病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

医薬品副作用被害救済制度を再確認する

副作用救済給付の決定に関する情報、確認していますでしょうか?

https://www.pmda.go.jp/relief-services/adr-sufferers/0043.html

PMDAメディナビに登録すると、副作用救済給付の決定のお知らせが決定した際、メールで送られてくる。

薬剤師であれば、こちらはぜひ確認しておきたい。

 

この情報を一般の方も含めて公表してくれている意図は、上記リンク先に記載されている。

 

概説すると、

・副作用救済給付の実態の理解、医薬品副作用救済制度の周知を図る

・救済制度をより多くの方に活用してもらう

・医薬品の副作用情報を知る目的ではない

 

となっている。適切に医薬品を使用していても、予期せぬ副作用が生じうる。残念ながら今の科学では、未然に副作用の予知をすべては行うことはできない。

いずれ遺伝子検査などで、ある程度の予知が可能になる時代が来るかもしれないが、現在のでは、残念ながら薬は、使ってみるまで効くか効かないか、副作用が出るか出ないかは分からないのである。

 

この情報は、当たり前なことにはなるが、専門的な情報となっているので、一般の方の情報の扱い方についても注意事項として記載されている。

 

私が薬剤師になって、この情報が開示されている事実を知ったのは、それほど昔ではないのだが、正直言うと、この情報を一般の方にも開示していることに驚いた。

このような情報は、医療従事者が知っていればいい事であって、必要な時に確認できれば良いわけで、一般の方にもオープンにする必要があるのか、と。

 

上記の公開している理由を見ると、その意図がはっきりわかるのだが、薬剤師としては、この情報を基に聞かれることもあるし、情報を活用することもあるため、この情報についてはしっかりと理解しておく必要があると考える。

 

 リンクからたどると、月ごとにまとめられたものが一覧で確認できる。

まず、注目すべき情報としては、給付が不支給になっているケースである。

 

投与された医薬品により発現したとは認められない

入院を必要とする程度の医療とは認められない

については致し方ない部分もあるので、とくに注目することはないのだが、

 

医薬品の使用方法が適正とは認められない

の記載された薬剤については注意する必要がある。

 

薬剤による副作用が生じた場合、救済制度の手続きを行うが、対象外である場合でなければ、申請を行うことができる。

 

副作用救済給付の対象にならない場合は以下の通りになる。

詳細は以下を参照

https://www.pmda.go.jp/relief-services/adr-sufferers/0032.html

 

法定予防接種を受けたことによるものである場合

(任意に予防接種を受けたことによる健康被害は対象になります。)

医薬品等の製造販売業者などに損害賠償の責任が明らかな場合

救命のためやむを得ず通常の使用量を超えて医薬品等を使用したことによる健康被害で、 その発生が予め認識されていた等の場合

がんその他の特殊疾病に使用される医薬品等で厚生労働大臣の指定するもの (対象除外医薬品)等による場合(Q5参照。)

医薬品等の副作用のうち軽度な健康被害や医薬品等の不適正な使用によるもの等である場合

副作用や障害の程度が軽い場合や請求期限が経過した場合

その他、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会で給付の対象にならないと判定された場合

 

これらは対象とならない、という事は理解できると思うが、その前の大前提として、「薬剤の適正な使用」が大前提となる。

 

こちらも以下を参照。

https://www.pmda.go.jp/relief-services/adr-sufferers/0034.html

 

「適正な使用」とは、具体的にどのような使用をいうのですか。

 

「適正な使用」とは、原則的には医薬品等の容器あるいは添付文書に記載されている用法・用量及び使用上の注意に従って使用されることが基本となりますが、個別の事例については、現在の医学・薬学の学問水準に照らして総合的な見地から判断されます。

  

当たり前なのだが、薬を適正に使用して、それでも不幸にも起こってしまった場合に適応されるのが、本制度になるわけである。

 

先ほどの話に戻すと、

 

適正に使用していないという場合は、当然だが救済制度の対象とはならない。

10月の報告では

メトトレキサート(錠)    医薬品の使用方法が適正とは認められない

チクロピジン塩酸塩(錠)              医薬品の使用目的が適正とは認められない

ランソプラゾール・アモキシシリン水和物・メトロニダゾールシート    医薬品の使用目的が適正とは認められない

テガフール・ウラシル(顆粒)       医薬品の使用方法が適正とは認められない

9月の報告では

ラモトリギン(錠)           医薬品の使用方法が適正とは認められない

ラモトリギン(錠)           医薬品の使用目的が適正とは認められない

 

となっている。使用目的、は適応の問題、使用方法、は用法用量になるだろう。

医薬品を適正に使用しないと、万が一副作用が起こった場合、上記のように救済制度も受けることができない。

 

患者側の視点で見てみる。医師から薬剤の説明を受け、薬剤の説明を薬剤師から聞き、納得して服用する。

それで副作用が生じた際に、上記の救済制度のことを知り、申請する。

そこで、不支給、その理由が、医薬品の使用方法が適正とは認められない、とあった場合は、どのように感じるであろうか?

信頼していた医療従事者の通りに、しっかりと服用したのに。

国から、適正ではない、という理由で救済はできないと言われたら。

 

自分だったら、訴訟などの措置を考えるであろう。もちろんいろいろな事情があるとは思うが。

 

医薬品の副作用救済、というのは、何度も言うが、医薬品が適正に使用されているのが大前提である。

どのような医薬品が、過去問題となっているかも、安全性情報にまとまられているので再確認しておきたい。

https://www.pmda.go.jp/files/000226238.pdf#page=7

医薬品・医療機器安全性情報No.357より

過去5年分の不支給件数が報告されている。

年間200-400件が不支給(全体の18%)となっており、

 

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そのうち、使用目的または使用方法が適切とは認められないとされているのが19%となっている。割合としてはそれほど多くを占めているわけではない。

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しかし、適切に使用されていないと判断されるような薬剤に、日本のどこかで薬剤師が絡んでいるわけである(もしかしたら医院で薬剤師を介せず直接渡されている可能性も否定はできないが)。

 

適正と求められなかった事例は、どのようなものが多いかも挙げられている。

どれも特徴ある薬剤で、治療には必要な薬剤ばかりである。

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ラモトリギン

チアマゾール

炭酸リチウム

が上位3つを占める。

特にラモトリギンは添付文書も煩雑で、調剤の際は必ず確認しておきたい。添付文書も10ページもある、内服薬では最も煩雑な用法となる薬剤の一つであろう。

 

上記安全性情報に、医薬品副作用救済制度の認知度も報告されている。一般の方では3割程度とされている。まだまだ認知度は低いのではないだろうか。これを広めていく、というのもわれわれ薬剤師の仕事であろう。

ちなみに医療従事者の中では薬剤師が最も高い認知度であったのにはホッとした。98.3%。残り1.7%は知らないことになる。残念ながら。

 

今回は、医薬品副作用被害救済制度を再確認してみた。

医薬品の適正使用が大前提である。日々の業務時に再度思い出し、用法用量も含めた確認がもれないようにしたい。手続きは少し煩雑にはなるが、救済制度の啓蒙活動も行っていく必要がある。

薬剤の安全性は、薬剤師が関わるべきだからである。