),トルリシティ(デュラグルチド)の2剤があるので,3剤目がいるのか,という話もあるのだが,

今年の発表で,

Lancet Diabetes Endocrinol. 2018 Apr;6(4):275-286

Semaglutide versus dulaglutide once weekly in patients with type 2 diabetes (SUSTAIN 7): a randomised, open-label, phase 3b trial.

が報告されている.

 

・セマグルチド(0.5,1mg)とデュラグルチド(0.75,1.5mg)の直接比較試験

・メトホルミン併用,ベースラインのHbA1cは8.2%

・デュラグルチド0.75mg 1.1%,セマグルチド0.5mg 1.5% それぞれ低下

・デュラグルチド1.5mg 1.4%,セマグルチド1mg 1.8% それぞれ低下

・群差の推定値はそれぞれ-0.40%,-0.41%で有意差あり

・そのほかHbA1c7%未満(合併症を防ぐ目標値)の達成率や体重減少においてもセマグルチドが有用

 

国内のデュラグルチドは0.75mgであり,この結果をもって,というわけではないが,少なくとも有用な薬剤であることは間違いないようである.

 

さらに,海外では経口剤の検討も始まっている.

開発は最終段階に―経口GLP-1受容体作動薬は糖尿病治療の新たな道を開くのか|DRG海外レポート

AnswersNews 2018/10/02

https://answers.ten-navi.com/pharmanews/14919/

 

過去にも長期投与の際に例外として認められた薬剤もある.フォルテオ,ヤーズなどである.

その時と事情も異なっているので,ましてや3剤目ということを考えると,今回の対応にも納得は行くが,

「オゼンピックを患者さんにお届けするために承認用量に対応した単回投与ペンを上市するとの結論に至った」,というのも少し残念な気がする.

単回投与のペンは確かに清潔で,使い勝手もよいであろう.しかしながら,各用量の単回投与製剤など,在庫の問題や廃棄の問題が現場としては挙がってくる.

 

薬剤としては,有用な薬なのだと思うのだが,なんだか少し残念な気がしてならない.

安全性を考慮して,というのは最も大切なことではあるのだが.

 

ちなみに上記両薬剤は過量投与の資料は見つけられなかったが,同効薬のliraglutideは報告がある.

Attempted suicide with liraglutide overdose did not induce hypoglycemia.

Diabetes Res Clin Pract. 2013 Jan;99(1):e3-4.

 

・72mgを皮下注射

・胃腸症状を経験

低血糖はなし

 

Intentional overdose of liraglutide in a non-diabetic patient causing severe hypoglycemia.

CJEM. 2018 Feb 5:1-3.

このような報告もあるので,絶対に安全だとは言えないのだが,

薬理学的に,低血糖の発生リスクは低いのではないかと思われる.

 

確かに週1回投与の製剤は,現在の国内製品は2つとも単回投与であるので,もともとこれらが使い捨て,ということも考えると,そもそも複数回投与製剤を販売しようとしていたこと自体に問題がある,と言われればそうかもしれない.

詳細な資料を見ていないのだが,インスリンのように複数回投与できる技術を持っている製薬会社からすれば,米国と同様のデバイスで発売できた方がよいようにも感じる.

 

新薬,承認,発売.いろいろと難しそうである.

 

注射の発売はあきらめて,経口薬に,なんてことにならないとよいのだが.

製剤自体の発売をゆっくり見守ろうと思う.