自分が働き始めてかなり経つ。その間にも随分と教育体制が変わった。
以前までの薬学4年生は、ほとんど現場に出てから覚えることだらけで、それは新鮮さがあったと思う。
6年生のカリキュラムは、当時と比べると格段に素晴らしいものになっている。
薬学6年生が導入されて、色々な問題点が挙がっている。
壁もあるが、それは越えなくてはいけないものだと思います。
これから薬学を志す方、または病院、薬局に就職を希望する方など、少しでも役に立てればと思う。
薬学教育の私が感じている課題
色々あるが、まず、現実的なところから。
1.国家試験の合格率の問題
自分が合格したので、その後も母校などの合格率など、気にもしなかったのだが、
改めて前回の薬剤師国家試験合格率を見てみると、
第103回薬剤師国家試験の結果
出願者数 受験者数 合格者数 合格率
全 体 14,876名 13,579名 9,584名 70.58%
新卒者 9,555名 8,606名 7,304名 84.87%
第103回薬剤師国家試験の合格発表を行いました |報道発表資料|厚生労働省
となっている。まぁ、これは現状なので、詳細を見てみる。
他のサイトにもあるが、国公立の合格率は高いが、反対に私学では30%台の所も存在する。
もっと気になるところとしては、上記の資料より、出願しても受験していない学生がいる。1297人、8.7%が受験していない。
6年間の間、実験やら実習やらと忙しい薬学生。目指すところは国家試験の合格だけではないが、この結果はあまりにも寂しい。
大学の教育レベルというのもかなり差があるのかもしれない。
医師が90.1%、看護師が91.0%であるのと比べると、なおさらそのように感じてしまう。
司法試験などに比べれば高いのかもしれませんが、現場の医療者不足なども含めて、少しでも合格者を、と個人的に考えてしまうのだが。
2.学費の問題
6年生になって、当然だが学費が4年生の時よりかかってしまう。学生も今までよりアルバイトをしている薬学生が増えたのは実感としてある。
奨学金を借りたりして通学しているのだろうが、そうすると上記の国家試験合格率が全体で7割というのは、どうも理不尽な気がする。
現役は85%なので、上記の数字から見ると、今年は現役の薬学生が1302人不合格になっている。
既卒の合格率が50%程度なので、その前の不合格者数なども含めた数字とすると、翌年は1/3くらいは合格するのであろうか。卒業してから時間がたつと、当然だが合格率はさらに悪化する。
資格が取れると頑張って入学し、卒業までしても、ある一定数の合格できない学生が存在してしまう。
ココには詳細は書かないが、私の学生時代も、留年する学生はかなりいた。学費も大変だったと思う。ほかの学部はどうであろうか?
兄弟で入学(入学は兄が先)し、兄と同級生、その後自分が上級生になった友人もいた。
入って終わり、とはならない厳しい学生生活に、さらに上記のような過酷な試練がある。
2018年度から禁忌問題の設定なども変わる。相対的な合格を国が掲げている以上、薬学性が減らない限り、合格率が極端に上がるとは考えにくい。
各大学も合格率の上昇のための努力に追われているという話をよく聞く。薬学部が薬剤師国家試験の予備校化してしまう懸念もある。
優れた人材を、と考えると、今進んでいる方向が良い方向なのかは、分からない。
3.給与の問題
私も決して威張れるような給与ではないのだが、上記の学費から勘案しても、厳しい状況は変わりがない。
せっかくの国家試験の免許を持っていても、その先の就職に大きなアドバンテージがあるとも考えにくい。
この部分は職業によって幅があるであろう。
そのため就職は十分考えて行っていただきたいと願う。
通常予想されている薬剤師として業務を行うとすると、病院や薬局は営利企業と異なり、保険診療がもととなっているため、必然的に医療費高騰からくる影響をもろに受ける。今後も同様の状況なのに変わりはないであろう。
4.就職について
研究、は本当に一部の優れた学生だけであろう。
研究にあたっては、友人の話を聞く限り、こちらもアドバンテージはなさそう。そうするとMRなどは華やかな仕事で、人気もあるし、目指せる人は良いかもしれない。
しかしながら、最近の企業の状況などを聞くと、この先も果たして安定しているかというのは企業によるところがかなり大きい。早期退職の話もよく上がるし、成果主義的な部分がある以上、相当なモチベーションがないと、挫けてしまうMRさんたちをよく見てきた。
薬剤師の免許が生かせる職場はどうであろうか。
最近では、病院においては、卒後教育としてレジデント制度が導入されている施設が多い。大学病院をはじめ、小児領域やがん領域に特化した国内の主な病院では、ほぼこのシステムが取り入れられている印象を受ける。日本病院薬剤師会の資料でも、年々増加傾向となっている。
https://www.jshp.or.jp/gakujyutu/houkoku/h24gaku6.pdf
6年生教育を受けてきた学生が、病院に就職するのに、さらに研修をおこなうというのは、どのように理解すればよいのか自分でもよくわからなかった。
今までは、使用期間みたいなものを経て就職していたわけで、それが特段変わったわけではない、と思っていたからだ。
しかしながら、最近のレジデントプログラムは、様々な教育が施されるようなものが発表されてきている。
教育の方の評価、というのはすぐ現れるわけでもなく、数年先を見据えての取り組みとなる。
卒前教育はある程度の体験、経験ができれば、と感じているが、大学の管轄なので、大きくバラツキはないと信じたい。その点、卒後教育はしっかりしたプログラムが組まれているところは多くないと思われる。
キャリアプランなども考慮し、卒後の教育を継続的に受けられる施設へ就職ができれば、それは良いと思う。ある程度人数的な余裕がないと厳しい。
若い時の就職は、へき地などの高給を目指すのもよいが、若いうちになるべくいろいろな考え方を学ぶことができる職場が良いと思います。
今は、やろうと思えばインターネットである程度の情報収集は可能な時代となりました。自ら学ぶ姿勢はどの職種においても、薬学を卒業したのであれば身につけておいてほしいと感じる。
5.その他
AIが進化しているので、薬剤師の仕事はなくなるであろう、というニュースもあった。それはある程度は本気で受け止めており、そうはならない分野もあると感じている。
情報の扱い方も、今後はAIにお願いすることになる時代が来るであろう。その時までにしっかり業務を見極めることが必要になってくるし、そのようなことを考えながら業務をする必要がある。
最後に
色々書いてしまったが、必ずしも暗い話題ばかりではない。上手にチーム医療を形成している薬剤師もたくさんいるし、そうありたいと思う。現実的にどんなことを行うのか、数年先に、薬剤師という職業もあったね、と言われないようにするためのさらなる努力が必要ではないかと考えている。
一歩一歩できることから着実に、前へ。