病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

医薬品の安全使用(取り違え等)について考える

PMDAより,2018/11/06付で
「エクセグラン」と「エクセラーゼ」の販売名類似による取り違え注意のお願い (大日本住友製薬株式会社/ Meiji Seikaファルマ株式会社)
https://www.pmda.go.jp/files/000226518.pdf が出ている.

日経DIでも早速取り上げられている.
エクセグランとエクセラーゼの取り違えに注意 2018/11/7
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/201811/558577.html?n_cid=nbpnmo_mled


こんなの間違えない,というのは薬剤師の一般的な見解であろう.
適応も違うし,用法も違う.

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 エクセラーゼ配合錠
消化酵素製剤 通常、成人1回1錠を1日3回食後直ちに経口投与する。年齢、症状により適宜増減する。

エクセグラン錠100mg
てんかん剤ゾニサミドとして、通常、成人は最初1日100~200mgを1~3回に分割経口投与する。以後1~2週ごとに増量して通常1日量200~400mgまで漸増し、1~3回に分割経口投与する。なお、最高1日量は600mgまでとする。

 

間違える可能性としては,エクセグランを1日3回服用している場合,などであろうか.
外観も言われてみれば似ていないこともないが,実は下記にあるように,この間違いは,薬剤師の取り間違えというより,処方の際の間違いの注意が必要となっている.


■ 販売名の類似により、処方オーダシステムでの両薬剤の選択ミス事例等がくり返し報告されています。医療機関において、処方オーダシステム利用時における対策をご検討ください。

■ 既に対策を導入済みの医療機関においても、対策導入後の人事異動等の
理由により、その対策について十分に把握されておらず、選択ミスが生じた事例が報告されています。既に導入済みであっても、改めて院内における対策の周知徹底をお願いいたします。

■ 誤投与防止のための確認事項も紹介されていますので、処方監査時、交付時や配薬時に注意していただくようお願いいたします。


過去までの,製薬企業からの医薬品の安全使用(取り違え等)に関するお知らせ が下記に掲載されている.
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/medical-safety-info/0178.html


2011年1月
インスリン血性低血糖症治療剤「アログリセムカプセル25mg」
2型糖尿病治療剤「ネシーナ錠」(一般名:アログリプチン安息香酸塩)
誤処方防止のお願い

この薬剤は,アログリセムが高インスリン血性低血糖症,ネシーナ錠(アログリプチン)が2 型糖尿病の効能効果ということもあり,まったくなんて名前を付けてくれたんだ,と当時は困惑したが,その後MSDよりアログリセムという商品名を覚える間もなくジアゾキシドカプセルへ商品名が変更された.これは比較的早い対応であったというのを記憶している.

その後も,リバロ錠があるのでリバロキサバン(商品名イグザレルト)の一般名をリバーロキサバンにするなど,名前については近年取違いに関する認識が徹底されているように思う.一般名も変えるんだ(ーをつけただけ)と思った記憶が新しい.

 

他にも
ユリーフとユリノームの販売名類似による取り違え注意

・タキサン系抗がん剤 三剤の類似名称等による取り違え防止
・誤接種防止のためのお願い ニューモバックスNP/プレベナー13水性懸濁注(肺炎球菌ワクチンと言ってしまうとわからない)
アルマールとアマリールの販売名類似による取り違え防止について
 アルマールが既に商品名変更済  https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201206/525627.html
マイスリーとマイスタンとの販売名類似による取り違え注意のお願い
セロクエルとセロクラールの販売名類似による取り違え注意のお願い
・エクセグラン、エクセミド、エクセラーゼの販売名類似による取り違え注意のお願い
・ザイティガ錠とザルティア錠の販売名類似による取り違え注意のお願い
・「デュファストン錠」と「フェアストン錠」の取り違え事例発生のお知らせ
・「ノルバデックス」と「ノルバスク」の販売名類似による取り違え注意のお願い
・「リクシアナ錠」と「リフキシマ錠」の販売名類似による取り違え注意のお願い
・「テオドール」と「テグレトール」の販売名類似による取り違え注意のお願い

など,様々な取り違え注意の案内が出ている.

 

これは,医師が電子カルテでオーダする際,どうしても3-4文字での検索結果から処方選択しているという現状がある.
3文字検索の施設の方が多いと思うが,安全を考慮して4文字検索の施設もある.安全上4文字検索にしたいというと,医師が,覚えきれないから3文字に,ということを言われたという施設の話も聞く.

 

薬剤師より,短い時間で処方の決定をしなくてはいけない医師の負担が大きい.薬効などを考慮して処方しているが,実際処方画面に表示される薬,というのは意外と選択してしまうという話を医師より聞いた.

 

薬剤のデータベースより,少し作成してみた.
商品名の始めの3文字で引っかかるリストになる.

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規格などは適宜作成したのだが,意外と多いと感じられると思う.

規格が似ているもの
アプレース錠100mg アプレゾリン錠10mg
アモキサンカプセル25mg アモキシシリンカプセル125mg
カルバマゼピン錠100mg カルバン錠100
ノルバスク錠10mg ノルバデックス錠10mg
取り違えた際に危険なもの
・アカルディカプセル アカルボース錠
・アストリックドライシロップ80% アストミン散10%
アモキサンカプセル25mg アモキシシリンカプセル125mg
・エクセグラン錠100mg エクセラーゼ配合錠
エストラサイトカプセル156.7mg エストリール錠1mg(持田)
カルバマゼピン錠100mg カルバン錠100 カルバゾクロムスルホン酸Na錠30mg
グリベック錠100mg グリベンクラミド錠1.25mg
グルコバイOD錠50mg グルコンサンK錠2.5mEq
スピロノラクトン錠25mg スピロペント錠10μg
セロクエル100mg錠 セロクラール錠20mg
ノルバスク錠10mg ノルバデックス錠10mg
・バイアスピリン錠100mg バイアグラ錠50mg
・メチルエルゴメトリンマレイン酸塩錠0.125mg「F」 メチルジゴキシン錠0.1mg「タイヨー」 メチルドパ錠125

あたりであろうか.

 

当施設でも,処方した際に,薬効や用量などが分かるものを表示するなど,なるべく処方時に医師に分かりやすいものを作成している.
薬剤によっては処方診療科を制限(エストラサイト,グリベックバイアグラ,ノルバデックス,メチルエルゴメトリンマレイン酸塩)している.

 
麻薬もカオスだ.オキシコドンはこんな状況で表示されたら
何が何だかわからないであろう.ここに一般名処方も出てくるとなると,間違えない方が奇跡的な状況だ.
当然オーダはその施設の採用薬剤を決めれば表示される数は少なくなる.
しかし,入院した時に持参薬として記録を残す際には,全ての薬剤からの選択になるため,下記のような状況になることが多い.一刻も早く電子お薬手帳などのツールが普及することを願う.

 

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第一三共」のオキシコドン錠,は徐放の文字がない.即放錠なのだが(オキノーム散の後発),どうもわかりにくい.

 

処方の際,薬品名が表示されるが,原則薬品のデータベースを用いて作成などを行うが,その際に,5mg,10mg,20mgとあったりすると,そのまま用いると,表示される順番が上記のようになってしまったりする.
なんともややこしい.というより,作成する際に,もう少し考えてほしい.

最後はずいぶんとくだらない話になってしまいましたが,処方する医師も人,なので処方の際は,残念なシステムが招いてしまう,これらの誤った処方があり得るかもしれないということを考えながら,処方鑑査を行う必要があるのかもしれない.